38gという軽さ! クレジットカードサイズの携帯電話「Niche Phone-S」を衝動買い

文●T教授、撮影● T教授

2017年09月13日 12時00分

Niche Phone-Sは、少しだけクレカよりスリムで背が高い

スマートフォン花ざかりの昨今ではあるが、スクリーンの大きさやプロセッサーの差、カメラ機能などのわずかに残った差別化要因を除いてしまうと、右を見ても左を見ても同じようなスマホばかりが目立つ。

市場を見渡して見ても、ここ2~3年の間に筆者の目に止まったのは「イエデンワ」くらいだった。

そんな変わりばえしないケータイ市場だが、久しぶりにミーハー的に面白いガジェットを見つけた。

最近の面白いガジェットは、そのほとんどがクラウドファンディグ系が多い。残念ながら足腰の弱いメーカー系のガジェットは、ウェブ上で宣誓したスペック通り登場するのか? 遅れることなく出荷されるのか? そのあたりがまったく不明なギャンブル的商品も多い。

また昨今は、単なる海外クラウドファンディング商品のまとめ買い輸入業者のようなオペレーションをやってるだけの企業でも、日本国内では堂々と「クラウドファンディグ」と名乗って資金集め風なウェブ通販を行なうことが多いのでますます注意が必要だ。

そんな混沌としたなんちゃってクラウドファンディング時代に筆者が衝動買いした「Niche Phone-S」は、軽さ38gの“超軽薄級”ケータイ。

2009年に設立された、れっきとした日本企業「フューチャーモデル株式会社」が製造販売するスマートフォン世代のSIMフリー携帯電話で、Androidを搭載し、限定機能だけに割り切った製品だ。

6.5mmの超薄型携帯電話「Niche Phone-S」

筆者の衝動買いモデルは本体がホワイトのモデル

Niche(隙間)Phone-Sと名乗るだけあってNiche Phone-Sは本当の少しの隙間にも簡単に落っこちてしまう6.5mmの激薄仕様だ。

ケータイ電話というよりステーショナリー系のパッケージングだ

同梱物はこの5点だけ。取説の上に置いた「DCプラグ」がちょっと変わっている

ケータイというよりステーショナリーのようなパッケージに収まったNeche Phone-Sの同梱物は、本体と取扱説明書、DCプラグ、充電用USBケーブル、画面・本体清掃用のクロスの5点と極めてシンプルだ。

今回販売されたNiche Phone-Sにはブラックモデルとホワイトモデルの2種類があるが、筆者は表示画面部分以外が白のホワイトモデルを購入した。

筆者のiPhone 7 Plus(右)と比較すると大きさも厚さも圧倒的

手のひらに持って裏返すとほとんど隠れてしまうサイズ感

イメージ的には一周り大きなワンタイムパスワードカード

外形サイズは幅50×奥行き6.5×高さ90mm、重さは38gで0.96インチモノクロ有機EL(128×64ドット)を搭載

幅50×奥行き6.5×高さ90mmで重量38gというクレジットカードサイズのNiche Phone-Sは、実際に手にとって見ると極めて薄くて小さい。

しばらく身近にある何かに似ていると思っていたら、インターネットバンキングで使用するワンタイムパスワードカードにそっくりだ。

ディスプレーは0.96インチモノクロ有機EL(128×64ドット)、OSはAndroid 4.2、メインメモリーは512MB、ストレージは256MBだ。

ネットワークは、NTTドコモとソフトバンクの3G回線(LTE非対応)に対応している。そしてSIMのサイズはnanoSIM。

音声通話のほか、SMS、Bluetooth LE(Ver 4.0)、Wi-Fiテザリング、音楽再生、ボイスレコーダー、アラーム機能が利用可能。残念ながらストレージサイズの関係からデジタルミュージックプレーヤーとして保存や再生が可能なのは数曲くらいまで。また、再生可能な音声ファイルは、MP3/WAV/MIDI/AMR/64tonesだ。

そして薄さわずか6.5mmのNiche Phone-S本体にはスマホ本体の充電用ポートとして当たり前にある一般的なmicroUSBポートがない。

設計は日本の東京、組み立ては中国。右中央のカット部分はSIMスロット。中央上部の4つの接点はDC入力端子

DCプラグ(右)を枕にして、本体を斜めに寝かせて充電や、パソコンとのデータ通信を行なう

SIMスロットのカバーを外すときは一瞬考えてしまう。どちらかと言えば、引き剥がす、押し込むで大丈夫

その代わり、背面に4接点の専用のDC入力端子が用意されている。その接点を使用して同梱のマグネット式専用DCプラグ経由でUSB充電を行なう。本体内蔵電池の容量は550mAhで、連続通話時間は約3時間。待受時間は約72時間だ。

Androidベースの端末ながらカスタマイズがほぼできない

筆者の印象は、音声通話を除けば「Wi-Fiテザリング」が価値ある機能だ

Niche Phone-Sを使おうとするユーザー目線から見て一般的なSIMフリースマホとの違いはAndroid 4.2ベースのOSを搭載していながら一般的なユーザーカスタマイズ設定がほとんどないことだ。

一般的なスマホと共通している設定はSIMの挿入とテザリング機能を使うためのAPN設定くらいだろう。

SIMスロットはNiche Phone-Sに向かって左側面にあるが、一般的なスマホと異なり、ピンを使用するSIMトレイ取り出し方式ではなく、爪先でSIMスロットカバーを外す少し原始的な仕組みだ。

無理に剥がすと壊れそうでちょっと取り外しにくいカバーだが、無事nanoSIMを挿入してカバーを閉じれば終了だ。

Wi-FiテザリングのためのAPNの設定は、現在市場にあるスマホの設定とほぼ同様だ。

筆者のAPN設定はFREETEL(ドコモのMVNO)の設定を行なって保存した

テザリング時はFREETELのAPNをチェックして動作するようにしておく

筆者はドコモのMVNOであるFREETELのnanoSIMをNiche Phone-Sで使用したので、SIMのパッケージに記述されている設定内容をNiche Phone-Sのメニューのガイドに沿って入力していくだけで完了した。

QWERTYキーボードがなく、旧来のケータイキーだけでの入力なので多少手こずるが一度入力してAPNを保存しておけば、あとはテザリングが必要な時に、Niche Phone-Sの右端の上から3番目のボタンキーを押すだけでテザリングモードになってくれるので簡単だ。

W-Fi機能しか搭載していない「ThinkPad X1 Carbon」で、Niche Phone-Sでのテザリング通信は安定していた

筆者は早速SIM内蔵モデルではない「ThinkPad X1 Carbon」のWi-Fi機能で、テザリングモードのNiche Phone-Sを介してネット接続をやってみたが、3G通信でも快適なネットワークパフォーマンスだった。

音楽再生もできるが……イヤフォンジャックがない!

音楽ファイルの再生機能は、Niche Phone-Sにとっては主たる機能ではなくオマケのような機能だが、個人的に少し興味があったのでやってみた。

音楽ファイルをNiche Phone-Sにコピーするには、Niche Phone-SとパソコンをUSBケーブルで接続する。一番下の「MOB-N17-01ポータブルメディアプレーヤー」がNiche Phone-Sだ

MOB-N17-01ポータブルメディアプレーヤーをダブルクリックするとPhone storageが表示される

Phone storageの中のMusicファイルフォルダーに音楽ファイルをドラッグ&ドロップする

筆者はUSBメモリーに保存していた数曲のMP3音楽ファイルをNiche Phone-Sにコピーした

音楽ファイルをNiche Phone-Sの内蔵ストレージにコピーするには、付属のUSBケーブルとDCプラグを接続したNiche Phone-Sをパソコンに接続する必要がある。

ケーブル接続したNiche Phone-Sは、パソコンからは「MOB-N17-01ポータブルメディアプレーヤー」として可視化され、エクスプローラー上に表示される。

アイコンをダブルクリックすることで「Phone storege」が表示される。筆者の場合、Phone storegeは106MBのうち73.2MBが使用可能と表示された。

あとはPhone storegeの中の「Musicフォルダー」に、前述したいくつかのデータフォーマットの音楽ファイルをドラッグ&ドロップするだけだ。

筆者は、USBメモリーに保管していた音楽ファイルから6曲ほどをMusicフォルダーにコピーした。

音楽を聴くにはNiche Phone-Sのメニューから音楽再生機能を選択し、ライブラリーの中からお好みの曲を選べば即座に本体スピーカーから再生がはじまる。

残念ながらNiche Phone-SにはDC入力端子しかなく、一般的なスマホに標準的に備わっているイヤフォン端子は見当たらない。

Niche Phone-Sの本体内蔵スピーカーでも音楽は聞けるが、Bluetooth LE対応のステレオイヤフォンがあれば使用できる

イヤフォンで音楽を聴く場合は、市販のBluetooth LE対応のワイヤレスイヤフォンを接続する必要がある。

筆者はGalaxy S8+で使っているオンキヨーの「W-800BT」を使ってみたが、Niche Phone-SのメニューからBluetooth設定を選択し、ガイドに沿って簡単な準備をするだけですぐに繋がった。

ただ前述したように、容量が少なく数曲くらいしか保存できないので、実用的な音楽プレーヤーとして期待には応えてくれないだろう。

筆者は通話ができるモバイルルーターとして使う!

メーカーおすすめの使い方の1つはタブレット(データ通信)とMiche Phone-S(音声通話)の切り分け活用だ

ミニマル系大好きな筆者ならNiche Phone-Sをトリガーにして、すべての携帯物をミニマル系を目指してみたくなるが……

Niche Phone-Sを手にしてほぼ1週間。いろいろ使って考えてみたが、すでにスマートフォンが普段の生活に根付いてかっちりとその居場所を確保している現在、筆者の生活のパターンではNiche Phone-Sの隙間的な居場所はなかなか見つかりそうになかった。

Niche Phone-Sの商品企画の中で想定されたユーザーは、日常をタブレットやパソコン系などの大型スクリーン系の情報端末をメイン機と位置づけているユーザー層だろう。

Neche Phone-Sはシンプルな音声専用電話としてタブレット機と切り分けて利用するイメージだ。

しかし、移動中などにFacebook Messengerで緊急のメッセージを飛ばしたくなった時には、やはりポケットから取り出したフルスペックのスマホがありがたい。

経験の蓄積によりすでに機器によるアプリの明確な切り分けができ上がっているマルチクライアントユーザー以外は、Niche Phone-Sの並行試用は難しいかもしれない。

外部とのコミュニケーションの大半は音声通信だけ……というユーザーなら、Niche Phone-Sがすべての携行品を小さくするトリガーデバイスになってミニマルモバイルのスタイルはより良い方向に加速するだろう。

最終的に想像力の貧相な筆者が考えたマイ・ユースケースは、普段はNiche Phone-Sを音声通話もできる3Gテザリング端末としての位置づけだ。

当面、筆者はNiche Phone-Sを音声通話もできる「ポメラ」専用のWi-Fiテザリング・超軽量モバイルルーターとして活用するつもりだ

ディザスター時の緊急電話として、普通のモバイルバッテリーで何回も充電できそうだ

9V角型電池でも充電できるNiche Phone-Sは我が家ではディザスター対応の携帯電話としての価値も追求していきたい

今でも時々利用する「ポメラ」+「FlashAir」で書いた原稿をクラウドアップロードする時に、Niche Phone-Sをモバイルルーターとして利用することにした。

また、ディザスター(災害)時には大容量のモバイルバッテリーなら何回でも充電できて、普通の乾電池でも充電可能な緊急時電話として使おうと考えている。

今回の衝動買い

アイテム:
Niche Phone-S

価格:クラウドファンディングサービス「Makuake」にて8980円で購入(販売予価は1万780円)


T教授

 日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
T教授も関わるKOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。

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