まさによみがえったPSION! QWERTYキーボード搭載Android「Gemini PDA」に惚れた

文●山根康宏 編集●ゆうこば

2017年09月20日 17時00分

ここのところQWERTYキーボードを搭載した端末がクラウドファウンディング経由で次々と登場しています。

Planet Computersの「Gemini PDA」も今年2月にIndiegogoで資金調達を開始し、あっという間に目標額を集めました。Gemini PDAは横型クラムシェルのAndroid端末で、このクラスの製品では珍しい、キーピッチの大きい本格的なキーボードを搭載しています。

2017年9月にサンフランシスコで開催されたMobile World Congress Americas 2017(MWCA 2017)の会場では1週間前に出てきたという、Gemini PDAの実機が展示されていました。

QWERTYキーボードを搭載するGemini PDA

コンパクトなQWERTYキー付きAndroid端末
Wi-Fi版だけではなく、LTE版も用意

折り畳むとスリムな形状になるGemini PDA。本体サイズは171.4×79.3×15.1mmと、スーツのポケットにもすっぽりと収まるサイズです。本体上部にはロゴが入っていますがこれは仮のもの。

また、スリットがありますが、これは本体を開いて机の上に置くときのギミックの一部となります。SIMやmicroSDカードにもこのトップ部分からアクセスします(後述)。背面側は何もないスッキリした仕上げです。

金属ボディーでスタイリッシュなデザインの「Gemini PDA」

おもなスペックは、SoCがMediaTek製Helio X27、メモリー4GB、ストレージ64GB、ディスプレーが5.99型フルHD+解像度(1080×2160ドット)、4220mAhバッテリーなど。Wi-Fi版とWi-Fi+4G版の2種類が存在します。

背面はゴム足などもない仕上げ

本体の右側面にはUSB Type-Cとインジケーターを兼ねたLEDのボタンを備えます。ただし、写真はモックアップのため、端子部分はダミーです。左側もほぼ同じ構造で、左右それぞれにUSB Type-Cを備えるとはこのサイズのマシンにとしてはかなりぜいたくと言えるでしょう。

OTGケーブルにより、キーボードやマウスの接続が可能。また、USB Type-CからHDMIへの変換ケーブルを使い、外部モニターへの接続も可能です。

本体右側面。USB Type-CとLEDライト兼ボタンを備える

本体左側面もほぼ同じ構造。写真はモックアップ

閉じた状態では片手でも十分持てるサイズで、このままケースに入れずに素の状態のまま持ち歩きたくなります。

ディスプレーのアスペクト比は、最近流行りの18対9。同じディスプレーを搭載するスマートフォンを2枚重ねたくらいのサイズ感です。

保護ケースが欲しくなるかもしれませんが、金属ボディーなので傷はつきにくいでしょう。キャリング用には純正のレザーポーチも別売される予定です。

18対9のディスプレーを搭載するため、横幅はスリムで片手でも十分持てる

本体を開くと、QWERTYキーボードが現われます。このクラスの製品の最大の欠点はキーの押しにくさです。

しかし、Gemini PDAのキーボードはまるでノートPCのキーボードをそのまま小型化したような、それぞれのキーが独立した台形をしています。指先を乗せると押しやすく、長文のタイピングも楽にこなせそうです。

Gemini PDAを開いたところ(モックアップ)。独立したキーボードは押しやすい

かつてPalmと争ったPSIONの関係者が開発
PDA時代のUIも一部実装されている!

実は、Gemini PDAの開発には2000年頃にPalm(パーム)とPDAのシェア争いをしていたイギリスのPSION(サイオン)の関係者が絡んでいます。

元PSIONの創業者のDavid Potter氏、同じく元同社マネージングダイレクターのColly Myers氏、そしてPISONの美しいPDAのデザインを担当したMartin Riddiford氏がGemini PDAの開発に名を連ねています。

PSIONは「使いやすいハードウェアに美しいUIを搭載したスタイリッシュなPDA」でした。Gemini PDAは、そのサイオンの製品の精神をそのまま引き継いだ、「21世紀によみがえったPSION」と言える製品なのです。

キーボードのアップ。スモールデバイスとは思えない本格的なものを搭載

さて、Gemini PDAのモックアップは2月にバルセロナで開催されたMobile World Congress 2017で初展示されました。

クラウドファウンディングの情報によると製品の出荷は12月の予定。その後、なかなか実機が登場していませんでしたが、MWCA 2017の同社ブースにようやく稼働する製品が展示されていました。

ついに動作するGemini PDAとご対面

製品は9月頭に出てきたとのことで、MWCA 2017の開催1週間前に完成したとのこと。とはいえ、現時点ではまだキーボードの一部は動かず、カメラも調整中。

一部のキーボードは動作し、ディスプレーのタッチ操作もできる状態でした。ちなみに、写真の製品はアラビアキーボード配列になっていますが、キーボードは各国向けに複数用意しているとのこと。

機能キーあたりはまだ表示が統一されていませんが、スペースキー左の「Menu」または「Planet」キーを押すと、画面の下にアプリのショートカットアイコンが表示されます。

このあたりはPSIONの名機「5mx」など、PDA時代のUIをAndroid上で再現しています。QWERTYキーボードを使いながらワンタッチでアプリが呼び出せるのは便利でしょう。

スペースキーの左のキーを押すと、画面下にショートカットアイコンが現れる

Android版のExcelを起動中にショートカットを表示。アプリの切り替えも簡単だ

本格的なQWERTYキーボードを備えていますが、Gemini PDAは両手で持って親指だけでタイピングすることも可能です。これもPSIONのPDAの使い勝手を引き継いでいます。

机の上に置いて、両手全ての指先を使ってのタイピングもそれなりにできます。しかも本体はキーボードの奥側が若干持ち上がるので、傾斜が付いて押しやすくなるのです。

両手で持って親指でのタイピングも可能

机の上に置くと、キーが傾斜して両手で押しやすくなる

Gemini PDAのトップパネル部分にスリットがありましたが、本体を開くとヒンジ側の部分がボディーから浮きあがり、完全に開くとL字型となり、キーボード部分を若干持ち上げるのです。金属素材なのでバネのように自然に開かせることができるのですね。

繰り返しになりますが、こんなギミックもPSIONのPDAを思い出させます。ちなみにPSION 5mxは上ブタを開くとQWERTYキーボード全体が前にせり出してくる構造でした。

Gemini PDAを閉じた状態

上ブタを開くとヒンジ部分のパネルが浮き上がる

完全に開くとキーボード後部に傾斜が付く。金属素材の特性を生かしたギミックだ

付属する治具やカメラなどはまだ調整中
日本語キーボードも開発中で完成度は非常に高い!

また、上部のスリット部分に付属の治具を押し付けると、上部のカバーを外せます。このカバーの内側にnano SIMとmicroSDのスロットを備えています。カバーを元に戻すときもこの治具を使って押し付けるだけ。

治具はまだ試作品で、製品化の際には別の形状になるとのこと。SIMピンに変わる「SIM入れ替え治具」がGemini PDAには付属するのです。

上蓋のスリットに治具を押し付けてカバーを外せる

スリット部分のヒンジ側にナノSIMとマイクロSDスロットが見える

Androidスマートフォンとして、ひと通りの操作はできましたが、カメラはまだ調整中。ディスプレーの左上に正面カメラを搭載しており、撮影することも可能でした。

なお、上ブタ側、スマートフォンでいえば背面側のカメラについては、基板上にカメラモジュールの端子は備えているとのこと。

しかし、カメラを取り付けるとその部分の厚みが若干増すので、デザインをどうまとめるかなど、上ブタ側カメラの搭載は検討中だそうです。

正面カメラでの撮影は可能。画質はまだ調整中

今回はモックアップが1台と動作モデル2台が展示されていましたが、動作機はまだ工場から出て来たばかり。とりあえず動作するモデルを急いで持ってきたということで、1台のキーボードはアラビア語版でした。

日本語キーボードもすでに開発中で、キーボードレイアウトはできているそうです。まだ図面段階でしたが、日本語のかな入りキーボード版も捨てがたい存在です。

開発中の日本語キーボードの図面。ほぼ完成版とのこと

QWERTYキーボードを備えた小型デバイスで「これだ!」と思える製品はなかなか出きていないのが実情かもしれません。

しかし、Gemini PDAはそのルーツがPSIONのPDAだけに、究極のキーボードデバイスと言っても過言ではないほど完成度は高いと感じました。

Gemini PDAの出荷は順調にいけば今年12月。また来年1月のCES 2018には「必ず実機を用意して出展する」とブースの関係者は話していました。QWERTYキーボード端末マニアの誰もが納得できる製品の登場まで、あとわずかです。期待しましょう。

12月の製品出荷が待ちきれない。大いに期待できる「Gemini PDA」

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