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痴漢冤罪や葬儀…「ミニ保険」規制当局・金融庁の職務怠慢

2017年09月12日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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95社が扱う少短は「ミニ保険」とも呼ばれ、痴漢冤罪保険や葬儀保険、健康年齢を使用した医療保険など、ニッチ分野を狙ったユニークな商品が多い Photo by Akio Fujita

「なぜ今ごろ会議を開くことにしたんですかね。不思議ですよね」──。

 9月初旬、金融庁で開かれたある有識者会議に参加した関係者の多くは、そう口をそろえた。この会議のテーマは、「少額短期保険業者の経過措置について」。少額短期保険業者とは、保険金額が300万円など少額で、かつ引受期間が1年といった短期の商品を扱う保険会社のことだ。

 これら少短業者の多くはかつて、「無認可共済」などとして根拠となる法律がない中で活動していた。だが、金融庁が監視を強化するため2005年に保険業法を改正し、登録制の「少額短期保険業」を新設している。

 その際、少短業者として登録した15社には、本則で定めた保険金額に移行するための激変緩和措置として、死亡保険なら本則(300万円)の5倍となる1500万円までの引き受けを認めている。

 当初は7年後に期限を迎えるはずだったが、12年の法律改正で保険金額の上限を本則の3倍などに引き下げた上で、さらに5年間の延長が認められた。その期限が、18年3月末に迫っているのだ。

スルーした本則見直し

 そうした状況下で、大手の生命・損害保険会社や少短業者の多くが首をひねっているのには、大きく二つの要因がある。

 一つは、前回の延長時には有識者会議を開いていないこと。当時は、審議会などを通じた政策決定を嫌う旧民主党政権時代だったこともあるが、前回は議論が不要で、なぜ今回は必要なのかという合理的な理由は見いだしにくい。

 二つ目は、緩和措置が切れる期限まであと半年余りという差し迫った時期になって、会議が開かれたこと。当然ながら、議論に十分な時間が割けず、金融庁は2回目の会議で早くも意見を取りまとめにかかる予定だという。

「激変緩和措置にもかかわらず、12年も続いているのはなぜか」「本来は本則の見直しを議論すべきではないのか」

 会議の場で、有識者から金融庁への批判とも取れる意見が出たのも無理はない。金融庁は激変緩和といいながら12年間も措置を続け、あたかもそれが本則であるかのように機能してしまう状況をつくってしまった。にもかかわらず、実態に見合った本則の姿とはという議論を素通りし、期限が迫った時期になって、緩和措置の延長の是非だけを議論しているわけだ。

 延長をめぐって背後に政治家の影がちらつく場面はあるものの、金融庁が前例を踏襲し、少短への規制議論に大きな労力を割くことには、「ベストプラクティス」ではないといわんばかりの受け身の姿勢が随所に見られる。

 自らの「不作為」を覆い隠し、利害の絡む保険会社や少短業者の誰もが戸惑う運用をするのが、規制当局としてのあるべき姿なのだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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