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ホートンワークスジャパンが最も重要視するクラウドパートナーとは

「レッドハットとは逆のパートナー戦略でいく」――ホートンワークス廣川社長

2017年09月15日 07時30分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 OSSの分散処理ソフトApache HadoopやApache Sparkのディストリビューション「Hortonworks Data Platform(HDP)」、Apache NiFiやApache Storm、Apache KafkaなどOSSストリーミングデータ処理系ソフトのディストリビューション「Hortonworks DataFlow(HDF)」を提供するホートンワークス。3月に、元レッドハット日本法人社長の廣川裕司氏を日本法人(ホートンワークスジャパン)の社長に迎え、日本市場でのビジネス拡大に本腰を入れる。廣川社長に、その戦略を聞いた(聞き手はアスキー羽野三千世)。

ホートンワークスジャパン 執行役員社長の廣川裕司氏(9月5日、日本IBMとの提携発表会にて)

--ホートンワークスジャパンのビジネスの現状と、直近の経営目標を教えてください。

 ホートンワークスの創業は2011年、日本法人が設立されたのは2014年9月で私が3代目にして初の日本人社長です。

 ホートンワークスは100%オープンソースにコミットする企業であり、データプラットフォームの分野でオープンソースコミュニティへの影響、貢献が最も大きいテクノロジーベンダーです(Apache Hadoopの120人のコミッターのうち、ホートンワークスの社員は35人いる)。

 2月にIBMとの提携を発表しましたが、IBMがホートンワークスを選んだ理由として挙げているのは「オープンソースであること」と「Apacheへの貢献が大きいこと」。この提携から分かる通り、オープンソース企業であることがHadoopベンダーの競合であるクラウデラ、マップアール・テクノロジーズなどと一線を画す特徴、ビジネスの強みになっています。

 日本法人のビジネスの現状ですが、ワールドワイドの売上高1億8400万ドル(2016年12月期実績)のうち、日本の売上比率は数%ほど。GDPやIT市場の規模、ほかのITベンダーの売上比率を鑑みると、ホートンワークスジャパンの売上比率は5~6%まで拡大できるはずだと思っているので、今後3~5年で5%程度まで拡大することが経営目標です。

--日本の売上比率を拡大するためにどのような戦略をもっていますか?

 ホートンワークスはOSSテクノロジー企業であるがゆえに、徹底したパートナー・エコモデルをもってビジネスをしています。

 ワールドワイドでは、先日提携発表したIBMのほか、アクセンチュア、Dell EMC、マイクロソフト、テラデータなど全世界に2100社の開発パートナー、プラットフォーム・パートナー、リセール・パートナーがいます。タブローソフトウェアなどデータを扱うBIツールベンダーもパートナーです。

 リセール・パートナーで重要なパートナーの一社がDell EMCです。Dell EMCは、かつてはMapRのOEM提供を受けて自社のHadoopディストロを販売していましたが、現在はホートンワークスベースに変更しています。また、IBMもホートンワークスのリセラーとなってHDPを販売可能になりました。

 これがワールドワイドのビジネスの状況。一方で、パートナー・エコモデルの展開が日本法人はちょっと遅れていまして、国内のリセール・パートナーはまだ12社しかありません。12社のうち7社はグローバルでのパートナーであり、日本市場に特化したOEMパートナーは大手ではNECだけという状況です。

 日本での売上比率拡大に向けて、国内で継続的にホートンワークス製品を販売してくれるOEMパートナーを増やしていきます。

--このパートナー戦略はレッドハットで取り組んできたことと同様でしょうか。

 逆ですよ。レッドハットでは、Linuxディストロ以外のJBossなどは新しくSIパートナーのエコシステム作りが必要でしたが、Linuxディストロについてはもともと日立、富士通、NEC、Dell EMCなどサーバー・パートナーとの強いリレーションがあった。ここで、パートナーへの依存を減らしてもっとダイレクト営業をしようというのが、私がレッドハットの経営者として取り組んできたことです。

 逆にホートンワークスジャパンは、ダイレクト販売モデルはすでにもっています。ここにパートナー販売モデルを入れて、日本市場でのビジネスをスケールさせていきます。

 国内でターゲットとしている顧客は、まずは金融、その中でも自動車保険業がおもしろい。自動車保険は、ドライバーの運転状況から保険料を決定するようなプランが今後増えてきます。コネクテッドカーや車載センサーなどの動体から大量生成される非構造化データの処理は、ホートンワークス製品の得意とする分野です。そして、自動車、トラック、すでに国内でも、三菱ふそうトラック・バスさんが、HDPベースの「Azure HDInsight」を使って車両からのセンサー・データをリアルタイム分析するシステムを構築した事例があります。

 そのほかにも、競争過多なEコマース業界、携帯キャリア、製造業のスマートファクトリーなどの市場をねらっていきます。

--大規模データの処理基盤としてクラウド採用が進んでいますが、国内で最も重要なクラウド・パートナーはどこでしょうか。

 HDPが稼働しているプラットフォームは、現在1/4程度がクラウドベースになっており、その比率は年々増加してきています。クラウドやハイブリッド環境でHDP、HDFを使いやすくするために、使用量ベースで課金できるフレックス・プライシングという料金プランも用意しています。

 ホートンワークスジャパンとして最も重要なクラウド・パートナーは、やはり、Azure HDInsightでつきあいの長いマイクロソフトでしょう。三菱ふそうバス・トラックさんなど、HDInsightの国内顧客も増えてきました。

 もちろんAWS上でも「Hortonworks Data Cloud for AWS」というHDPベースのクラスタを簡単に構築するコントローラーを提供しており、HDPを簡単に使うことができます。HDPのインフラとしてAWSとAzureを比較したとき、AWSはアンマネージド、Azureは深くマネージドできるという違いがある。国内のユーザー企業がIoTをやりたいというとき、現実的にデータを処理するためのシステムを自らアーキテクトすることは難易度が高いので、Azureでマネージドで使いたいというニーズが多いです。

 ただし、ホートンワークスは、Hadoop 、Sparkのディストロだけでなく、HDF、また新しく、ビッグデータ・ソリューションという形で、データウェアハウス最適化ソリューション、IoTストリーミング分析ソリューションなどを投入しました。さらに、IBMとの戦略的提携も発表しています。クラウド・パートナーとの関係はこれからどんどん変化していきます。

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