対「格安SIM」に本腰! KDDI田中社長にiPhone 8/X向け新施策の本音を聞く

文●ゆうこば

2017年09月20日 16時00分

auのiPhoneでも使える新料金プラン

 アップルの「iPhone X」「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」や「Apple Watch Seies 3」の発表を機に、auはiPhone向けにも新料金プランや新保証制度などを発表しています。

 新料金プラン「au ピタットプラン」「au フラットプラン」は、すでに同社のAndroid向けスマホに提供されていたプランで、ピタットプランはその月に使ったパケット通信量で料金が変動するムダが少なく、一方、フラットプランは月20GBもしくは30GBの大容量プランになっています。

 これらのプランは7月14日から提供されており、8月27日時点で契約件数が100万件を突破したとリリースが出ています。

 そこでiPhoneへの新プラン展開を発表した当時、iPhone発表会出席のため渡米していた同社の田中孝司社長に新プランや新製品に対する思惑などを聞いてみました。

今年のiPhone発表会では「iPhone10周年」と新プランの契約100万件突破を祝った田中社長

「キャッシュバック戦争」時とはユーザーの趣向も変わった?
ひとりひとりの要望に応じられる料金プランを用意

11月発売となる「iPhone X」

──iPhone 8/8 Plus/Xが発表になりました。Xは11月発売とのことですが、価格など販売戦略はどのように進めていく方針でしょうか?

田中氏:戦略は難しいと言えば、難しい。いまは、キャッシュバックでどんな人でもハイエンドのiPhoneが買えていたときほど、端末の過剰な割引はしていません。そのため、iPhone Xと8/8 Plusの間の価格差はそこそこ出てくると思っています。

 印象としては、ユーザーのみなさまもハイエンドに対してこだわらなくなってきているかと。「iPhone SE」のような小さい端末を好んで買う方もいらっしゃるし、自分の中で予算感をちゃんと持っていて「そんなにストレージなどもいらないし」と、容量の少ないモデルを買う方もいる。

 昔はハイエンド端末を皆が欲しがっていました。まずは、最先端もの好きの方が常にハイエンド端末に買い換えて、そして、そうでない方もそんな人たちを見てハイエンド端末を好んで買っていた。iPhoneのユーザーは同質性が高かったです。

iPhone取り扱い当初を思い返す田中社長

──では、そんな状況下で新料金プランを導入する意図を教えてください。

田中氏:誰もがハイエンドiPhoneを持っていたとき、料金プランを気にしなくてもよかった。フラットプランの先駆けのもの(LTEフラット)から、かけ放題プランの登場。そんなときに比べて、いまはユーザーの多様性のようなもの出てきています。

 僕たちは「ピタットプラン」を提供すると同時に旧プランもまだ残しています。購入される方の層ごとに違う要件を満たしていかないといけない。正直に言えば、営業体制としてはプランは統一したほうが、会社的にはありがたいのですが、総務省からもユーザーへの説明はキチンと行なうように言われています。

 マジョリティーの方は、基本的にプランは選べる方がいいと思われている。一方で、マイノリティーな意見としては「何が一番いいか言って」とおっしゃっていただくことがあります。

 「ピタットプラン」を導入したとき、自分がどのぐらいのパケット量を毎月使っているかわからない人もいました。そんな人たちこそ、毎月使う量は変わっていました。そんな方にひとつのプランだけでそのユースケースを満たすのは難しいです。

 ひとつのプロダクトとしてつらぬいていたiPhoneだって「Plus」という形で別の要望に答えられるようにしています。マルチなニーズに応える仕組みが必要不可欠だと思います。

使ったぶんだけ段階的に料金が計算されるau ピタットプラン

Apple Watchは初のモバイル通信に対応
KDDIが考えるウェアラブル端末の売り方

eSIM内蔵でLTE通信ができる「Apple Watch Series 3」

──eSIM内蔵により単体で通信できる「Apple Watch Series 3」も発表になりました。親機(iPhone)とセットでの利用が前提とはいえ、KDDIとソフトバンクの月額使用料は350円、ドコモは500円。かなりお安い印象がありますが、いかがでしょうか?

田中氏:当社の場合は「ナンバーシェア」で、パケット通信に関しては親機とのシェアになります。なので、やはり親機とセットと使っていただくという面でこの価格に抑えられています。

iPhoneが手元にないときでもApple Watchで音声通話・データ通信ができる「ナンバーシェア」

──Apple Watch Series 3はどんどん単体利用、スポーツなどでの用途がプッシュされているという印象がありますが、いまは料金や仕組みとしての依存関係とアンマッチしている気がします。御社的には将来「時計」は「電話」に変わる可能性があるとお考えでしょうか?

田中氏:日本は時計を含めウェアラブル端末が使い切れていないと考えています。我々としてはキャンペーンや月額使用料を抑えることで、お客さんに体験してもらえればその魅力に気づいてもらえると思っています。

 やはりスポーツなど、iPhoneを家に置いておきたいシチュエーション、Apple Watchが活かせる新しいユースケースは存在しますよね。米国ではApple Watchの販売数はそこそこ伸びています。日本では新しい使い方を訴求していきます。

端末保証など拡充は負担にならない?
auユーザーのリテンションを重視

──各社料金プランなどが明らかになっています。たとえば、ソフトバンクは機種代が「最大半額」と大きくうたっています。日本はそもそもiPhoneが非常に安く買える国ですが、auとしての考えを聞かせてください。

田中氏:iPhone Xに関しては、まだこれからキャリア版の端末価格が出てくると思います。ソフトバンクさんの料金スキームも出ているけれど、お買い得になる仕組みとしては、料金やキャンペーンを含めKDDIの方が一歩先を行っています。

──購入者からしてみれば、新しい「アップグレードプログラムEX(a)」は12ヵ月間の使用後に機種変、残債であるもう12ヵ月分が免除されるというのは非常にうれしい話だとは思います。一方で、ビジネスとしてはかなり負担が大きいのではないでしょうか?

田中氏:一番の目的は、お客さまの転出防止。3キャリアからMVNOへ出ていかれる方は「毎月の通信費を安くしたい」と明確な要望を持っています。そこで7月に「ピタットプラン」「フラットプラン」を発表しました。そこでどうなったかと言えば、機種変などでAndroidスマホをたくさん購入していただいて、転出件数も減りました。これはシンプルにお客さんに受け入れられたということだと考えています。

 数字で言えば、Androidでは9割の方が新プランを選んでいます。当然、お客さんの通信料は安くなって、僕らとしては売り上げが減る。でも、転出が止まると言うことであればやるべきことです。ちなみに、新プラン発表(7月)後に、MNP転入も1.5倍増えたというのは予想以上でした。

Androidでも行っていた「アップグレードプログラムEX」を、約半分の期間まで短縮させて提供する「アップグレードプログラムEX(a)」

──MVNOへの転出防止がまずは最大の課題と言うことですか?

田中氏:そうです。そして、防止するにはもうひとつ、サポートを強化しないといけない。街中に多くのお店があってサポートが受けられるというのが、MNOと契約するメリットと考えてもらえるようにしたい。

──KDDIでは、他社と比べて非常に長い期間が対象となる保証プログラムも発表になりましたが、それも今回強化したポイントなのでしょうか?

田中氏:おっしゃるとおり、「AppleCare+ & au端末サポート」を発表しました。通常は2年間の保証であるApple Care+終了後、3年目〜4年目は当社で同等のサービスを提供します。自然故障の無料修理、1回3400円の画面破損修理や最大2回までの紛失補填が4年間ご利用いただけます。

iPhone 8 Plusなら月額890円、iPhone 8なら月額790円(それぞれ税抜)で利用できる「AppleCare+ & au端末サポート」

──新購入プログラムも新保証プランも、いままでと比べて、ユーザーにとってかなり好待遇だと思うのですが、そこまで転出を防止したいワケとは何でしょうか?

田中氏:いままではユーザーの新規獲得を目的にサービスを展開していました。でも、これからは解約数を減らさないと、新規獲得だけでは困った事態になりますMVNOへの流出は減ったとは言え、まだ出ていて、それでは企業としては成り立たなくなってしまいます。

 極端な例を言えば、転出されるお客さまがいなければ、営業販促費用はいまのように使う必要はなくなります。プランなどはよりシンプルにする必要がある。でも、一方である局面においては複数の選択肢も必要になります。

 なので、まずはauを選んでよかったと、もっと多くのユーザーのみなさまに思っていただけるよう、料金プランや保証制度、そして各種キャンペーンを通してリテンションの強化につとめていきたいと考えています。

まずはauユーザーの満足度を上げていきたいと語る田中社長

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