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Ignite 2017開幕を待たずに登場した「Azure AZ」一問一答

Azureに登場した「アベイラビリティ・ゾーン」とは

2017年09月25日 12時30分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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 マイクロソフトは米国時間9月21日、AzureのIaaSで「Azure Availability Zones」を提供することを公式ブログで発表した。Azureの米国東部2、西ヨーロッパの2リージョンでプレビューリリースされている。

 Availability Zones(AZ、可用性ゾーン)とは、1つのリージョン内で、電源、冷却設備、ネットワークなどのハードウェアが分離されたロケーションのこと。マルチAZ構成でインフラを設計することで、データセンターレベルの障害からアプリケーションを保護することができる。

 Azure AZについて、日本マイクロソフトクラウドプラットフォーム技術部 テクノロジースペシャリストの廣瀬一海氏(デプロイ王子)に一問一答形式で教えてもらった。

日本マイクロソフトクラウドプラットフォーム技術部 テクノロジースペシャリストの廣瀬一海氏(デプロイ王子)

AzureのAZとAWSのAZは同じものですか?

 はい、意味としては同じものです。クラウドの場合、AZは可用性を維持するために分離されたデータセンターのことを指しています。

 Azureのリージョンは複数のデータセンターで構成されており、その間を高速なバックボーンで接続して1つのリージョンとして透過的に利用できます。この、リージョンを構成する各データセンターがAZです。各データセンターは、同一リージョンの範囲の中である程度離れた立地にあり、電源、冷却機材、ネットワークなどが分離されています。

 Azure AZは、IaaSのVMを作成する際に、AZを明示的に指定できるようにするものです。1つのリージョン内でマルチAZ構成をとることで可用性を高めることができ、公式ブログでの発表によればAZを指定した場合のAzure VMはSLA99.99%(年間ダウンタイム0.9時間)になることを目標として設計されています。

Azure Availability Zones

Azureに従来からある「可用性セット」とAZはどう違うのでしょうか。

 Azureの「可用性セット(Availability Set)」は、指定した1つのリージョン内で「ラックが同じにならない(ラックアフィニティと言います)」、「ラック間のネットワークの距離、利用されているコンピュートスタンプ(Azureのインスタンスを用意するサーバークラスタ)の割り当て可能メモリや割り当て可能CPU、電源系統や無停電電源装置の場所などが重複しない」といった条件を満たすように、自動的に探索して複数のVMを用意するものです。

 Azureは、インスタンスがオーバーコミット(1CPUに複数のインスタンスを割り当て)を行っていませんので(A0を除く)、CPUやメモリなどを連続的に割り当てができる場所を探索する必要があるのです。可用性セットを組むことで、SLAはVM2台の状態で99.95%になります。

 可用性セットが自動でインスタンスを配置するのに対し、AZは指定でインスタンスを配置します。そして、AZは可用性セットよりも可用性が高く、SLA99.99%を目指しています。

AZが指定できるようになるとAzureでどのような設計が可能になりますか?

 SLA99.99%のマルチAZ構成をとることで、SLA 99.95%(年間ダウンタイム4.4時間)を許容できないビジネスインパクトや社会的インパクトが大きいミッションクリティカルなシステムを運用できるようになります。

 システム冗長化やDR(ディザスタリカバリー)の構成も、これまで構成可能であったリージョン間アクティブ-アクティブ/アクティブ-パッシブの冗長システムだけでなく、AZとAZ間のリージョン内冗長システムを手動で組むことができるようになります。

 データベースのマルチマスタ型のクラスタ(1台目AZ1/2台目AZ2/3台目AZ3)、マスタースレーブ型のクラスタ(1台目AZ1/2台目AZ2)などの構成も設計しやすくなるでしょう。

 逆に、同一のAZにインスタンスを配置しないと都合の悪いシステムもあります。HPCや3D動画のバッチレンダリングなど一気に大量の計算を行うクラスタでは、AZをまたぐことによるレイテンシが性能と演算時間を悪化させます。Azureには高速なインターリンクである「RDMA/InfiniBand」を用意したインスタンスもあるのですが、費用面の都合から10ギガビットイーサネットを使わざるを得ない場合もあると思います。

 このようなケースでは、敢えて同一のAZを指定することで性能を重視した構成をとることが可能になるでしょう(一時的な大量計算に用いるHPCクラスタでは可用性は犠牲にできます)。

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