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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第185回

オラクルなりの「AIと仕事」感

2017年10月12日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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競争相手が変わっただけ?

 もう少しマシンと人間のタスクについて単純化してみると、的はマシンだけではないことが分かります。

 データベースのメンテナンスの話は、人工知能の発達によって、マシンの方がより上手にデータベースをメンテナンスできるようになったととらえられます。同じ仕事をより上手にこなせる存在は、必ずしもマシンだけでなく、他の人である可能性もあるわけです。

 たとえば、新しいテクノロジーを学んだ若いエンジニアや、日本以外に住んでいる外国人のエンジニアのほうが、高いパフォーマンスを発揮することになれば、その仕事はマシン以前に他の人に奪われてしまうことになります。

 そのため「AIが仕事を奪う」という議論は、競争相手に機械が加わっただけと考えても良いでしょう。最新のシステムと電気を与えてあげれば、AIは24時間続けて働くことができますし、人間以上に数を増やすことが容易で、競合する相手が無限に存在する点で、人間同士の競争とは様子が異なりますが。

他の道を見つける

 もちろん自己の成長によって、他の人やマシンとの競合に打ち勝つこともできるかもしれません。ただ、他の活躍の道を見つけることも、1つの方法論になります。このことは、筆者にとっても、1つのテーマとなっています。

 筆者は2005年に今の仕事を始めて、すでに12年が過ぎました。アメリカでは「12年」という時間には意味があるようで、ビザを申請する際に、「プロフェッショナル」として認める「キャリア」の目安になります。

 ちなみに大学や大学院での学びは、1年で3年分の「キャリア」として計算されます。筆者がメディア報道関係ビザを米国に申請した2012年のタイミングで、「メディア」と学部名についている大学院での2年間の学び+満6年間のキャリアを合計して、12年分のキャリアとなり、「プロのジャーナリスト」としてビザを受けることができました。

 そして今年を終えると、大学院の学びを換算しなくても、キャリア満12年になります。確実に「転機」を感じるタイミングになっているわけです。

 経験がものをいい、また筆者自身も諸先輩方の記事を楽しみにしているこの業界に入る際に、「人と違うコト」を出発点にせざるを得なかったことを思い出しました。もちろんそのための努力や、先人の知恵が生かせない苦しさも存在しますが、一方でとても気が楽になるのも事実です。

 労働力としてのAIとの戦いは、人間の側が、「マシーンと違うコト」を考えることが大切なのかもしれません。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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