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HDDは滅びぬ!何度でも蘇るさ!

「2025年までに40TB」ウエスタンデジタルが超大容量HDD技術を発表

2017年10月13日 20時15分更新

文● 天野透/ASCII

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 米ウエスタンデジタルは10月11日(現地時間)、「Innovating to Fuel the Next Decade of Big Data(ビッグデータの次の10年に向けたイノベーション)」と題するイベントをシリコンバレーの本社で開催し、マイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)方式による超大容量ハードディスクドライブ(HDD)に関する新技術を発表した。

 HDD容量をさらに拡大するためには、書込みヘッドの小型化と、ビット情報を記憶する磁性粒子の極小化を必要とする。データの書き込み動作には一定の磁力をかけて、ディスクの粒子を上下方向のいずれかに整列する必要があるが、従来は書き込みヘッド付近の小型磁石による磁場で粒子を整えていた。

 課題はより弱い磁界でも粒子の整列に十分な磁界を発生させられるかという点。ディスク自体が低保磁力で製造される場合は低エネルギーでも粒子を整えられるが、ディスクの粒子は熱の影響を受けやすくなり、磁石が不意に反転してデータを失う可能性がある。したがってディスク容量を増やすには、ディスクは熱による磁力の不安定性を克服するのに十分な保磁力、ヘッドは低磁力で書き込み可能な性能という、相反する要素が要求されていた。

 MAMRはヘッドの書き込み磁極付近にスピントルク発振器(STO)を置いてマイクロ波を発生させ、従来よりも低い交流磁場を一時的に生成してディスクに垂直データを書き込むというもの。基礎理論は業界や学会で知られていたが、実際のヘッド製造に成功したメーカーはなかった。今回同社はSTOの製造技術と「Damasceneプロセス」と呼ばれる独自のヘッド成形技術を柔軟に組み合わせ、高信頼性と大容量を実現した小型STOを搭載するヘッド構造を開発したという。

 同社のテストによると、耐久性試験では平均してMAMRヘッドがHAMR(熱アシスト磁気記録)ヘッドの100倍良好だったとしており、書込み寿命時間の試験では99.99%のMAMRヘッドがHAMRヘッドより数桁以上も優れた結果を記録したという。学会の研究によると、MAMRには面積密度を4テラビット/平方インチまで拡張可能とされている。

 イベントでは同社技術者やカーネギーメロン大学のジミー・ズー教授によるプレゼンテーションが開かれたほか、MAMR方式によるHDDのデモンストレーションも披露された。同社はMAMR方式の超大容量HDDは、データセンターなどのエンタープライズ向けとして2019年から出荷開始予定とアナウンス。ヘリウム封入技術などを組み合わせることで記録密度をさらに向上させ、2025年までに容量40TB以上のHDDを開発し、その後もさらに拡大を続けるとしている。

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