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テレワークの課題を踏まえたヤマハのものづくりに高い期待

田澤由利氏が語るヤマハの新製品とサテライトオフィスの相性のよさ

2017年10月19日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●曽根田元

提供: ヤマハ

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テレワークの伝道師である田澤由利さんとヤマハのWeb会議用マイクスピーカーを語る特別企画。前回は田澤氏がテレワークに関わるようになった経緯を聞いたが、今回はテレワークの課題とそれを解消するテクノロジーがテーマ。ヤマハの新製品を見た田澤氏は、今後需要の増えるサテライトオフィスとの相性を語った。(以下、敬称略 インタビュアー:Team Leaders 大谷イビサ)

20年の経験で見えてきたテレワークの課題とは?

大谷:田澤さんが在宅ワーカーのためのワイズスタッフを起こした20年前、テレワークを実際に進めるにあたってはどういった部分が課題だったんでしょうか?

田澤:20年前は確実にネット環境です。ワイズスタッフで使っていた「OCNエコノミー」は常時接続への道を開いてくれましたが、速度は128kbpsでしたし、月額料金も高かった。

ワイズスタッフ代表取締役、テレワークマネジメント代表取締役 田澤由利氏

コミュニケーションに利用するツール群もいいものがありませんでした。だから、結局使っていたのはメール。メールをどう使って、どのようにうまくコミュニケーションできるのかを、つねに模索していました。

大谷:確かにCU-SeeMeとか、NetMeetingとか先を見越したコミュニケーションツールはありましたが、インターネットが遅すぎて使い物にならなかったですね。

田澤:そうでしたね。一方、マインドセットはシンプルでした。ワイズスタッフにはOCNエコノミーに毎月数万円払ってでも仕事がしたいという人ばかりだったので、とにかくモチベーションが高かった。形とハコとルールを決めれば、みんな一生懸命仕事してくれたんです。むしろネット環境やコミュニケーションツールのような道具類の方が課題でした。

大谷:今ではネットにつながるのが当たり前になり、ツールもいいものが揃ってきていますよね。なによりクラウドサービスの隆盛がすごいです。

田澤:その意味では、課題が逆転してきてますね。道具や環境は整っていますが、「ネットで仕事なんてできないよ」と考えるマインドセットの方が課題になっています。

大谷:最近の企業はテレワークの導入でどんな課題にぶつかるのでしょうか?

田澤:いろいろあるのですが、やはり「コミュニケーションがとれない」「仕事を管理できない」「セキュリティに不安がある」が3大課題ですね。ただ、コミュニケーションに関しては、Web会議やクラウドでかなりカバーできるようになってきたし、セキュリティ面もさまざまなサービスや施策面でカバーされつつあります。問題は仕事を管理できないという課題です。

大谷:確かに在宅勤務だと「さぼるよりも、働き過ぎが心配」という声が人事担当からは挙がりますよね。

田澤:5年前に私が抱えていた課題も、まさにその「さぼり過ぎ」「働き過ぎ」でした。でも、労務管理のためのいいツールがなかったので、自分の会社で作ってしまいました。

1つめはオフィスでも、在宅勤務でもいっしょに仕事ができる「Sococo」というツール。これを使うと、離れている場所でも同じネットオフィスにいるので、在席状況もわかるし、社外から会議に参加したり、資料を共有することもできます。われわれは東京、北見、奈良の3箇所に小さいオフィスがあり、ここと同じようにTVがあり、朝から晩まで常時接続しています。

Sococoのネットオフィス

大谷:先ほど田澤さんがリモートから参加したのは、このSococoのネットオフィスを使ったんですね。

田澤:はい。もう1つはF-Chair+(エフチェアプラス)というタイムカードシステムです。これからの日本はどんどん人手不足になり、子育てしながら働く人も増えるし、兄弟が少ない分、親の介護も必要になります。朝から晩まで会社にいられる人も少なくなるんです。でも、そんなことで会社辞めてくれといっていたら、会社はつぶれてしまいます。だからこのF-Chair+は出社・退社じゃなくて、着席・退席なんです。

大谷:だから、Chairなんですね。

田澤:そうです。着席と退席を打刻する「フレキシブルチェア(Flexible Chair=F-Chair)」なんです。ランチや子供のお迎えで着席・退席をきちんと癖づければ、細切れの労働ができます。うちの所定労働時間は7時間30分なので、足りない分はあとで補えばいい。在宅勤務であれば、会社に行くまでの時間がないので、8時50分に子供の送りから帰ってきて、9時から仕事が始められるんです。

大谷:なるほど。在宅勤務も、オフィスでの勤務も同じように扱えるわけですね。ただ、これだと自己申告なので、さぼっているか、働き過ぎかはわからないですよね。

田澤:はい。そのため、着席しているメンバーのPCの画面をランダムにキャプチャしています。だから、管理者の私はいつでもメンバーの画面をのぞけます。実際に画面をのぞくかどうかは別として、抑止になります。もちろん、「退席」中は、画面はキャプチャされません。

F-Chair+では、着席中にランダムで画面キャプチャされる

大谷:テレワーク中の仕事の様子がわからないという労務管理の課題を解決しているわけですね。

テレワーク実施の鍵となりつつある「サテライトオフィス」

大谷:次にテレワーク業界の動向について教えてください。以前は在宅勤務というイメージが強かったのですが、最近はテレワークの形態も多様化していますよね。

田澤:そうですね。最近のテレワーク業界では「サテライトオフィス」が注目されています。サテライト=衛星なので、会社よりも自宅から近いオフィスを指します。わざわざ2時間かけて会社に行かなくても、自宅の近くで仕事ができます。

サテライトオフィスには大きく3つ形態があります。東京や渋谷などのハブとなる駅の近くにあって営業に回りやすい「都市型」、ベッドタウンに設置された「郊外型」、テレワークで首都圏の仕事をするために設けられた「地方型」です。ビジネスを考えると、都市型が一番進んでいるのですが、地方創生の文脈で自治体や国が支援したり、鉄道会社が沿線の活性化のために踏み出したり、いろいろな施策が進んでいます。

大谷:東京はエンジニアの雇用が難しくなっているので、地方にサテライトオフィスを設ける企業も少しずつ出ていますよね。

田澤:確かに民間がやるのが理想なんですが、まだまだ珍しいケースですよね。こうしたサテライトオフィスは定義もさまざまで、営業拠点を含めるのかという課題もあるのですが、テレワークの視点から見ると、「所属している事務所とは別に企業が社員に提供するテレワークで働くスペース」を指します。つまり、本社勤務の人だけど、大宮なり、川崎なりのオフィスで働いていいですよということです。

この場合、自社施設の空きスペースを使うとか、事務所を賃貸する方法もあるのですが、コストがかかるので、多くは部屋単位でレンタルしたり、コワーキングスペースを共用しています。こうした中で、弊社では地方型と郊外型のサテライトオフィスの開設に関わっています。

大谷:田澤さんが手がけたサテライトオフィスの具体例を教えてください。

田澤:たとえば、半年前にできた生駒市のテレワーク&インキュベーション施設では、個室になるブースのほか、全室に会議で使えるTVを置きました。そして会議室にはヤマハのマイクスピーカーを置いています。

生駒のサテライトオフィス(イコマド)で打ち合わせ中の田澤氏。後ろにはヤマハのマイクスピーカーがある

大谷:なるほど。奥側が細くなっているから、参加者が前に乗り出さなくても自然に全員の顔が入るんですね。

田澤:そうなんです。そして、私の理想はこちらです。生駒市に住んでいる彼は大阪の会社に勤務しているのですが、スポットでサテライトオフィスを利用してくれています。生駒は大阪から電車で30分くらいなのですが、ラッシュがすごいんです。北に住んでいる人は市内に入る前に必ず乗り換えなければならないので、近いようで遠いのです。

大谷:彼は満員電車に乗らなくても、地元の生駒で仕事ができるわけですね。TVに映っているのは、オフィスですね。

田澤:はい。彼の大阪オフィスの席になります。彼は大阪のオフィスにはいないけど、向こうからは生駒で働いているのが見えます。打ち合わせしたかったら、ヤマハのマイクスピーカーで直接話しかければいいんです。

大谷:大阪オフィスが生駒に延伸されているイメージで、きちんとコミュニケーションもとれるんですね。今回、私は田澤さんがヤマハのマイクスピーカーを使っているとしか聞いてないので、全然仕込んだわけではないですけど(笑)、素晴らしい利用シーンですね。

田澤:そうです。彼は満員電車にもまれることもなく、地元で仕事をしながら、オフィスとコミュニケーションもとれるんです。こうした場所にこそ、音質の素晴らしいヤマハのマイクスピーカーが生きてくると思うんです。

単純にサテライトオフィスというきっちりした場所じゃなくてもいいんです。先日ふと病院の待合室で仕事できたらなと思いました。今後、介護で病院に行く人は多くなっていくし、待ち時間も長いはず。そんな場所でも、オフィスと同じように仕事できるよう、どこでもWeb会議できる環境をヤマハさんには作ってもらいたいと思います。

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