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神戸製鋼、「虎の子」事業や財務にも不安波及の苦境

2017年11月06日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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10月8日に発覚した神戸製鋼所の検査データ改ざん問題は、収束するどころか影響が拡大する一方だ。ついに同社の虎の子事業や、安定的だった財務面にも不安が波及し始めている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子、片田江康男、堀内 亮)
Photo by Mieko Arai

 10月8日に発覚した神戸製鋼所による検査データ改ざん問題の余波が広がっている。

「本当に大丈夫なのか──」

 昨年、建設工事がスタートした真岡(もおか)発電所(栃木県)に部品を納入するある大手メーカーの首脳は、疑心暗鬼になっている。

 神戸製鋼からの「プロジェクトが遅れることはない」という報告をうのみにできず、部下に別ルートからの情報収集を指示。プロジェクトの進捗を用心深く見守っている。取引先企業が自主的にダブルチェックをせずにはいられないほど、神戸製鋼の信用は地に落ちているのだ。

 ある電力関係者は、「一番恐ろしいのは、行き詰まった神戸製鋼が電力事業の売却という“強硬手段”に出ること。そうなれば、真岡発電所の工期遅れは必至だ」と警鐘を鳴らす。事態の深刻さを重く見て、再編シナリオすら想定しているわけだ。

 問題は真岡発電所にとどまらない。神戸製鋼が同時並行で進める神戸製鉄所(兵庫県)の発電所増設プロジェクトにもけちがついた。環境アセスメント(影響評価)に必要なデータにまで疑問符が付き、環境省から再検証を求められたのだ。不正が発覚した子会社、コベルコ科研が環境アセスに必要な調査を担っていたからだという。

 神戸製鋼の電力事業といえば、鉄鋼、アルミ・銅、建設機械の主力3事業と比べて規模こそ小さいものの、長きにわたり全社の収益を下支えしてきた稼ぎ頭だ。川崎博也・神戸製鋼会長兼社長の肝いりである“虎の子”事業にすら、信用不安が襲い掛かっている。

 2期連続の最終赤字の割には健全だった財務も、安泰とはいえない状況になってきている。

 10月17日、午後4時。神戸製鋼の東京本社では、神戸製鋼に融資する銀行の関係者が一堂に会していた。神戸製鋼側から一連の不正について説明を受けるためだ。

 その場で、ある取引銀行が疑問を投げ掛けた。「今後、法令違反と認められる事象が発覚した場合、シンジケートローン(協調融資)のコベナンツ(契約条項)に抵触するのではないか」。

 果たして、この銀行マンの懸念は現実のものとなった。10月26日、神戸製鋼のグループ会社で日本工業規格(JIS)法違反が認められ、JIS認証が取り消されたのだ。不正発覚後も、「民間企業同士の契約違反であり、法令違反ではない」としてきた神戸製鋼の主張が崩れた瞬間だった。

 これまで、メーンバンクのみずほ銀行は神戸製鋼を全面的に支える意思を表明していたものの、今後は銀行間で融資に対する足並みが乱れる恐れが否めない。

通期予想「判断」が深刻度を測るリトマス紙

 皮肉なことに、神戸製鋼が10月30日に発表した2017年度上半期の業績は、売上高が前年同期比11.3%増、経常利益が同3.7倍と好調に推移していた。主力の鉄鋼事業や建設機械事業が、需要増や市況改善などにより、大きく持ち直したからだ。

 しかし、通期で350億円と3期ぶりの黒字転換を見込んでいた最終損益予想は撤回を余儀なくされ、「未定」とするしかなくなった。

 神戸製鋼はその理由について、「歩止まりの悪化や受注減など、今回の問題の影響額を経常利益ベースで100億円の減益と算出したが、顧客への補償費用等を見通すことができず、特別損失に計上される金額が見積もれない」と説明している。

 ある鉄鋼メーカー幹部は「業績予想を出すことができるかどうかが、事態の深刻度を測るリトマス紙だった」と言う。実際に、問題の長期化は不可避だろう。

 前例を見れば明らかなように、通期の業績予想を未定とした企業の行く末は予断を許さない。例えば、不適切会計問題に直面し、15年9月に業績予想を未定とした東芝の15年度の業績は、4600億円の最終赤字だった(下表参照)。

 不正の元凶を取り除くどころか、不正の対象範囲が広がるばかりの神戸製鋼。その代償はあまりにも大きい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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