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日系車メーカーにどう影響?米クアルコムに14兆円の買収提案

2017年11月13日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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クアルコム買収のため、先手を打って米国移転を表明したブロードコムのホック・タンCEO(左)。半導体業界一の"買収屋"として台頭してきた Photo:AP/アフロ

 価格高騰中の半導体業界再編でまたも新記録だ。大手半導体メーカー、ブロードコムがクアルコムに総額1300億ドル(約14兆8174億円)での買収を提案した。実現すればサムスン電子に次ぐ世界第3位の半導体メーカーとなる。

 仕掛け人は、半導体業界一の“買収屋”であるブロードコムのホック・タンCEOだ。

 2015年、タンCEOは中堅メーカーだったアバゴ・テクノロジーズCEO時代に格上のブロードコムを4.6兆円で買収、その後アバゴはブロードコムに社名を変更した。タンCEOはKKRやシルバーレイクなどのファンドとも関係が深く、巨額買収を頻繁に行ってきた。

 さらにタンCEOは11月3日、ドナルド・トランプ米大統領と面会し、現在シンガポールに登記している本社を米国に移すと表明。最近、他国企業による米ハイテク企業の買収を米当局が阻止する動きが相次いでおり、本社移転は明らかに米当局対応の先手だろう。

 そもそもブロードコムが巨額を投じてクアルコム買収に動くのは“通信分野の覇権”狙いだ。

 スマートフォン向けのWi-Fiなどの無線半導体で約50%のシェアを持つブロードコムだが、ベースバンド(携帯電話通信)用半導体でやはり50%のシェアを持つクアルコムの買収で、通信分野の技術をほぼ網羅できる。通信技術は既存のスマホ市場のみならず、「今後、リアルタイム通信が行われる5G(第5世代移動通信システム)が実用化され、その最初の製品となるコネクテッドカーなどに必須の技術」(半導体調査会社のグロスバーグの大山聡代表)。

日系車メーカーにも影響

 クアルコムは苦境にある。3G(第3世代)携帯電話の通信規格の基本特許を持ち、売上高の28%が特許から得るライセンス事業だが、これが独占禁止法違反として各国で課徴金を課せられ、最大顧客のアップルからもライセンス料をめぐり訴訟を起こされている。

 アップルが支払いを停止した影響で17年7~9月期決算は純利益が前年同期比89%減となった。乾坤一擲の策の大手車載半導体メーカー、NXPの買収も、大手投資家の反対に遭い、発表から1年以上たつのにまだ実現できていない。“窮地のトップ企業”に対する買収のうわさが現実となるのは時間の問題だった。

 日本企業にとっても対岸の火事ではない。クアルコムが規格制定にも深く関与しているコネクテッドカーは、トヨタ自動車やホンダなどの日系メーカーも開発中だ。要となる通信用半導体を1社に握られれば、いわば“コネクテッドカー分野のインテル”が生まれ、今後も影響を及ぼしかねない。

 クアルコムは買収提案を拒否するとの観測が強いが、世紀の買収劇を、世界が固唾をのんで見守っている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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