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ヤマト新3ヵ年計画に現場から痛烈批判、宅配危機は終わらず

2017年10月11日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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新中計は本来、今春に披露する予定だったが、“宅配危機”で策定が遅れた Photo:Rodrigo Reyes Marin/Aflo、Rika Yanagisawa

宅配危機に揺れるヤマトホールディングスが新しい中期経営計画を発表した。値上げや夜間専門ドライバーの新設でスピードV字回復を図るという。しかしその内容に現場ドライバーや中小事業者は首をかしげる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

「こんな計画は、机上の空論にすぎない」。9月28日、ヤマトホールディングスは2017年度から3カ年にわたる中期経営計画を発表した。しかし首都圏で働くヤマトの現役ドライバーたちの間では、早くも冒頭のような反論が相次いでいる。

 ヤマトは240億円にも上る未払い残業代問題をきっかけに、今春から働き方改革と宅配事業の構造改革を推し進めている。しかし経営陣が打ち出す施策にはことごとく、「きれい事を並べるばかりで、ラストワンマイルの実態に即していない」などと現場から痛烈な批判が浴びせられ続けている。

 新中計の内容は、創業100周年に当たる19年度に売上高1兆6700億円、営業利益720億円を目指すというもの。16年度は売上高1兆4668億円、営業利益348億円に沈んだが、短期間で反転させる算段だ。

「荷物量を一度は減らすものの、新しい運賃の導入で売り上げは伸ばし、宅配ロッカーなどもフル活用して業務効率化を図る。最優先課題の働き方改革にも3年間で1000億円を投じる。そうして来年以降は収益力を回復させ、再び成長軌道に乗せる」。ヤマトの山内雅喜社長はこう主張する。

 具体的施策の一つが値上げを含む運賃改変だ。10月から27年ぶりに基本運賃を平均15%引き上げた。これと並行して大口法人1000社と個別に値上げ交渉を断行。9月末時点で「われわれのもくろみの8割近くは達成している」(山内社長)としている。

 最終的に値上げの成否を左右しそうなのが通販最大手、米アマゾンの動向だ。本誌の取材では、現行の1個当たり270円前後からヤマトが450円前後への変更を提案したものの、4割増になる380円前後で決着したもようだ。

 併せて推し進めるのが新しい料金体系の導入だ。これまで法人客には荷物量に応じて特別割引を行ってきたが、それを改め、出荷のタイミングや荷物の不在率といった法人ごとの特徴と、燃料代や従業員の時給単価など外部環境の変化を指標化し、それらを連動させた運賃システムに変えていく。

 もう一つの目玉施策が配達特化型ドライバーの新設だ。とにかく量の多い夜間配達の荷物、あるいは宅配ロッカーやコンビニへの配達分など個人客の自宅に直接届けない荷物を専門に、午後2時ごろから午後9時ごろまで勤務する契約社員を新規採用する。

 従来の正社員ドライバーは午前8時ごろから午後7時ごろまでの勤務とすることで、新しい契約社員ドライバーと分業し、複合的な配達網を構築するというわけだ。特化型ドライバーの採用には外部委託業者も活用し、19年度には計1万人を確保する計画だ。

 ところが、これに対して現場は異を唱える。「正社員ドライバーの確保もままならないのに、新たに夜間専門の契約社員を1万人も確保するなんて、にわかには信じ難い」(現役ドライバー)。

 というのも荷物の量は減らず、むしろ増え続けているため、首都圏の複数の営業所では採用しても「給料はさほど良くない割に、1日中走り回る仕事できつい」と言って辞めてしまう人が後を絶たないからだ。

 経営陣は値上げ交渉の傍ら、8000万個を減らそうとしたが、ネット通販を中心に荷物量は増え続けており、8月の取り扱い実績は対前年同月比で104%を記録している。それに対して人員補充が追い付かず、「休憩を取れない状況が何ら変わっていない」(同)。

 他方、活用予定の外部委託業者も、疑問を呈している。実は今、一部の営業所では委託業者への荷物を1日70個などと制限している。ヤマトは委託費の膨張に頭を悩ませており、4~6月の営業費用のうち委託費は前年同期に比べて10%も増えているからだ。

夜間1万人は可能?
現状は下請け離れ
“調整弁”が裏目に

 ところが1個当たり200円弱の出来高で請け負う委託業者にとって、70個程度しか配達できなければ、1日の売り上げは1万円ちょっと。「車やガソリン代は自前なので、とても割に合わない」(委託業者)。しかも「ヤマトの仕事は安定しない」というのが彼らの間では通説になっている。

 なぜならヤマトにとって委託はあくまで中元・歳暮など繁忙期の調整弁だった。一方の佐川急便や日本郵便は、ヤマトに比べて自社ネットワークが脆弱な分、最初から委託に頼ったビジネスモデル。そのため「佐川の方が安定して仕事がもらえる。ヤマトの契約は期間が限定的で、いつ切られるか分からない」(同)。

 こうした理由からヤマトの“下請け離れ”がすでに始まっており、現状、委託業者はヤマトをあまり信用していない。

 ヤマトの暗中模索は続きそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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