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最大18ヵ月駆動を実現! ロジクールの最新ワイヤレスゲーミングマウス&キーボードについて開発者に聞く

2017年09月22日 11時00分更新

文● ジサトラショータ

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編集部・ジサトラショータ(左)とChris Pate氏(右)

 ロジクールは9月4日、ワイヤレスゲーミングマウスのワイヤレス充電システム『POWERPLAY Wireless Charging System』およびそれに対応するゲーミングマウス2製品『G903 LIGHTSPEED ワイヤレス ゲーミング マウス(以下、G903)』『G703 LIGHTSPEED ワイヤレス ゲーミング マウス(以下、G703)』、さらに新開発のセンサー『HERO』を採用した『G603 LIGHTSPEED ワイヤレス ゲーミング マウス(以下、G603)』、同社初のメカニカルワイヤレスゲーミングキーボードである『G613 ワイヤレス メカニカル キーボード(以下、G613)』の計5製品を発表した。9月21日から販売を開始している(関連記事)。

ワイヤレスゲーミングマウスのワイヤレス充電システム『POWERPLAY Wireless Charging System』

『G903』

『G703』

『G603』

『G613』

 アスキー編集部では6月にも『POWERPLAY』と対応マウスの開発者インタビューをお届けしたが(関連記事)、今回の国内発売にあたり、米Logitech G(日本ではLogicool G)の製品ポートフォリオマネージャーであるChris Pate(クリス・ペイト)氏にあらためてインタビューする機会をいただいた。前回のインタビューの際には未発表だった『G603』および『G613』に関するトピックを中心に、注目の製品について興味深い話をうかがったので、ご紹介しよう。

「新センサーはパフォーマンスと効率のバランスを極めて高いレベルで両立している」

――本日はよろしくお願いいたします。まずはワイヤレスマウス『G603』で採用したという新しいセンサー『HERO』について教えてください。すでに『PMW 3366』という高性能センサーがあるなかで、新センサーの開発に至ったきっかけは何ですか?

Chris Pate氏。インタビューのたびに書いている気もするが、強面ながらたいへん気さくな人である

Chris Pate氏(以下Chris) ご存じの通り、世界ではあらゆる分野でワイヤレス化が浸透していますが、PCゲーム用マウスやキーボードといったデバイスはそれがなかなか進んでいません。それには、たとえば電池の寿命や遅延、有線に比べて性能が低いといった、ゲーマーの持つイメージが大きく関係しています。弊社はこれまで、無線でも有線並み、あるいはそれ以上の接続性や低遅延を実現する『LIGHTSPEED Technology』と、マウスへの給電を自動的に行なうワイヤレスチャージングシステム『POWERPLAY』という2つの技術により、ゲーマーの皆さまのこうした懸念に応えてきました。実際に、彼らの意識を大きく変えることができたと思っています。

 これらの技術を使った新製品に我々は大きな自信を持っていますが、たとえば『G903』と『POWERPLAY Wireless Charging System』を合わせて購入すると、合計価格はおよそ4万円になります。いまだワイヤレスに懐疑的なユーザーの方々が手に取るには、すこし値段が高い。そこで用意したのが、次世代センサーである『HERO』です。

『G603』および『G613』。セットで使用することを前提にデザインされている

――『HERO』を搭載した『G603』は、カタログスペックではレポートレート1000Hzでも連続約500時間駆動、Bluetooth駆動モードでは最大約18ヵ月駆動(どちらも単3乾電池2本使用)という長時間駆動が特徴です。同じく電池駆動の従来製品『G602』では、パフォーマンスモードで最大250時間、スタミナモードで最大1440時間(60日間)だったことを考えれば、電力面での改善は凄まじいものがあります。

Chris 先ほどおっしゃられた通り、従来製品で採用してきたセンサーである『PMW 3366』も、現段階では優れた性能を見せています。実際、『G900』などのデバイスは、ワイヤレス製品としてはバッテリー駆動時間も長いほうです。我々はその延長線上での製品開発を継続してきましたが、同時にそれとは別のアプローチも模索していて、電力性のさらなる改善を目指すためにはセンサーの根本的な変化が必要だと考えました。結果として『HERO』は、パフォーマンスと効率のバランスを極めて高いレベルで両立させ、『PMW 3366』を超えるセンサーになったと思います。

――これだけの省電力化を実現できた理由について、詳しく教えてください。

Chris センサーを駆動させる仕組み自体に新しい要素はないのですが、それぞれのブロックに細かな新しい技術を導入しています。たとえば通常、アナログフロントエンドとロジックバックエンドをつなぐA/Dコンバーターは大きな電力を消費しますが、『HERO』の場合、1秒あたり1万フレームを超えるイメージを取得している合間で、完全にコンバーターをスリープさせることが可能です。物凄い速度でスリープと駆動を繰り返しているということですね。センサー全体で、この機能が最も省電力化に貢献しています。そのほかにも、低電力型の赤外線LEDを使用していたり。

 また、今回の製品はバッテリー駆動時間を最大化するため、ライティング用のLEDを使用していません。まったくLEDがないわけではなく、電源オン/オフを確認できる白色LEDはホイールの手前にあるのですが、そこだけでもセンサーより大きな電力を使ってしまうほどです。ゲーマーの皆様が個性を出すためにライティング用のLEDを欲していることは理解していますが、今回は非搭載としました。

――省電力化以外の部分で、新しく採用した技術などはありますか?

Chris 『HERO』の非常に面白いところは、トラッキングアルゴリズムを後からアップデートできることです。我々は長年、製品開発に携わってきた中で、マウスが使われる状況というものが少しずつ変わってくることを経験として知っています。たとえば新しいタイプのマウスパッドが人気を博したりとか、非常にクセのあるマウス操作をする人がいて、特定の動きでトラッキングが上手くできないとか。そういう状況に対して、我々は必ずしっかり寄り添えるような体制を整えておきたいんです。単に課題を解決するだけなら他の方法も考えられますが、トラッキング性能を改善できるような仕組みも取り入れることを考えて、こうした機能を採用しました。

――アップデートはUSB経由で行うのですか?

Chris その通りです。基本的にはファームウェアという形で、アップデートをかけることになると思います。

『G603』の背面。センサーのモードを切り替えるスイッチがあり、LOモードとBluetoothを併用すれば最大約18ヵ月間もの駆動時間を実現できる。ビジネスマウスとしても使えるが、『MX Master 2S』などに搭載されていた『FLOW』などの機能は持たない

――では、『HERO』を搭載した初めてのマウスである『G603』のコンセプトについて教えてください。

Chris 『LIGHTSPEED Technology』を搭載し、Bluetoothにも対応するゲーミングマウスです。『POWERPLAY』に頼らない形で長時間のバッテリー駆動を実現するための製品ですので、やはり注目していただきたいのはバッテリー性能です。背面に2つのモードを切り替えるスイッチがあり、HIモードであれば400IPS、1万2000DPI、応答1msのゲーミングマウスとして利用できます。一方で、LOモードではセンサーの性能が一段階落ち、オフィス向けマウスと同等程度の使用感になりますが、電池寿命はHIモードの約3倍に伸びます。Bluetoothと組み合わせれば、最大18ヵ月もの長時間駆動が可能です。

――ゲーミングマウスとして使えるHIモードでも、約500時間の連続駆動が可能ですね。電池式とバッテリー充電式の違いがあるので単純比較はできませんが、『G900』がワイヤレスで最大32時間連続駆動(LED非使用時)だったことを考えれば、駆動時間は非常に長くなります。

Chris 連続駆動500時間というのは、あくまで21日間寝食を忘れてゲームに取り組んだ場合の値です。多分、そんなことをしたら亡くなってしまうでしょう(笑)。実際の使用環境ですと、2~3ヵ月は保つと思います。

バッテリーは単3乾電池だが、なんと電池1本でも駆動する。電池の種類や本数により、本体重量とバランスを変えられるのが面白い

――単3乾電池は本体に2本入るわけですが、1本でも駆動しますね。非常にユニークですが、このような形式を採用した理由を教えてください。

Chris これは従来機種の『G602』でも採用した仕組みなのですが、理由は3つあります。1つはマウス全体の重量をできるだけ軽くしたかった。電池にも重さの違いがありますから、たとえば本当に軽いマウスが好きであれば、一般的な電池を1本だけ使用すればいいし、逆に重いマウスが好みであれば、三洋電機の『エネループ』のようなニッケル水素電池を利用することもできます。一番軽くておよそ103gほど、重いとおよそ160gになりますね。もう1つは、電池を片方だけ入れることでマウスの重心を変えられます。最後の1つは、使っているバッテリーの残量が少なくなった時でも、家の中を探せば単3電池1本ぐらいは見つけられて、ゲームプレイを止めなくて済むだろうと考えたからです(笑)。

 実際には、ゲーマーの皆さんもそれほど極端に重量を気にする人は少ないでしょうし、むしろ駆動時間を重視する方のほうが多いと思いますので、基本的には単3電池2本で使用されることを想定しています。

――以前、ゲーミングマウスでのBluetooth接続の利用については否定的な見解を示されていたと思うのですが、『G603』にBluetoothを搭載した理由を教えてください。

Chris 仰る通り、Bluetoothは接続性や遅延の関係上、ゲーミングには適していません。ですから、これはあくまでゲーミング以外のシーンで利便性を高めるためのものだと捉えていただきたいです。我々としてはゲーミングに『LIGHTSPEED Technology』が最適であるという見解は変わらないのですが、かなり多くの方からBluetoothが欲しいという声をいただきましたので、補助的に搭載することにしました。

――『HERO』の開発はいつごろスタートしたのでしょうか? また、『G903』や『G703』にHEROセンサーを搭載しなかった理由はありますか?

Chris 開発は2年と少し前から始めていました。『HERO』が『G603』のみに搭載されたことについては、パフォーマンスがどうこうという話ではなく、あくまでタイミングの問題です。『HERO』と『G603』、それから『G903』『G703』『POWERPLAY』といった製品や技術は開発ラインが異なっており、リリースのタイミングを考えて、今回はこのような形となっています。

シンプルかつクリーンなデスク周りを実現する『G613』

――続いて、ワイヤレスキーボード『G613』についてお聞きします。

『G613』はメディアキーやプログラム可能なGキーを搭載

Chris 『G613』は弊社初のメカニカルワイヤレスキーボードです。『LIGHTSPEED Technology』およびBluetoothの両方に対応し、『Romer-G』キースイッチを搭載、バッテリーは単3電池2本で約18ヵ月と、こちらもワイヤレスながら十分な駆動時間を確保しています。各種メディアキーのほか、プログラム可能なGキーも6つ搭載しました。

――デザイン的にはこれまでの製品と似ているようで、実際はかなり色々なところが異なっている印象を受けました。このような外観に落ち着いたのはなぜですか?

Chris 基本的には『G603』と一緒に使っていただくことを想定しています。特に美観として、あまりゴチャゴチャとさせたくない、デスク周りはシンプルかつクリーンに、ということを心掛けているユーザーの方にはベストマッチだと思います。そのため、あまり色を入れたりLEDを付けたりということはしていません。再充電型のデバイスではなく、使い捨ての電池を利用するのもそういった理由からです。というのも、マウスやキーボードを直接再充電できる形にしてしまうと、結局はデスク上がケーブルだらけになってしまうからです。

何気にうれしいスマホ・タブレット用スタンド。複数デバイスでの作業がはかどる

――『G613』にはプログラマブルなGキーとパームレストが付いていますが、『G810』や『PRO』といった直近の製品ではどちらもオミットされていましたね。今回、その両方を採用するに至った理由を教えてください。

Chris 実は前回製品を発表した段階で、Gキーとパームレストが欲しいというカスタマーフィードバックをかなりいただきました。どちらも気に入っていらっしゃる方が一定数いらっしゃるということで、採用しています。

――Gキーが6つになったのは、スペースの都合でしょうか?

Chris フィードバックを受けて、6を超えると多すぎるという声が多くなり、6を下回ると少なすぎるという声が増えてくるようでしたので、こういう形になりました(笑)。

――タブレットやスマートフォン用のスタンドが付いているのが、個人的にはとても好きです。(笑)

Chris もう1台のノートPCなんかを置いてもいいですね。私の好きな使い方は、ゲーム用のPCとストリーミング用のノートPCを用意して、『G603』と『G613』を共有するんです。ストリーミング用PCを使う時はBluetoothに切り替えるだけでいい。とてもラクです。

「極めて基本的なフィーチャーでも、まだまだ改善が可能」

――今回、『POWERPLAY』や『HERO』といった新技術の登場により製品が大きくアップグレードされた印象なのですが、こうなってくると、既存モデルのアップデートにも期待がかかると思います。たとえばMMO向けの『G600』などはボタン数的にも換えのきかないモデルなので、ワイヤレス版が出てくると個人的に大変うれしいのですが……。

Chris 約束はできませんが、ご要望は理解しました(笑)。

せっかくなので、Chris氏が使っていた『G603』のオリジナル外装も撮らせてもらった。外してみると、なにげに左右クリックボタン一体型のデザインであることがよくわかる。現状で販売の予定はないが、検討はしているとのこと

――今後は『POWERPLAY』に対応した製品と、電池で長時間駆動する製品、2つのタイプを軸に製品展開をされていくのでしょうか。

Chris ええ。『G603』は電池でも長時間駆動するため、あえてPOWERPLAYには非対応としていますが、弊社としては今後もPOWERPLAY製品を開発していくため、将来的にはラインアップが増えると思います。また、従来のような再充電可能なデバイスの開発にも当然意味があると思いますので、そうしたモデルがなくなることはないでしょう。

――キーボードを『POWERPLAY』に対応させるといった予定はありますか? チャージングフィールドの都合上、制約があるとは思うのですが。

Chris 現状はどうしても電力変換効率がよくないため、LED付きのキーボードがマウスよりも電力を使うことを考えれば、『POWERPLAY』への対応はあまり現実的ではないかもしれません。イルミネーションの数だけを考えても、キーボードで1キーごとにLEDを付ければ、それだけで100個を超える光源数になります。電力消費のレベルとしては、優にマウスの10倍以上となるでしょう。別途、大容量の電源コードのようなものを付けて『POWERPLAY』の出力を上げることも不可能ではないですが、それはそれで認証など様々な問題がありますし、『G613』で単3電池を使って18ヵ月の駆動を実現できているので、いま無理に対応させる必要はないとも感じています。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。すでにこれだけ高性能なデバイスを開発されていますが、御社としては今後、どのような方向性で製品開発を進めていくのでしょうか。

Chris 日本では9月21日に製品発売ということで、我々としてもゲーマーの皆様からどんな声が上がるか、ワクワクしながら待っております。私の妻や弟も、私がビデオでこの製品を宣伝しているのを見て製品を購入してしまったのですが、すごく気に入ってくれているようです(笑)。

 我々の今後の展望ですが、ひとつはやはり、ワイヤレス化への注力ということになるかと思います。いまはワイヤレスデバイスを使用したことがない、あるいはワイヤレスデバイスを持っているが、電池の節約のためにワイヤードで利用しているといった方にも、もっとワイヤレスを使用していただけるようなラインアップを充実させていきたい。もうひとつ、極めて基本的なフィーチャーだと思われるような機能でも、まだまだ改善が可能だと考えています。たとえばマウスのメインスイッチに左右別々のスイッチを用いる、いわゆるセパレート型の採用も、我々は以前から率先して進めてきましたが、最近ではそうしたマウスの市場がどんどん拡大してきていますよね。デバイス自体は1960年代から作られているものですが、クリック性能の向上や耐久性ひとつをとっても、これからさらに改善していけるでしょう。“なんでも向上できる”というのが、私のデザインの哲学です。

――本日はありがとうございました。

『DiCE池袋店』のLogicool G コラボルームで実機を体験できる!

 東京都・池袋のネットカフェ・漫画喫茶『DiCE池袋店』では、ロジクールのゲーミングデバイスを使用できるコラボルームを開設中だ。VIPルームとして割り当てられたコラボルームは、ゲームジャンルごとの計3室に分かれており、MMOルームでは『POWERPLAY』と『G903』および『G613』、FPSルームでは『POWERPLAY』と『G703』および『G613』、MOBAルームでは『G603』と『G613』をそれぞれ利用可能となっている。最新ワイヤレスデバイスを実際に試したい人は、池袋に足を運んでみてはいかがだろうか。

参考:DiCE池袋店公式サイト(http://www.diskcity.co.jp/shop/ikebukuro/

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