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Salesforceからはじめ、Google Cloud、AWSまでフル活用

大阪の町工場をクラウド化してる大創の衛藤さんに根掘り葉掘り聞いた

2017年11月27日 08時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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現場のユーザーには「なぜやるのか?」をきちんと説明する

大谷:クラウド導入に関して抵抗はなかったんでしょうか? 情シスがない大創さんの場合は、あくまで業務部門の抵抗という話になると思うのですが。

衛藤:もちろんありますが、私はすでに慣れてますね。Salesforceの導入は社長がトップダウンで決定しているので、現場も反発するためのはけ口がなかったんです。でも、私が選任になってからは、いろいろ話を直接聞くことが増えたので、そのたびになぜやるかを説明してます。

「とにかく「なぜやるか」を現場の人たちに説明してます」(衛藤氏)

Gmailの導入時も「今までのメールはどうなるの」や「見てくれが違う」からはじまって、「なんで変える必要があるの?」など、さまざまな声が挙がったので、とにかく現場に説明しに行ったのを覚えてますね。今でも全拠点を行脚して、顔をつきあわせて話も聞きますし、拠点ごとの使い方が必要だったら、現場のメンバーに直接教えるようにしています。だから最近はあまり抵抗はなくなってますよ。

大谷:そういったチャレンジの源泉ってどんなところにあるんでしょうか?

衛藤:クラウド導入を決めたうちのトップも、今のままで業界で生き残って行けるとは思っていませんし、つねに進化していかないとと考えています。過去の概念にとらわれるのではなく、新しいことに挑戦する。これってITも同じなんですよね。

今まで面倒な作業に関わってきた人に、本来の仕事に専念してもらいたいというのがありますね。スモールスタートで少しずつ進めていって、「なぜやるのか」をきっちり共有しながら拡げていきました。

大谷:Salesforceが上陸したときって、日本のビジネスフローとうまく合わないから、「システムをカスタマイズするか」「ビジネスフローを変えるか」みたいな話ってあったじゃないですか。今聞いた限りだと、大創さんの場合は業務にあわえてあわせてアプリを導入していくみたいな感じなんですね。

衛藤:Salesforceは、もともと「お客様と契約して、商品を作って、納品する」という商談という標準機能がベースになっています。しかしながら、うちは「見積もり=受注」という受注産業なので、標準機能がなかなか使えません。だから、アプリを沢山活用しています。昔はアプリの種類も少なかったので、自力で開発しなければならなかったのですが、今はけっこう充実しているので、開発をお願いすることも少なくなっていますね。移行する際も、過去の画面をそのまま移してくださいではなく、項目ごとにきちんと見直します。

とはいえ、今までは既存の業務フローを尊重して、なるべく業務に合わせてシステムを作ってきましたが、そろそろ自分たちのやり方も変えるタイミングに来ているのかなという気もしています。

暑苦しいほどの熱意があるからクラウド活用の幅が拡げられた

大谷:あと、パートナーである山田商店の鈴木さんの話も……。

衛藤:鈴木商店の山田さんですね(笑)。

大谷:すいません。鉄板ネタなので(笑)。えっと、そもそもこの取材をしようと思ったのも、イベント会場で鈴木商店の山田さんから衛藤さんを紹介してもらったときに、なんだかすごく同士感を感じたんですよね。別に変な意味ではなく(笑)、お客様と営業とは違う関係というか。

衛藤:よく同じ会社ですか?とはよく言われますね(笑)。お互いのやりとりもメッセンジャーです。私も堅苦しいやりとりは苦手なので、山田さんとの距離感はちょうどよいです。最初に山田さんにお会いしたときは、一言目から「いやあ、Salesforce好きなんですよー」ですからね(笑)。Salesforceを導入するときも何社から提案はいただいたのですが、やっぱり山田さんのように熱意のある方がいいと社長が判断し、お願いすることにしました。

大谷:まあ、熱いどころか、暑苦しいくらいですからね(笑)。私がよく足を運ぶJAWS-UGでもエンジニアは多いのですが、営業の人はあまり会う機会が少ない。そもそもクラウドを売っている営業さん自体が少ないのに、あそこまで熱くクラウドを売る人は見たことがないです。

衛藤:けっこう貴重な方なんですよ。オンプレもあるし、クラウドもありますじゃなく、「これからはクラウドしかないでしょー!」という勢いで来るんです(笑)。たまに「お、おう」みたいなこともあるんですが、基本的には弊社の方向性を理解して、提案してくれたり、実際に動くモノを作ってくれたりします。

プロトタイプを作っておいてくれて、それを動作検証したらすぐスタートできることもありますし、山田さんの提案を入れながら、試行錯誤しながら作るときもあります。実際、弊社の業務を理解してもらうために、山田さんを全拠点にお連れしたこともあります。現場を見ることで、「これだからうまくいかなかったんだ」みたいなことを理解してくれます。熱意があるからこそ、ここまで活用の幅を拡げることができたと思います。

とにかく現場に連れて行き、実際の業務を理解してもらったという

クラウドの利用が増えてきた今はユーザー側も意識改革が必要

大谷:今までのSIや受託開発って、作りたいモノに関する仕様書を作って、納品するという形じゃないですか。でも、クラウドの世界ってセルフサービスでいろいろなものが用意できるし、ユーザーのニーズに対して継続的に改善していくじゃないですか。今回話を聞くと、大創さんもやはり作るのではなく、利用することに主眼を置いている気がします。

衛藤:Salesforceの世界に入ってわかったのは、米国は作らないでアプリを導入するんですよね。自分では意識してなかったのですが、ほかの会社からも「米国の会社っぽいですよね」と言われますし。

あくまで私のイメージですけど、日本の会社って「作ってナンボ」「自社開発が好き」というところが大きいですよね。自社開発だからこそ自社にあわせたものを作れるのですが、一方で日本独自の枠みたいなものから出られず、世界から遅れてしまうこともあるのかなあと私は感じます。

大谷:今は欧米との差ですけど、そのうちアジア諸国からも「日本って遅れてるよね」と言われそうな気がします。

衛藤:われわれもなんらかの業務課題を解消するためにITを導入しているので、関西人っぽい考え方ですけど、やっぱり入れたら使わないともったいないですよね。でも、クラウドの利用が増えてきた今となっては、ユーザーも単にサービスや提案を受けるだけではダメ。能動的に試行錯誤し、パートナーと一緒にシステムを最適化していく意識改革が必要だと思いますね。

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