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Googleとの提携により、グローバルサービスはGCP採用へ

セールスフォースは第4次産業革命に最適なプラットフォームを提供する

2017年11月08日 07時00分更新

文● 大河原克行

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米セールスフォース・ドットコムは、2017年11月6日~9日(現地時間)、米サンフランシスコのモスコーニセンターで、「DREAMFORCE 2017」を開催している。全世界91カ国から約17万1000人が参加。会期中には2700以上のセッションが行なわれ、1000万人以上が基調講演などをオンライン視聴すると見込まれている。日本からは、パートナー企業やユーザー企業など約600人が参加。小出伸一会長をはじめとするセールスフォース・ドットコムの社員も100人以上が参加した。

米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEO

顧客と新たな形でつながることが第4次産業革命

 セールスフォースでは、Trailheadを受講したり、バッジを取得している開発者だけでなく、パートナーや顧客をはじめとする同社に関わるすべての人たちを「トレイルブレイザー」と呼んでおり、今回のDREAMFORCEを、「トレイルブレイザーのためのイベント」と位置づけた。会場のあちこちに、「Trailblazer」の文字が描かれていたのも、今回のDREAMFORCEの特徴と言えよう。

トレイルブレイザーたちのイベント「DREAMFORCE」

 また、会期中には、教育や環境の持続可能性に関するセッションや慈善活動に焦点を当てたセッションなども行なわれ、UCSFベニオフ児童病院のために1000万ドルを調達する予定だ。

 会期初日となった6日午後3時から行なわれた米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEOによる基調講演では、「Fourth Industrial Revolution(第4次産業革命)」が訪れていることを示しながら、「次世代のテクノロジーを活用し、顧客と新たな形でつながることが第4次産業革命である。そして、これらの新たな技術はすぐに使えるようになっている。こうした変化を、刺激として与えるのが、DREAMFORCEという場になる」と切り出した。

 1784年の蒸気機関の誕生による第1次産業革命、1870年の電気による第2次産業革命、1969年のコンピューティングによる第3次産業革命に続いて、いまは、「インテリジェンス」による第4次産業革命を迎えたと位置づけ、「第4次産業革命は、すべてのビジネス、産業、経済を改革するものであり、顧客はその中心にある。セールスフォース・ドットコムは、人工知能をはじめとする画期的な技術を提供するとともに、トレイルブレイザーが顧客の成功をもたらし、有意義な方法で社会に貢献できるように支援する。そして、第4次産業革命に最適なプラットフォームを提供する企業がセールスフォース・ドットコムになる」とした。

「インテリジェンス」による第4次産業革命

パーソナライズの「my」を冠するサービスたちの進化

 「第4次産業革命のためのCustomer Success Platform」として、ベニオフ会長兼CEOは、新たな学習プラットフォームと位置づける「myTrailhead」、開発者や管理者が利用することができるCRM向け人工知能の「myEinstein」、ウェブの画面などを自らカスタマイズができるようになった「myLightning」、モバイルアプリを構築する「mySalesforce」、IoTデータをセールスやマーケティングに生かすための「myIoT」などを発表した。共通しているのは、すべてパーソナライズできるようになったのが特徴であり、それを意味することから、「my」という名称をつけた。ただし、これらは製品名ではなく、マーケティングブランドと位置づけている。

パーソナライズ可能な「my」のブランディング

 ベニオフ会長兼CEOは、「個人と組織に対して、よりスマートでパーソナライズされたデジタルエクスペリエンスを提供し、顧客をビジネスの中心に置くことができる」と語った。

 myTrailheadは、独自のコンテンツなどを活用し、学習環境をカスタマイズすることができるもので、新たなユーザーインターフェイスを採用。企業特有のスキル習得を含んだ学習ツールとしての活用が可能だ。企業において、継続的な学習環境を構築でき、従業員のスキルを高めるための基盤になるとしている。

学習環境をカスタマイズできるmyTrailhead

 「急速なテクノロジーの変化と、ビジネスのスピードに対応するために、継続的な学習がこれまで以上に重要になる。myTrailheadは、第4次産業革命時代に向けたものになる」とした。

 また、myEinsteinでは、Einstein Prediction Builderにより、SalesforceのカスタムAIアプリケーションを、クリックだけで開発できるようにしている。開発者は新たな機械学習プラットフォームサービスを活用し、過去のサービスとCRMデータを利用して、成果を予測。Einstein Botsにより、対話型の環境を構築できるようになる。

 myLightningは、少ないクリックだけで、アプリケーションやテーマ、フロー、コンポーネントをカスタマイズすることができるもので、ユーザー企業のブランドイメージや色、ページ背景イメージなどにあわせた画面づくりを可能とした。さらに、mySalesforceは、従来のSalesforce 1を進化させたものとし、高度にカスタマイズしたモバイルアプリを構築、展開できるほか、App StoreやGoogle Playにモバイルアプリを公開して活用できる。共同創立者であり、CTOのパーカー・ハリス氏は、「自由にレイアウトができるものが欲しいというユーザーの要望にようやく応えることができる」と述べた。

米セールスフォース・ドットコムのパーカー・ハリスCTO

 また、myIoTは、IoTクラウドから一部の機能を切り離したものであり、IoTデータを活用して、Salesforce Platform内で活用。接続されたデバイスやセンサー、アプリケーションデータを、Salesforceの顧客コンテキストと組み合わせて、セールスやサービス、マーケティングに活用できる。「IoTに関して、統合された環境が欲しいという顧客の要望に応えて製品化したもの」(ベニオフ会長兼CEO)と位置づけた。

 さらに、「Quip Collaboration Platform」も発表した。これまでの製品単体としての提供から、Quipをプラットフォームとして提供する形に進化させたのが特徴で、グループにおけるドキュメント制作などにおいて、情報を共有し、必要な関連情報をひとつにまとめ、チームでコラボレーションできるようにした。21世紀FOXは、Quipを活用して、プロジェクトを完了させるまでの時間を37%も短縮したという。

 

 基調講演では、T-Mobile、アディダス、21世紀FOXの3社の導入事例が示された。T-Mobileは、myLightningおよびmySalesforceを活用して、同社のコーポレートカラーを配したモバイルアプリなどを開発した例を紹介。アディダスでは、DMP(Data Management Platform)を活用して、利用履歴や操作などを、Einsteinが分析し、それに基づいてパーソナライズ化した広告などをスマホに表示。さらに、返品や交換などの問い合わせに対して、Einstein Botsで回答する事例を示した。また、21世紀FOXは、Team Collaboration PlatformやCommunity Platformなどを使用している例を示しながら、興行成績の予測をもとに、どこに投資をしたらいいのかをEinsteinが提案する例などを紹介した。

Googleとの提携により、LightningとQuipがG Suiteと連携

 基調講演で、もうひとつの目玉となったのが、Googleとの戦略的パートナーシップの発表だ。これにより、セールスフォース・ドットコムは、グローバルでのインフラ拡張に向けて、Google Cloud Platformをコアサービスとして使用。さらに、Salesforce LightningおよびQuipと、G Suiteを連携。GmailやGoogleカレンダーなどを組み合わせて利用できるようになるという。また、Salesforce Sales CloudやSalesforce Marketing Cloudと、Google Analytics 360をシームレスに統合した形で利用できるようにする考えも示した。この統合は、2018年上半期に開始される予定で、ユーザーは追加費用なしで利用できる。

セールスフォース・ドットコムがGoogleとの提携を発表

 ベニオフ会長兼CEOは、「Googleとの協業は初めてであり、プリファードパートナーとしての提携になる」と発言。Google Cloudのダイアン・グリーンCEOは、「テクノロジーによって、社会は大きく変わってきた。驚くような革命が起こっている。こうした業界において、シームレスなパートナーシップを組むことは顧客のためになる。この協業により、顧客はパワフルに仕事ができるようになる」と語った。

 一方、基調講演では、セールスフォース・ドットコムが、業界で最速の成長を遂げ、2019年に125億ドルの売上高に達する見通しとなっていること、セールス、マーケティングに続いて、CRMでもトップシェアを獲得したことなどを示した。

業界最速の成長をアピール

 さらに、IDCの調査では、2022年に、「セールスフォースエコノミー」を通じて330万の新たな仕事が創出されること、GDPに対して、8590億ドルのインパクトをもたらすこと、10億ドル以上の影響を社会に与えると予測されていることなども示した。

 最後にベニオフ会長兼CEOは、「テクノロジーの進化は目覚ましいものがある。そして、これらのテクノロジーがさまざまな分野で使われている。しかし、テクノロジーは人々を結ぶだけでなく、人々を切り離すことに使われる可能性もある。生活の質をあげることができるが、質を下げることに悪用される可能性もある。テクノロジーがいいか、悪いかではなく、テクノロジーを活用して、なにができるかがより大切になってくる」と発言して、基調講演を締めくくった。

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