このページの本文へ

積極的にリモートワークを実践する2社が登壇、「ASCII Team Leaders Meetup Vol.1」開催

「新しい働き方」のヒントをシックス・アパートとChatWorkから学ぶ

2017年10月27日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ChatWork:働き方改革には「文化/仕組み化/制度」の3本柱が必要、
「やらないこと」を徹底排除して「やるべきこと」への注力も

 続いて、ChatWork 常務取締役 CMOの山口勝幸氏が登壇し、同社が実践している「効率的な働き方」と、その背景にある考えについて説明した。ChatWorkは、ビジネスチャットツール「ChatWork(チャットワーク)」をクラウドサービスとして提供する企業だ。現在の企業ユーザーは15万社を数え、この数年間は毎年150%の業績成長をしている。

ChatWork 常務取締役 CMOの山口勝幸(まさゆき)氏

 山口氏は「創業から17年間、ずっと働き方を変えてきた」と切り出した。ChatWorkではビジネスのコアバリューとして「バランス思考」を重要視しており、働き方に関しても「働くほうはゆとりがほしい、でも会社としては業績を上げたい」という、両者のちょうど良いバランスを模索し続けてきた。その結果、ChatWorkは、リンクアンドモチベーションの従業員満足度調査「Employee Motivation Survey」で日本一に2度選ばれたほか、昨年度は東京都の「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に選出されている。

 現在、国内の企業で進行しつつある働き方改革の多くは「まだまだ精神論」にとどまっており、実態としては現場の仕事は減らないのに早く帰るよう強制される「早く帰るだけ改革」になっていると、山口氏は指摘する。働き方改革には、社内の「文化」、生産性を高める「仕組み化」(ITツールの導入はここに含まれる)、そして人事や評価における「制度」という3つの柱のすべてを変革していく必要がある。

働き方改革を進めるうえでは「文化/仕組み化/制度」の3本柱で、それぞれに取り組みが必要となる

 山口氏は、その文化/仕組み化/制度における、ChatWorkでの具体的な変革を紹介していった。

 前出のシックス・アパートとは異なり、ChatWorkでは原則として、スタッフはオフィスに出勤して勤務するルールとしている。ただし、リモートワークを申請する敷居を限りなく低くすることで、リモートワーク制度を「ゆるく」運用していると、山口氏は説明する。

 「全社で共有する『勤怠チャット』があって、リモートワークをしたい場合はそこに放り込む(申請する)だけ。たとえば『今日は大雨だから自宅作業で』『はい、OK』とか、『子どもがインフルエンザで』『あ、OK』とか、『猫の体調が』『うーん……まあOK!』とか(笑)、そんなゆるい感じ。基本的には性善説に基づいて運用しており、また、それぞれの仕事(の進捗など)を見える化しているので実現できている」(山口氏)

 また、ChatWorkのオフィスには固定電話がない。これは以下の記事でも取り上げているとおり、電話がかかってくると業務が中断してパフォーマンスが落ちるからだ。それだけでなく、社内のペーパーレス化のために「プリンタも袖机もすべて捨てた」、そして「僕の名刺には電話番号も、メールアドレスすらもない」と語った。山口氏の名刺には、連絡先としてChatWorkの個人URLが載っている。

 常識にとらわれないこうした変革は、徹底的に効率化を考えた結果だと山口氏は説明する。効率化の考え方としては、まず初めに「やらないこと」を決めたうえで、それでも残る「やること」は徹底的に効率化、仕組み化して大幅に省力化し、そして一番大切な「やるべきこと」にワークリソースを集中させるというものだ。そうすることで、業務効率と同時に「働きやすさ」「働きがい」も向上させることができる、という考えだ。

 「具体的に『やらないこと』としては、たとえば『移動しない、探さない、繰り返さない』。やっても誰もハッピーにしない、生産性も上がらないということを業務から徹底的に排除している。こうしたものは人がやってはいけないのであって、機械にやらせる。そうやって整理したうえで、サービス改善などのお客さんのためになること、つまり本来やるべきことに時間を費やしていく」(山口氏)

 山口氏は、この「やるべきこと/やらないこと」の価値観、判断基準は企業の“OS”のようなものであり、それが社内のコンセンサスとなっていなければ、いくら制度や仕組みを整えたところで改革の取り組みは「総崩れになってしまう」と指摘した。

「やらないこと」を決め「やるべきこと」に集中することで、効率化と働きがいの両方を向上させる

 そのほかに制度面での変革として、たとえば10連休(以上)が年に3回取得できる長期休暇制度、会社が最新デバイスの購入費を半額負担する制度、スタッフの知見を深めるために海外旅行費用を一部負担するゴーグローバル制度、出産予定日の前後2週間を在宅勤務できる出産立ち会い制度、家族との関係を大切にしてもらうため実家への帰省費用を一部負担する制度など、ユニークな制度を多数用意している。直近では、個々のスタッフが好きなオフィスチェアを選べる制度も新たに導入した。

 「ただし、こうした制度は闇雲にどんどん作るだけでなく、きちんとその成果を見える化したほうがよい。ChatWorkでは定期的に社員サーベイを行って、(働き方に関して)何に不満を感じているか、何に満足しているか、また何が重要だと思っているのかを聞いている。そして『重要』なのに『不満足』に思われていることがあれば、それを解決する制度を作るというかたちでやってきた。逆に、会社としてはいいと思って作った制度が全然評価されていないということもある」(山口氏)

 ChatWorkのビジネステーマは「幸せな働き方をITで作り出す」ことであり、これを自社の文化にもしていると、山口氏は述べた。業務効率を高めるビジネスチャットツールの提供ももちろん、その一環だ。

 「業務の効率化で時間にゆとりができたら、気持ちにゆとりができ、人に優しくできる。人間関係が良くなれば、それは社内だけでなく社外にも広がって、やがては経済的なメリットもついてくる。『時間/人/お金』の3つすべてに効く、これが幸せな働き方なのではないかと考え、こだわっている」(山口氏)

15万社の顧客ベースを生かし、ChatWorkは中小企業の経営課題を解決するさまざまなサービスを展開している

カテゴリートップへ

ピックアップ