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レーシングカードライバー佐藤琢磨氏と庄司社長との対談も

AIと共創でデジタルトランスフォーメーションを推進するNTTコミュニケーションズ

2017年10月06日 11時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月5日・6日、NTTコミュニケーションズは年次のプライベートイベント「NTT Comunications Forum 2017」を開催した。基調講演に登壇したNTTコミュニケーションズ代表取締役社長の庄司 哲也氏は、AIやIoTなど先進的な技術の紹介と顧客・パートナーとの共創を全面に打ち出し、デジタルトランスフォーメーション推進への強い決意を聴衆にアピールした。

デジタルトランスフォーメーションを支援する3つの柱

 通信、データセンター、クラウドなど幅広く手がけるNTTコミュニケーションズの年次のプライベートイベント「NTT Communications Forum」では、例年社長の基調講演で事業戦略が披露され、次の1年の方向性が示されている。庄司 哲也氏が社長になって3回目となる今回のNTT Communications Forum 2017の基調講演では、前社長の有馬彰氏が築き上げてきたグローバルインフラと数々のM&Aの基盤の上に載せられた同社独自のSDxやAI、IoTなどのソリューションが、本格的に導入期を迎えてきたことを印象づける内容だった。

NTTコミュニケーションズ 代表取締役社長 庄司 哲也氏

 基調講演全体を貫くテーマは昨年と同じ「デジタルトランスフォーメーション」だ。クラウドやAI、IoTなどのさまざまなテクノロジーは企業のビジネスプロセス自体を大きく変えつつあり、イノベーティブなビジネスモデルも次々と創出されている。こうした企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するのが、同社の「Transform.Transcend. Service Strategy」戦略。満員の会場に登壇した庄司氏は、「高信頼・高品質なインフラストラクチャーの追求」「先進的な技術を用いた柔軟・迅速なサービスの開発」「パートナリングの推進」の3つを戦略として推進していくとし、それぞれについて詳細を説明した。

「Transform.Transcend. Service Strategy」戦略3つの重点項目

 まずインフラに関しては、海底ケーブルやデータセンターまでを一元的に構築・提供し、品質や信頼性を徹底的に追求するとアピール。2017年中に北米テキサスのダラスやドイツのミュンヘン、ライン・ルール、2018年に北米バージニアのアッシュバーン、インドのムンバイなどに次々とデータセンターをオープンすることを明らかにした。

 続いてサービスに関しては、「SDx(Software-Defined x)+M」ということで、同社のNexcenterデータセンターやEnterprise Cloudのほか、AWSやAzure、GCPなどのパブリッククラウドとをシームレスに使える環境を構築。SD化されたWANやLANを提供しつつ、一元的なマネジメント、セキュリティサービスなどで価値を出していく。また、「Virtustream」により、ERPに最適化されたクラウドも先般発表されている。新たにITマネジメントサービスである「ServiceNow」との協業も発表し、NTTコミュニケーションズでの国内データセンターにデータを保管することが可能になった。

国内データセンターでServiceNowの展開を開始

 先進サービスとして紹介されたのは、後半でも大きくフォーカスされることになるAIとIoTの分野。昨今多くのプレイヤーがひしめくAI領域だが、NTTコミュニケーションズとしては、自然言語処理を得意とする「COTOHA」や時系列ディープラーニング技術を中心に据え、PoCに組み込んでいる。また、IoTに関しては、工場や自動車、ヘルスケア、生産などの業種のソリューションを拡充するとともに、スマートグラス、ビーコンなどのデバイスとの連携も進めているという。

AIやインフラサービスでビジネスプロセスを変える

 基調講演の後半は、同社が関わるビジネスプロセス変革の事例をビデオで紹介しながら、庄司氏が最新の取り組みについて説明するという形で進行した。

 たとえば、年間500万のコールを受ける同社のコールセンターの刷新においては、ユーザーのライフスタイルに合わせたSNSへの対応を行うべく、COTOHAを用いたチャットボットを導入。問い合わせが3倍に増えたものの、オペレーターの負荷は6割削減できたという。「お客様との対話を自律的に学習し、質問を重ねることによって、必要な情報を自ら聞き出すことで人間的な対話能力を実現している」(庄司氏)。また、ウェアラブル生体センサーの「hitoe」と通話中の音声を感情分析するマイニング技術を導入することで、オペレーターのストレス軽減やフィードバックの改善にもチャレンジしている。

 また、AI分野ではディープラーニングを手がけるPreferred Networksと提携し、民間としては国内最大規模となるプライベートスーパーコンピューターを構築した。Preferred Networksは、1024基のGPUが連携して動作するこのスーパーコンピュータによって、膨大な計算機資源を必要とするディープラーニングの研究を加速し、自動車、製造業、バイオヘルスケアなどのビジネスをより拡大していくという。「世界の競争相手と戦うためにはスピードは欠かせません。演算やデータ転送にかかる時間をいかに短くするかが、ビジネスの競争力につながる」と庄司氏はインフラ面の重要性をアピールした。

Prefered Networksとの提携で構築したプライベートスーパーコンピューター

 さらに連結ベースでの社員4万人、140ものグローバル拠点を抱える三井物産は、NTTコミュニケーションズとともにグローバルのコミュニケーション基盤を刷新しているという。ローカルキャリアとの連携やネットワーク敷設まで含めて、グローバルでNTTコミュニケーションズに任せることで、無事にグローバル展開を実現したという。「全世界で2万人を超えるメンバーがみなさまのグローバルビジネス展開をお支えします」(庄司氏)。

パートナーとともに新しいビジネスを作っていく

 既存のビジネスプロセスの変革のみならず、パートナーと手を携えたビジネスモデルの創出も進めている。

 パナソニックシステムソリューションズは、4K映像を用いた高画質な監視システムをNTTコミュニケーションズとともに構築。通常の監視は画質を落とし、重要事案が発生した際には画質を4K化し、データの増大に合わせてネットワークの帯域を増やすべくSD-WANを導入した。その間、通常監視の画像はインターネットVPNを経由させるため、重要なデータ伝送のために帯域を確保することが可能になった。

 また、同社がスポンサーしているマクラーレンは、鈴鹿サーキットと英国のMcLaren Technology Centerを結ぶネットワークでSD-WANを導入しているという。庄司氏は「現在のF1ではレース会場や車両から取得される大量のデータをより速く、確実に伝送し、分析するレーシングカーマネージメントがレースの結果やパフォーマンスに影響を及ぼす」と説明し、大量のテレメトリデータを高速・安定して伝送するためにNTTコミュニケーションズの技術が活用されることになるという。

マクラーレンでのSD-WAN活用

 さらに計測器を手がける横河電機はプラント制御の高度化を実現すべく、同社の計測機器データとAIを組み合わせた実証実験をNTTコミュニケーションズとともにスタートさせている。ビッグデータ解析によって多品種・少量生産に必要な高度なプラント制御を実現するとともに、IoTやAI、セキュリティなどを活用した新しいソリューションの開発を進めていくという。

 こうしたAI分野や顧客との共創を推進すべく、同社では10月に専門部署を発足させたという。庄司氏は、「われわれ自信の強みを伸ばし、パートナーの優れた技術と組み合わせ、革新的なサービスを提供することで、お客様や社会のお役に立ちたいというのが私たちの願い。今後も走り続けて参りますので、今後もよろしくお願いいたします」と基調講演をまとめた。

佐藤琢磨氏が語る「No Attack, No Chance」の心意気

 その後、イベントでは日本人として初めてインディ500での優勝を成し遂げたレーシングドライバーの佐藤琢磨氏と対談した。「熱烈なファンなので基調講演は早めに切り上げた。わかりにくかったところは、弊社の説明員に聞いてほしい(笑)」というレースカーファンマニアである庄司氏は、世界3大レースの「インディ500」での偉業のすごさを語りつつ、佐藤氏が掲げる「No Attack, No Chance」の心意気やレースの舞台裏、レースカーとテクノロジーについて1レースファンとして質問を重ねる。

1ファンとして対談を楽しむ庄司氏(左)とゲストのレーシングカードライバー佐藤琢磨氏(右)

 印象的だったのは、No Attack, No Chanceに至るまでの佐藤氏のチャレンジだ。佐藤氏は、子供の時に見たF1の衝撃、レースカードライバーにあこがれつつ自転車に打ち込んだ学生時代、そして夢をあきらめきれずに踏み込んだレースドライバーへの道などここに至るまでの経歴を聴衆に披露。「レースカーのドライバーのほとんどは英才教育で、3~4歳からカートに乗っている。でも、僕は20歳までという年齢制限ギリギリで、鈴鹿のレースカーのスクールに入った。心の中ではやってみなきゃ、わからないという気持ちがあった」と「No Attack, No Chance」の原点を語った。

 5年前のインディ500でも2位に甘んじることなく、最後まで仕掛けたが、そのときは僅差で最後にスピンした。「そのとき失敗の経験を活かし、5年間の挑戦を続けて、今年優勝することができた。No Attack, No Chanceの精神で挑戦を続けることで、信じ続けてきた夢は本当にかなうんだと実感した」(佐藤氏)。

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