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大阪ルルドの小さな大ヒット:

バカ売れ家電 女性の力で開発

2017年10月23日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 充電式のホットアイマスク「ルルド めめホット」シリーズが絶好調だ。昨年対比1200%という驚異的な勢いで売上を伸ばし、累計出荷台数27万台のヒット製品になった。開発元は大阪企業アテックス。女性チームが開発した製品だ。8年前、女性チームがクッション型のマッサージャーをヒットさせた流れが現在につながっている。

 アテックス商品本部 企画部の田代晶子次長、栗谷怜子さんに話を聞いたところ、ファッショントレンドをたくみに取り入れる開発姿勢、「かわいさ」に重きを置いた企画にOKを出せる中小ならではのスピーディーな製品開発に、同社ならではの強みが見えてきた。

アテックス商品本部 企画部の田代晶子次長、栗谷怜子さん

■営業の受けは最悪だった

── 本社は大阪・平野区ですか。

 植木屋さんのお隣です。空気もきれいだし、周りは高い建物がないので、すごく見晴らしがいいですよ。

── 新興企業のように見えますが、実はかなりの老舗ですね。

 1992年に折りたたみベッドを開発したのがはじまりです。当時、V字型に折りたためるベッドはあったのですが、ふとんを置いたままたためる「A字型」は初めてで。特許を取得し、テレビの通販番組でヒット商品として販売していました。おかげさまで累計販売台数は約400万台となっています。

── すごいですね。通販出身の寝具・健康器具系メーカーと。

 そのほかに「ゆらゆら美容健康器」という、足をのせてゆらゆらする《金魚運動》製品などがヒットしました。健康機能寝具である電位治療器などの販売もしていました。それまでは通販媒体を見ている方をターゲットにした製品を作っていたのですが、2009年にマッサージクッションを発売してからは、ターゲットをガッツリ女性にシフトした「ルルド」ブランド事業が伸びています。

── それがなぜ女性ターゲットの製品を開発することに?

 あるとき、中国にある協力工場から「こういう機構があるが、何か商品化しないか」と打診があったんです。手もみのようなもみ玉の感覚が印象的な、コンパクトな機構でした。弊社の場合、開発担当というと男性が多かったんですが、初となる女性の開発担当に話が来て。彼女が小型のもみ機構を本社にもって帰ってきたところから、自分たちが本当にほしいマッサージ器を作ろうと、企画をスタートさせました。企画2人、開発1人、意識したわけでなくチーム全員が女性でしたね。

── 自分たちが本当にほしいマッサージ器というと、具体的には。

 当時はマッサージチェアというと、男性向けに開発されていて、高価な上、マッサージも強すぎたり、家の中に置くと場所を取るものが多かったんですね。小型マッサージ器であっても、樹脂製で、一目で健康器具とわかるものが多かった。「部屋のインテリアになじみ、コンパクトでかわいくて自分専用の疲れを癒すグッズがあったら絶対売れる」という確信があったんです。

── 業界的にもまだ珍しかった企画ですね。開発に苦労したのではないでしょうか。

 試作機を50個くらいつくりましたね。丸でもない、四角でもない。もみ玉のあたり方が、角度が、肌触りが……とえんえんやり続けて。結果、社内の女性にアンケートをとったところ「あったら欲しい」という声が多いサンプルができたんですが、GOサインはなかなか出ませんでした。

── なぜでしょう?

 マッサージ器市場はすっかり成熟していましたからね。売り場も家電量販店が主流でした。インテリア雑貨で取り扱ってもらえるような製品では、何に使うモノなのかわからないと反対されたりしました。たしかにもみ玉が隠れているので、マッサージ器には見えないんです。逆に、ユーザー目線ではマッサージ器と分からないことが良いんですが、「どうやって売るんだ」と言われてしまって。それまで通販しかやっていなかったので、店舗で販売するノウハウもあまりありませんでした。こんな製品をどうやって置いてもらえばいいんだ、という話になってしまって。

── 明治「ザ・チョコレート」も同じ苦労があったそうですね。製品の写真がないパッケージなんて前例がないと言われたと。それを打ち破ったのは何だったんでしょう?

 会長から「そろそろ発注しなさい」という鶴の一声がありまして。

── 会長すごいですね……

 ただし、初回生産台数は3色あったんですが、最低ロットの1コンテナ、合計2700台だけでした。発売後、それまでベッドを取り扱っていただいていた島忠さんに製品を気に入っていただいて、採用が決まって。そのバイヤーの方も女性でしたね。店では販売員の方にも社販で買っていただき、レジ前の積み上げ、体感ブース展示などで、積極的に販売していただいて。そこから火がつき、翌年の12月には出荷台数が30万台を超えました。今ではルルドの製品アイテムはアイマスクやリラックスグッズにまで広がり、20~40代の女性をコアターゲットにしたブランドになりました。

── 今年「めめホット」が爆発的なヒットになりました。

 今年1月からインバウンド需要で、訪日観光客の方々に売れていますね。キーになったのは花王さんの「めぐりズム」だと推測しております。めぐリズムはドラッグストアで積まれて“爆買い”をされるというのを聞いていたんです。弊社の製品は同じように目をあたためるアイマスクなのですが、使い捨てではなく、かわいい、というところが中国の女性にウケたようです。まとめ買いして中国で高く売るという話を聞いたこともあります……

── 爆買い・転売屋さんのターゲットになったと。

 そのうちSNSに猫のイラストを入れたパッケージの写真が上がったりして、認知度もあがり、売上がぐんぐん伸びていきました。弊社の海外事業部が香港・中国の代理店経由で取り扱っているんですが、今年の5月にはインバウンド需要と見込まれる売上が、既存流通の割合を上回ってしまいました。

猫のパッケージがアジアのSNSで流行した

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