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原発政策の議論なしに進む「エネルギー基本計画」見直し会議の画餅

2017年08月22日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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エネルギー基本計画の見直しが始まったが、「骨格を変える段階にない」(世耕経産相、写真右端)と、すでに結論が決まっているようだ Photo by Ryo Horiuchi

 すでに出口が見えた「見直し」が進もうとしている。経済産業省の有識者会議でエネルギー基本計画(エネ基)の見直し議論が始まった。

 東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の事故から3年後の2014年4月に策定されたエネ基は、旧民主党政権が掲げた「原発ゼロ」を撤回。原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原子力規制委員会の規制基準に適合した原発の再稼働を進める方針を盛り込んだ。

 これを受け、15年7月に政府が閣議決定した長期エネルギー需給見通しで、30年度の電源構成(総発電量に占める各電源の割合)の原発比率を20~22%と決めた。

 国内の原発のうち、7月末時点までに再稼働したのは5基のみ。廃炉を決めた15基を除き、稼働している5基を含む44基を全て稼働させ、運転期間を原則40年とする現行ルールを適用すれば、見通しにギリギリ届く計算だ。ただ規制委員会の審査が長引いていることに加え、再稼働に反対している地元自治体は多く、原発が稼働する見通しは立っていない。

 こうした状況を受け、電力業界は今回の見直しで、原発の新増設や建て替え(リプレース)の記述が盛り込まれるのでは、と期待していた。というのも、約1年前に関係者の一部から「そろそろリプレースの話をしてもいいんじゃないか」との声があったからだ。

 しかし安倍政権が失速し、国民に不人気な政策の原発に触れたくないとの思惑が働き、トーンダウンした。有識者会議の資料において、原発に関する記述は「依存度低減、安全最優先の再稼働」と前回とほとんど変わらず、「新増設」の文字はなかった。世耕弘成経済産業相も「計画の骨格を変える時期ではない」と述べた。

エネ基もパリ協定も画餅

「初めから結論を与えられて、会合を開くのは本末転倒」。有識者会議の委員を務める橘川武郎・東京理科大学大学院教授はそう批判した。エネ基を前提に政策を進めるならば、「原発の再稼働は滞っているため、依存度は思い切り下げながらリプレースの議論をしないといけない。エネ基を見直すべきで、政府は逃げている」と手厳しい。

 日本は温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で、50年までに温室効果ガスを13年比で80%削減する計画を示した。CO2削減に貢献する再生可能エネルギーは高コストとインフラ整備の遅れが課題。手っ取り早く大幅にCO2を削減できるのは、いまのところ原発しかない。原発の新増設、リプレースには時間がかかるとされ、橘川教授は「だからこそ今回の見直しで議論しないと、原発は終わる」と強調する。

 原発と正面から向き合わないまま、議論を先送りにすればエネ基は画餅に帰す上、国際社会との約束も掛け声倒れに終わる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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