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積極的にリモートワークを実践する2社が登壇、「ASCII Team Leaders Meetup Vol.1」開催

「新しい働き方」のヒントをシックス・アパートとChatWorkから学ぶ

2017年10月27日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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「リモートワークだと、社員が“さぼる”のでは?」など
よくある疑問を2社に聞いてみる

 最後のパネルディスカッションではアスキー編集部の大谷イビサがモデレーターを務め、リモートワークを中心として、働き方改革に取り組む企業が直面しがちな課題を両社ではどう解決しているのかを聞いた。

 たとえば、多くの日本企業が抱きがちな懸念として「リモートワークにすると、社員の業務管理が行き届かなくなるのではないか」というものがある。もっと端的に言えば「社員が“さぼる”のでは」という疑念だ。これに対し、シックス・アパート古賀氏は「信頼、性善説、透明化」という3つのキーワードを挙げた。

 「まず、疑いだしたらきりがない、信頼したほうが(管理側も)全然ラクだよね、だから本人に(セルフマネジメントで)任せてしまおうという判断がある。また『さぼる』の定義についても議論がある。たとえば在宅勤務をしていて、合間にちょっと本を読む、テレビを見るというのはすべて『さぼっている』と言えるのか。その時間は、次の『集中する時間』のために少し休んでいると捉えることもできる。ただし(業務管理を担保するために)、弊社でもGitHubやRedmineなどのツールを使って、個々人の仕事がいつ始まった、いつ終わったということを全員に共有する『透明化』を行っている」(古賀氏)

 ちなみにシックス・アパートでは、全社員リモートワークを導入して朝の通勤がなくなった結果、「朝の始業が早くなった」と古賀氏は語った。「かつては朝10時のミーティングでも全員集まらなかったが(笑)、今は朝8時にはだいたい業務がスタートしているのでは」(古賀氏)。

 ChatWork山口氏も、古賀氏と同様に「疑いだしたらきりがない」と述べ、「それを管理する労力は誰もハッピーにしないし、何も生産しない。だったら、人を疑うことも『やらないこと』に入れてしまえばいいのでは」と提案した。

 リモートワークする従業員が増えれば、社内のコミュニケーションが不足するのではないか、という懸念もあるだろう。これについて山口氏は、個々の「社内コミュニケーション」の意味を精査し、チャットやWeb会議でできること、対面コミュニケーションでしかできないことを理解したうえで、効率良く「使い分ける」べきではないかと指摘した。

 「僕がよく言っているのは『情報の共有』と『意識の共有』は違うということ。情報の共有はチャット、テキストでできるが、意識の共有は相手の目を見て話さないと難しい。そのために一番いいのは、やはり直接対面すること。ビデオ会議ツールだと、それをつながなければ(システムに接続しなければ)ならないという部分で少しだけ精神的なハードルが生まれて、面倒だからチャットで済ませるようになる。それだと意識に齟齬が生まれがち。だから、ChatWorkではオフィスに出社することを標準としている。ただ、お互いの意識がまとまっていて『あとはやるだけ』の段階になったら、どこで仕事をしてもいい」(山口氏)

 古賀氏は、そこではやはり「バランス」が大切だと語った。全員リモートワークのシックス・アパートでも、各チーム内の対面ミーティングは週1回、あるいは月1回行っている(開催周期は各チームの裁量で決められる)。また同社は全社員が株主なので、経営者が株主に業務報告を行う(つまり全社員が集まる)機会も設けているという。「昨年、新入社員が入ったときにも、1カ月間はオフィスに出勤してもらった。1カ月間出勤すれば、ひととおり全員に会う機会ができるので」(古賀氏)。

 新しい働き方を実践していくうえで「苦労した」ことについて、古賀氏はリモートワーク制度を開始した当初、子どもを保育園に預けている女性が2名いたが、「子どもを預けているのになぜ家にいるのか」と言われるのが怖いと、在宅勤務をせずオフィスに出勤していたというエピソードを披露した。もっともその後、在宅勤務に対する社会の理解が進んだことで、そうした懸念も薄れているという。

 両社ともリモートワーク制度を設け、それが社内にしっかり定着していることで、地方在住の優れたエンジニアの採用にもつながっているという。古賀氏は、将来的には賛同企業を募り、さまざまな地方都市で実力のあるテレワーカーを養成して“リモートワークの拠点”を作り、大都市の企業を支援するという取り組みもやっていきたいと語った。

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