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ゲルシンガー、ジャシー、両CEOに聞いたVMware Cloud on AWSの価値

AWSを突き動かした「なぜVMwareといっしょにやらないのか?」の声

2017年09月01日 10時00分更新

文● 大河原克行

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 VMwareは、Amazon Web Servicesとの協業により、VMware Cloud on AWSのサービスを開始すると発表した。2017年8月28日から、米ラスベガスで開催された「VMworld 2017」における最大のトピックスであり、VMwareのパット・ゲルシンガーCEOは、「顧客が本当に望むクラウドを、望む手法で構築できるようにする。両社の協業はまだ始まりにすぎない」と語った。VMworld 2017では、報道関係者を対象に、VMwareのゲルシンガーCEOとAmazon Web Servicesのアンディ・ジャシーCEOによるQ&Aセッションが行なわれた。その様子をレポートする。(以下、敬称略)

VMwareのゲルシンガーCEOとAmazon Web Servicesのアンディ・ジャシーCEO

AWSに移行するために既存の資産をすべて捨てなければならないのか?

 

 今回のVMware Cloud on AWSの発表は、2016年10月に発表された戦略的提携をもとに進められたもので、コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、セキュリティのすべてを単一スタックとして統合したVMware Cloud Foundationを活用し、柔軟性に優れたAWSインフラのベアメタル上で稼働させる。エンタープライズ向けのSoftware-Defined Data Center(SDDC)ソフトウェアをAWS上に展開することで、顧客はVMware vSphereベースのプライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウドの環境において、AWSサービスを利用しながらアプリケーションを稼働させることができる。

 サービスはまず米オレゴンにあるデータセンターを活用し、米国西部リージョンで提供が開始される。日本では、来年のサービス提供が見込まれている。VMware Cloud on AWSは、VMwareのパートナーを通じて販売・サポートされることになり、企業のIT担当者は、慣れ親しんだVMwareのツールを用いて、クラウドベースのリソースを管理できる。

――VMwareとの新たな関係において、AWSにはどんなメリットがあるのか。

AWS ジャシー:この協力関係はAWSでも熟考を重ねた結果、スタートしたものである。AWSには顧客が求めているものを提供するという基本姿勢がある。Netflixが、すべてのシステムをAWSに移行するなど、エンタープライズ企業でも全面的にクラウドを活用する例が出ているが、クラウド環境におけるエンタープライズアプリケーションの活用はまだ始まったばかりだ。クラウドへの移行プランを策定している企業が増えるなか、彼らから言われるのは、「なぜ、VMwareと一緒にやらないのか」というものであった。多くのリソースを割いて、エンタープライズアプリケーションのさまざまなツールを開発し、さらに運用もしてきた。しかし、AWSに移行させるために、これらのすべてを捨てなくてはならないのか。それができないので、AWSに移行できないという声も上がっていた。

AWS アンディ・ジャシーCEO

こうした声に対応するため、VMware Cloud on AWSを発表した。もちろん、最初はどうなるのかわからなかった。しかし、これを発表するまでの間、プライベートベータ版を動かしたりといった数々の取り組みを行なうなかで、予想以上のポジティブなフィードバックを得ることができた。もちろん、このトランジションは、ユーザーにとって1年で終わるようなものではなく、数年かかるだろう。しかし、これまで活用していたツールを、そのままAWS上で利用できることは大きなメリットがあるはずだ。それは、われわれとっても大きなメリットがある。

――VMwareはパブリッククラウドサービスであるvCloud Air事業をフランスのOVHへ売却し、AWSと連携した。これは、パブリッククラウドの戦略が大きく変わったと見ていいか。

VMware ゲルシンガー:vCloud Airの事業はOVHに売却したが、そもそもVMware自らはデータセンターを持っているわけではない。今後はデータセンターを持っているAWSを活用してVMware Cloudのビジネスを行なっていくことになる。その点では戦略には変更があったといってもよいだろう。来年末までに、AWSのすべてのアベイラビリティゾーン(AZ)で、VMware Cloudを提供をしていくことになる。これは中国も含めてだ。VMware Cloud on AWSは、VMware Cloudのなかでも中心的な役割を果たすことになる。

――VMwareは、AWSのデータセンターを活用することになるが、顧客はどこまで広げることができるのか。

VMware ゲルシンガー:AWSのユーザーであれば、インスタンスをリクエストしてすぐに使用することができる。また、VMwareは特別なインスタンスを提供し、VMwareスタックの中から立ち上げ、vCenterから管理できるようになる。

これまでのオンプレミスでは、ピークキャパシティを前提として構築していた。しかし、AWSを活用することで、平均キャパシティを前提として構築できる。フレキシルなスケーラビリティが提供され、ビジネスユニットも好きなだけ使うことができる。データセンターのキャパシティの考え方が大きく変わることになる。

AWS ジャシー:アベイラビリティやキャパシティなどの考え方は、これまでのAWSのクラウドサービスと変更はなく、柔軟に拡張することができる。多くの企業がこのサービスを大規模に使いはじめたとしても、VMwareのワークロードは予測可能なものが多く、顧客と会話をして、データセンターのリソースを決めていくことができる。オンプレミスでは、十分なキャパシティがあるのかが重要であったが、AWSであれば16カ所のデータセンターと、44のアベイラビリティゾーンを活用できる。今後のデータセンターのキャパシティの拡張などについては、VMwareといっしょに考えていく。

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