このページの本文へ

デジタル顧客体験の追求が社員のパフォーマンスを高める

「やってみよう」「ありのままに」――従業員幸福度と生産性を高める4因子

2017年09月19日 07時00分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 アドビ システムズは9月14日~15日、都内で年次カンファレンス「Adobe Symposium 2017」を開催した。

 14日の「ビジネスプロセスの最適化」をテーマとしたセッションには、『幸せのメカニズムー実践・幸福学入門』(講談社)の著者であり、幸福学の研究が専門の慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 委員長・教授 前野隆司氏が登壇。幸福学の見地から、「顧客体験」を追求する組織がハイパフォーマンスである理由を解説した。セッションの進行役は、アドビ システムズの渡邊亜矢氏が務めた。

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 委員長・教授 前野隆司氏アドビ システムズの渡邊亜矢氏

ペーパーレス化するだけでなぜこんなに成果が出るのか

 まず渡邊氏は、電子サインソリューション「Adobe Sign」を導入して、業務プロセスをペーパーレス化したスコットランド王立銀行(The Royal Bank of Scotland)の事例を紹介した。同行では、従来は顧客が銀行店舗に来店して行っていたローン申請や口座開設のための書類手続きを、Adobe Signを使ってオンライン化した。その結果、これまで11日間かかっていた顧客によるローン申請期間が2日間に短縮され、同行に対する顧客満足度(「満足」または「大変満足」と答えた割合)が92%に達した。

スコットランド王立銀行のAdobe Sign導入効果

 ペーパーレス化だけで、これほどの成果が出たのはなぜか。その理由を、前野教授は「デジタル顧客体験を追求することで、従業員の幸福度が高まりパフォーマンスが上がったため」と分析する。幸福経営学の研究によれば、幸せな社員は生産性が30%高く、創造性が3倍高いのだという。

幸せな社員はパフォーマンスが高い

 では“幸せ”とは何か。

 前野教授は、幸せには「長続きしない幸せ」と「長続きする幸せ」があると説明する。長続きしない幸せとは、「金」、「モノ」、「地位」など地位財を得ることによる幸せ。一方の長続きする幸せとは「安心」、「健康」、「心」など非地位財による幸せのことだ。金・モノ・地位を得ると「従業員満足度」は増える。しかし、従業員満足度と生産性は関係がない。安心・健康・心の幸せを得ると「従業員幸福度」が増える。従業員幸福度が高いと生産性が高まる。特に、社員の働く上での幸福度を決めるのは「心」の幸せだと前野教授は述べた。

「長続きしない幸せ」と「長続きする幸せ」

 では“心の幸せ”とは何か。

 心の幸せの4因子は、「やってみよう」(第1因子)、「ありがとう」(第2因子)、「なんとかなる」(第3因子)、「ありのままに」(第4因子)だと前野教授。この4つが満たされれば社員は幸せになるのだ。

 「やってみよう」とは、夢・目標、強み、成長、自己肯定感を持つこと。「ありがとう」は、仕事上の関係性(顧客との関係、上司・部下・同僚との関係)において利他的になり、お互いに感謝、許容、承認、信頼、尊敬、自己有用感を持つこと。「なんとかなる」は前向きで楽観的に、自己受容すること。「ありのままに」は独立して、自分らしさを発揮することを意味する。

心の幸せの4因子

顧客体験の追求は社員の心を幸せにする

 スコットランド王立銀行は、ペーパーレス化によってデジタル顧客体験の向上を追求した。顧客体験の向上を追求する取り組みは“利他的”であり、社員の心の幸せの第2因子「ありがとう」が満たされる。

 また、創業290年のトラディッショナルな銀行が“デジタル化”に踏み出す挑戦は第1因子「やってみよう」、その挑戦を前向きにとらえると第3因子「なんとかなる」が満たされる。「こう考えると、イノベーションを起こす条件と、幸福の条件はまったく同じものだと言える」(前野教授)。

■関連サイト

  • Adobe Sign

カテゴリートップへ