かつて一世を風靡したビックブランドがその後トレンドに乗れずに低落、一度失敗のイメージがついてしまったものを人は持ちたいと思うのか……ブランドやマーケティングのちょっとした研究になりそうなテーマだが、歴史の浅い携帯電話分野で、そんなことを考えたくなる事象がある。ブランドライセンスを事業にしようと試みるNokiaとBlackBerryだ。
BlackBerryはソフトウェアと
サービス事業の会社に転身していた
10月、機会あってBlackBerryのカンファレンスに参加した。年に一度開催する「BlackBerry Security Summit」というイベントで、その名のとおりに、テーマはセキュリティだ。
BlackBerryがセキュリティといっても違和感が少ないのは、RIM時代のBlackBerryスマートフォンの特徴がある。同社のスマートフォンはQWERTYキーボードの打ちやすさと、セキュリティを最大の特徴とする独自の通信メカニズムから、多くのビジネスユーザーを獲得したからだ。
その1人がご存じオバマ前米大統領で、就任当時BlackBerryを使いこなすハイテク通の側面にスポットがあたった(ただしその後、BlackBerryを取り上げられたとか)。なお、知人の米国在住ドイツ人は、セキュリティとキーの打ちやすさを理由に、今でもBlackBerry(Androidではない以前のタイプ)を併用している。
このように、ビジネスマンのステータスだったBlackBerryだが、タッチ端末の使いやすさとアプリエコシステムの欠如などから、シェアは低下した。2016年には限りなくゼロに近い数字になっている。
立て直しの命を受けてやってきたJohn Chen氏(CEO)の下で、同社は携帯電話を製造するハードウェアメーカーから、ソフトウェアとサービス企業へと転身を図ってきた。
ハードウェアビジネスから脱却完了、だがブランドは?
同社はハードウェアビジネスからの脱却はほぼ終わったようで、イベント中メディアとの取材に応じたChen氏は満面の笑顔を見せて、「在庫がすべてなくなった」と述べた。
ハードウェアから転身するのと平行して進めてきたのが、ライセンスモデルだ。Androidをベースに独自に機能強化を加えるソフトウェア、BlackBerryブランド、Android向けの生産性スイート「BlackBerry Hub+」などをライセンスし、BlackBerryブランドのスマートフォンを他社に作ってもらうというものだ。
この戦略でのBlackBerryは、インドネシアではBB Merah Putih、インドではOptiemus、それ以外の国はTCL(Alcatelブランドでおなじみ)と3社と提携している。TCLはBlackBerryの本国であるカナダ、米国、欧州といった先進国もカバーし、最新の「BlackBerry Motion」はドバイで発表、発売を開始している。
一方で、インドネシアの市場をよく知るジャーナリストは、インドネシアを始めBlackBerryが強かった東南アジアにおいても、BlackBerryブランドの低下は「否定できない」と語っている。
なお、新しいBlackBerryを代弁するかのように、BlackBerryの幹部にはBlackBerryを持たない人もちらほら。ある幹部はiPhoneとSamsungのAndroidタブレットを所有していた。
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