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ソニー新アイボを阻む「目新しさ」と「料金体系」の壁

2017年11月06日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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 12年ぶりに「AIBO」が「aibo」に生まれ変わって帰ってきた――。

 ソニーは1日、2006年に撤退したホームコミュニケーションロボット事業への再参入を発表した。犬型ロボット「aibo」として、1日から予約を開始し、18年1月11日に発売する。

 今回の目玉はAI(人工知能)。頻繁に会う人の顔を20人まで記憶し、「愛情をもって接するとその環境に応じて育つ」ロボットとなっている。LTE(次世代高速携帯電話通信規格)とWi-Fiを通じてクラウドに常時接続し、aiboが搭載カメラやセンサーを通して見たものや学習したことをクラウドに記憶、さらにクラウド側では別のaiboが学んだデータを基にさらにインプットが行われるなど、いわば“地上と上空”で同時に学びながら賢くなるAIの技術が採用されているという。

 自己完結型の先代AIBOと異なり、「どのようなものが生まれるのか開発者側が予測できない」と開発責任者の川西泉執行役員は明かす。ちなみに今回のアイボの正式名称は小文字のaiboで、先代と異なり「イヌ型」と正式に標ぼうしている。アクチュエーター(駆動装置)など、要素部品を独自開発し、メカ面で“リアルな犬”に近づけるための最新の技術が投入されているという。

 先代AIBOの最後のモデルが発売されたのは05年。それから12年ぶりの発売となるaiboは一言でいえば、「スマホ時代のaibo」だ。ありがちな「スマホと連携して操作ができる機能が搭載されている」だけではない。その中身も“スマホ的”な要素が満載なのだ。

 まず本体の技術だ。LTEを搭載し、心臓部となるプロセッサーにはスマホでよく使われる英アームの技術を使った米クアルコムのプロセッサー、スナップドラゴンが採用されている。

 今回のaiboは開発仕様の一部公開も予定されている。つまりソニー以外の第三者がaiboを利用したアプリを開発し、スマホのアプリストアなどを通して販売することもできる。現状では初代AIBOと同様、飼い主の顔を覚えて芸やしぐさなどを覚えていく“ペット”としての機能しかもたないaiboだが、例えば、見守り機能や自宅の家電を遠隔操作するなどの機能を、スマホにアプリをダウンロードして機能を増やすかのごとく追加していくこともできるようになる、というわけだ。

 ちなみに、事業中止から12年が経ち、先代AIBOの開発メンバーはごく少数しか残っておらず、メンバーの大半がスマホやカメラの事業部出身の30代前後の若手から構成されるという。まさに“スマホ(開発陣が作った)aibo”である。

ペットロボットの人気は停滞気味

 今回の“スマホaibo”の成否は、ソニーにとって重要な意味を持つ。業績的にはなんとか浮上してきたソニーに現在欠けている「ソニーでしか作れないヒット商品」の候補の一つとみられているからだ。99年に初代が登場した先代AIBOは累計で15万台を販売し、販売を中止しサポートが切れたいまでも愛好家がいるほどのインパクトを生んだ。そんな先代AIBOのブランドやファン層という資産を重視して、ロボット事業への再参入を決めた1年半前にaiboを復活させることも同時に決まっていたという。

 ソニーは10月31日の第2四半期の決算発表で、2018年3月期の通期連結営業利益の予想値を、20年来の悲願だった5000億円からさらに上方修正して6300億円とした。しかし、その内容は為替差益の影響や半導体の好調などによる押し上げ効果が強く、ヒット商品がけん引しての好業績とは決していえない。

 果たしてaiboは、ウォークマンに並ぶような「ソニーでしかできないヒット商品」の再来となりうるのか。

 aiboが成功するためには二つの壁がある。まず17年の現在ではホームロボットという製品自体は目新しいものではなくなり、かつ競合他社の製品もそこまで爆発的なヒットにはつながっていない、という点だ。

 ロボットが珍しくない、かつ先代AIBOを知らない世代にどのくらいアピールできるかは未知数だ。さらに言えば、AIを支えるクラウドの技術はアマゾンウェブサービス(AWS)のプラットフォームを使っているなど、メカ以外の部分での「ソニー独自技術」は薄い。

 さらに、スマホ的な料金体系も消費者に受け入れられるか不透明だ。本体価格はロボットとしては平均的な19万8000円だが、クラウドへの接続やデータの保存、ソフトのアップロード・AI学習といった一連のサービスは有料で、3年間一括の場合9万円かかる。使い続けるには自動的に別途コストがかかるわけだ。うまくいけば平井一夫社長が今後注力すると発言している「リカーリング(安定した顧客基盤から継続的に収益を稼げる)ビジネス」になるわけだが、これが容易に顧客に受け入れられるかどうかも未知数である。

 自ら顧客に近寄っていくことができ、しかもネットに常時接続している製品であるaiboは、これまでソニーを含み日本メーカーが獲得できなかった「家の中心的な役割を果たすプラットフォーム」の座を握ることができる技術要素を兼ね備えた製品であることは間違いない。問題は、2000年代には支持を得た「ペットとしてのロボット」という切り口が、17年の顧客にどの程度のインパクトをもって受け入れられるかだ。戌年の1月11日、ワンワンワンの日に満を持して発売される12年ぶりのaiboは、ソニーにとって幸先の良いスタートを切る材料となるのだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)

aibo登場
平井社長スピーチ

※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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