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Imagine Cup World Finals 2017レポート後編

MSが進めるIT人材育成とは 世界最大の学生ITコンテスト“Imagine Cup 2017”レポ

2017年09月12日 09時00分更新

文● 神谷加代 編集●ガチ鈴木/ASCII STARTUP

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 2017年7月24日、25日の2日間、米マイクロソフトが主催する学生ITコンテスト“Imagine Cup World Finals 2017”がシアトル本社で開催された。日本からは東京大学大学院と東京工業大学のチームが出場したが、惜しくもファイナル出場には至らなかった。後編は最終4チームが競い合ったファイナルの様子とともに、大会中にプレス向けに開催されたマイクロソフトのIT人材育成に関するインタビューについても触れる。

前編はコチラ「東大、東工大が挑戦 世界最大の学生ITコンテスト MS“Imagine Cup 2017”本戦レポ」(関連記事)

Imagine Cup World Finals 2017が開催されたシアトルのマイクロソフト本社

敗者復活戦は、言葉だけで魅力を伝える2分間のピッチ

 大会2日目は、敗者復活戦から始まった。セミファイナルに進むことができなかった全チームを対象にその権利が与えられ、日本代表で出場したチーム“NeuroVoice”(東京大学大学院)と、チーム“TITAMAS”(東京工業大学)も最後の望みをかけて挑んだ。

 敗者復活戦は2分間のピッチ形式で、ソリューションやプロダクトの魅力を言葉だけで伝えるというもの。スライドや何かしらのツールを使うことは許されず、わかりやすいストーリーでパッションを熱く語ることが求められる。

Imagine Cup World Finals 2017 Imagine Cup World Finals 2017
NeuroVoice(東京大学大学院、左)とTITAMAS(東京工業大学)、敗者復活戦の様子。

 一般的に、日本人はこうした形のプレゼンに慣れておらず、苦手意識を持っているだろう。しかし、両チームの学生たちは、この難しいピッチも堂々たる態度で挑み、伝えるべきメッセージを流暢な英語で訴えることができた。

 こうした彼らのプレゼン力の背景には、彼らが持っていた能力の高さもさることながら、今回の世界大会に向けて、日本マイクロソフトがグロービス、グロービス経営大学院とベルリッツ・ジャパンの2社と提携し、両チームにメンタリングを提供したことも大きい。学生たちは、世界大会前の3ヵ月間、プロダクトの価値をどのように伝えるのか、ストーリーを重視したプレゼンの手法など、多方面でアドバイスを受けてプレゼン力を鍛えたという。しかし残念ながら、日本の両チームは敗者復活戦で選ばれることはできず、Imagine Cupでの闘いはここで終わった。

優勝賞金10万ドルを手にするのは、どのチーム?

 敗者復活戦の後は、いよいよセミファイナル。ここまで勝ち残った8チームと敗者復活戦で選ばれた2チーム、計10チームが闘った。その後、ファイナルに進む4チームが選出され、いよいよ優勝賞金10万ドルを賭けた最後の闘いが始まった。ファイナルに選ばれたのは、以下のチームだ。

ファイナルに勝ち進んだ4チーム。左からカナダ、アルゼンチン、アメリカ、チェコスロバキア共和国

Nash(アルゼンチン)
自然災害の際に人命救助が必要な場所をドローンで認識し、レスキューに通知するシステム

NeuroGate(カナダ)
キネクトと機械学習を活用し、神経変性疾患を持つ患者の歩行パターンを分析して診断に活かすソフトウェア

X.GLU(チェコスロバキア共和国)
糖尿病を持つ子供のための血糖値測定システムと測定器

Oculogx(アメリカ)
倉庫内の物探しの効率化を図るホロレンズ対応のMRアプリ

 ファイナルで優勝に輝いたのは、糖尿病を持つ子供のための血糖値測定システムと測定器を発表したチェコスロバキア共和国のチーム“X.GLU”だ。同チームは、クレジットカードサイズの血糖値測定器を開発し、カードが読み取った血糖値の結果をNFC経由でスマホアプリに送信して記録できるシステムを構築した。

 子どもの糖尿病は、保護者がいかに血糖値を管理できるかが重要であるが、そもそも日々の測定を怠ることも多い。そこで同プロダクトでは、血糖値を測定すればポイントがもらえたり、目標を達成すればバッチがもらえるなどのゲーミフィケーションを取り入れて、子供が自分から測定するインセンティブを取り入れた。すでに実証実験にも着手しており、プロダクトは特許も取得しているという。

 ファイナルのプレゼンテーションで同チームは、プロダクトの扱いやすさと共に、スケーラビリティと技術面を審査員にアピールした。糖尿病患者は世界で約4億人を超え、2040年には6億人に達する。その数字を挙げて、大人の糖尿病患者にもプロダクトを広げていけることや、スケールしていくためには、Microsoft Azureのテクノロジーが有効であることを訴えた。Imagine Cupではコンセプトをビジネスに落とし込むための具体性やフィージビリティ(実現可能性)が問われるが、同チームは説得力あるプレゼンで優勝を手にしたといえる。

優勝はチェコスロバキア共和国のチーム“X.GLU”の手に

学びのシフトを目指す、マイクロソフトのIT人材育成

 Imagine Cupの大会期間中、マイクロソフトのIT人材育成に関する記者説明会が設けられた。マイクロソフトは近年、『Microsoft Imagine』や『Minecraft: Education Edition』、さらにはAzureトレーニングコースを無料オンライン講座MOOCで提供するなど、教育機関向けのプログラミング教育やIT人材育成プログラムを充実させているが、Imagine Cupもその取り組みのひとつである。説明会に登壇したのは、Worldwide Education部門でIT人材育成に尽力するAnthony Salcito氏とコーポレート部門でAzureを推進する立場にあるCharlotte Yarkoni氏。両者は、マイクロソフトが考える教育やIT人材育成、Imagine Cupについて語った。

Charlotte Yarkoni 氏(Corporate Vice President Cloud and Enterprise Division、左)、Anthony Salcito氏(Vice President - Worldwide Education)

 世界中の教育機関を飛び回るAnthony Salcito氏は、「第4次産業革命でテクノロジーが変化し続ける今、子供たちの学びもシフトしていかなければならない」と述べた。

 その背景として、子供たちの日常生活におけるデジタル利用が増えていること、そして、学び方そのものが変わってきていることを挙げた。以前は、学び=知識を覚えることであったが、近年は仲間と協力しながら何かを作ったり、課題を解決したりしながら学ぶ機会が重要視されている。コラボレーションやコミュニケーション、さらには自分の考えをいかに共有して伝えることができるか、そんな力がより求められるようになってきたため、学校の学びも変わっていくことが重要だと述べた。

 さらに、仕事で求められるスキルが変わってきたことも学びがシフトすべき理由の背景にあるという。そのなかでも「コンピュテーショナルシンキングとクリティカルシンキングを含む、最低限のテクノロジーのスキルは必要だ」とSalcito氏は強調した。ある調査によると、2022年までにIT分野では620万個の新しい仕事が増えると言われているが、その一方で多くの国ではコンピュータサイエンスを学ぶ学生が少ないという課題を抱えている。つまり、社会が求める人材と教育機関が輩出する人材にギャップがあり、これを埋めていく必要があると述べた。

 マイクロソフトでは、こうした現状に問題意識を持ち新しい学びへのシフトを進めるべく、STEM教育の普及やIT人材育成に注力している。なかでも幼稚園から高校生の年代を対象にした『Minecraft: Education Edition』はコンピュータサイエンスへの入口として良い教材であるとSalcito氏は主張し、多くの教育者に利用してほしいと語った。

Imagine Cup 大会終了後、プレス向けキャンパスツアーでは『Minecraft: Education Edition』の説明会も実施

 Azureを推進する立場にあるCharlotte Yarkoni氏は、「今後ビジネスのあらゆる場面で、開発者がDecision Makerになっていくだろう」と述べた。単にモノを作るだけでなく、ソリューションを創造したり、課題を解決したりする過程において、開発者の意見や価値観が大きな役割を持つようになるというのだ。

 さらには、IT分野におけるビジネス予測として、74%のテクノロジー最高財務責任者たちが、クラウドが事業にもっとも影響を与えると答えていることを同氏は強調した。「そうした動きを考慮して、未来に活躍する人材を求めるImagine Cupとしては、Azureを利用することを今回のルールに盛り込んだ」とクラウドの重要性についても言及した。

 Imagine Cupは、テクノロジーによるソリューションの創造を通して、学生が成長できる場を提供している。と同時に、学生たちが闘うの姿からは、“新しい時代を生き抜くために足りないもの”も見えてくる。日本は、新しい学びへシフトしていくためには何が必要か。テクノロジーが進化を続ける今、教育が持つミッションをもう1度考えなければならない。

■関連サイト
Imagine Cup

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