このページの本文へ

業務を変えるkintoneユーザー事例 第14回

広大な国土での情報共有をアサヒビール中国が語る

中国ビジネスのスピードに追いつける営業現場をkintoneで実現

2017年09月05日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●金春利幸

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

7月21日、灼熱の上海で開催された「Cybozu Days 2017 Shanghai」の中で、2回目となるkintoneのユーザーイベント「kintone hive shanghai」が行なわれた。トップバッターで登壇したアサヒビール中国は、おもに営業における情報共有にkintoneをフル活用している。

kintoneの導入が300社を超えた中国でのビジネス

 事例や使いこなしを共有するkintoneユーザーのイベント「kintone hive」。いつものようにサイボウズ kintoneプロダクトマネージャーである伊佐政隆氏がイベントの趣旨やkintoneの現状などを説明。kintone hiveの会場では朝のジョギングを欠かさない伊佐氏は、「上海は6~7回来ているが、車が怖くて今まで走ってこなかった。でも、今日は中国のメンバーに誘ってもらって、並木道を走ってきました」と挨拶する。

kintone hive shanghaiで司会を務めるサイボウズ kintoneプロダクトマネージャー 伊佐政隆氏

 初参加の人も多い中国でのイベントということで、伊佐氏は普段より丁寧にkintoneについて説明。「今まで業務システムがほしいと思っても、プログラマーにお願いするしかなかった。でも、kintoneという基盤サービスがあれば、業務に詳しいみなさんが自分たちに必要なシステムをドラッグ&ドロップで作ることができます」とkintoneの価値について解説する。その一方で複雑なシステムはkintoneでの開発を手がけるパートナーに任せ、業務にマッチしたシステムを作ることが可能になっているという。

 日本では導入が7000社を超えたが、中国でも300社、東南アジアでも130社にのぼっており、日系企業を中心に導入をのばしている。とはいえ、すべての事例で簡単に、成果の上がるシステムをスピーディに作れるわけではない。そのため、ユーザー同士でうまくいったところ、困っているところを共有しようというのが、kintone hiveのイベントの趣旨だ。

日本の25倍の国土で情報共有をいかに効率的に進めるか?

 トップバッターは、アサヒビール中国 物流・IT部 部長の小山英記氏。同社はアサヒグループホールディングスの子会社にあたり、中国国内で生産されたスーパードライを中心にした生ビールや日本からの輸入製品を販売している。上海本社のほか、北京、大連、深セン、杭州に分公司(支社)、3つの事務所を展開しており、工場は2箇所。「今後はペローニやピリスナーウルケルなどの欧州ビールを展開していく予定」とのことだ。

アサヒビール中国 物流・IT部 部長の小山英記氏

 中国でアサヒビールというと日本料理屋の印象が強いが、最近は地元料理の店や生ビール専門店などでもスーパードライを飲むことができるという。アサヒビールを出す地元店をいくつか紹介した小山氏は、「みなさんチンタオやシュイファーを頼むが、まずはスーパードライがあるかお店に聞いてもらいたい(笑)」とアピールした。

 さて、アサヒビール中国がkintoneを導入した理由は、「ビジネス環境の急激な変化への対応」「情報共有と可視化」「業務プロセスの標準化」の3つだ。「特に中国はビジネス環境の変化が速い。利用者の使いたいシステムをイチから要件定義し、ウォーターフォールで作っていくと全然間に合わない」と小山氏は語る。また、広大な中国でビジネスを展開するためには、情報共有基盤や可視化、業務プロセスの標準化などが必須だった。こうした課題の元、小山氏はアサヒビール中国でのkintone活用を披露した。

販促品手配や営業日報、成功事例で活用!今後はデータ活用に期待

 1つめは店舗用の販促品の手配だ。これまでビールのジョッキやポスター、日系店舗向けの提灯など販促品の手配は、「電話やメール、紙など手配がばらばら」「販促品の在庫が正確にわからない」「販促品がどの店にどれだけ手配したか不明」といった課題があった。これに対して、同社はkintoneを導入し、販促品手配の仕組みを構築。営業が店舗側から販促品を承り、上司が承認し、運用会社に手配するというプロセスがkintoneから行なえるようになった。手配プロセスを統一できたほか、需給管理の精度の向上、店舗単位での販促品提供の可視化が実現。「月間で350~400件の販促品手配を効率よく行なえるようになった」(小山氏)。

販促品の手配をkintoneで管理

 2つめは営業日報。ここでは「店舗会費の頻度把握できない」「部下の活動報告が把握しづらい」「部下としっかりコミュニケーションしたい」などの課題があった。特に成都や武漢などの事務所は上海の管轄になるため、距離を障壁としない情報共有体制が必要だったという。これに対して同社はkintoneで営業日報のシステムを構築し、商談単位の報告と担当ごとの営業日報を提出できるようにした。日報に対してはチャットのようにコメントを入れられるので、1対1で商談や担当をフォローできるようになったという。

営業日報の導入で部下とのコミュニケーションも促進

 3つめは成功事例。今までは総経理が営業の成功事例を手入力し、それを本社に集めてパワーポイントの資料にして各部長に配布していた。営業の表彰も書類を元に各部長が投票して決めていたが、kintoneを活用することで、営業マンが自ら情報発信できるようになったという。営業表彰の投票や集計もkintone上でできるほか、過去の成功事例をキーワード検索できるようになっており、営業のモチベーションアップにも貢献している。「もちろん入力してくれる人としてくれない人がいる。でも、してくれる人は生ビールサーバーの洗浄を店舗側で習慣づけるためにはどうしたらよいかなど、苦労したところをきちんと共有してくれる」と小山氏は語る。

社内で成功事例の共有もkintoneで実現されている

 最後、小山氏はkintoneを使った感想を「簡単に構築でき、運用保守が容易」「ライセンス料、保守料が比較的安価」「サイボウズ中国の手厚いサポート」「システム障害がほとんどない」などを挙げた。その上で、「データも溜まり始めているので、これをうまく営業で活用していきたい。サイボウズ中国は優秀な方が多いので、そこらへんの提案も期待したい」と述べ、講演を終えた。

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事