このページの本文へ

私たちの働き方カタログ ― 第1回

シックス・アパート「SAWS」が目指す「みんなのリモートワーク」

オフィススペースを1/3にして全員リモートワークを実践したら?

2017年09月14日 15時00分更新

文● 大谷イビサ/Team Leaders 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第1回はCMSプラットフォーム「Movable Type」の開発・販売を手がけるシックス・アパート。同社が実践してきた現実的な「全員リモートワーク」を追う

シックス・アパート 代表取締役 古賀早氏

「こんな立派なオフィスはいらないね」からスペースを1/3に

 シックス・アパートがリモートワークを始めたのは、2011年の東日本大震災にさかのぼる。当時、同社はインフォコムグループの傘下にあり、20%の電力削減が求められたことから、毎週水曜日にオフィスを閉めるという施策に乗り出したのがきっかけだ。

 週5日間のうち、1日をリモートワークにしてしまえばオフィスの電力が20%削減できるというシンプルな発想。これを機にリモートアクセス用のVPNを整備し、ファイルサーバーもAWSのようなクラウドに移行した。そして、まずは夏期限定の自宅作業推奨日を皮切りに、以降リモートワークの体制を整えてきた。

 その後、2016年のEBOによる独立を機に、同社は全員リモートワークという体制に移行。代表取締役の古賀早氏は、「独立を機に働き方を見直してみたら、そもそもこんな立派なオフィスいらないよねという話になった」とのことで、赤坂にあった100坪の驕奢なオフィスから、今の神保町のオフィスに引っ越したという。

 新オフィスはスペースが以前の1/3になり、半分を会議室に充てたため、そもそも従業員全員は座れない。しかし、裁量労働を前提にしているスタッフも多く、出社する従業員自体も少なかったため、問題なかったという。「もともとメールで『今日半休します』と言える会社だったので、それを制度にしただけ。毎日リモートワークは不安というスタッフもいましたが、毎日来てもいいし、今までの働き方を変えなくていいですよという説明は気を遣いました」(古賀氏)という。

 一方、リモートワーク導入の阻害要因は、むしろ外部にあった。ある子育て中のママは毎日自宅で作業していると、周りから「毎日家にいるのに、保育園に預けている」という目で見られるため、制度開始当初は毎日出社していたという。また、自治体のテレワーク助成金を申請したら、「テレワークしている人のGPS情報を1ヶ月分提出し、自宅から動いていないことを証明せよ」と言われたとのこと。さらに「1日に2度働く」といった新しい働き方に勤怠管理システムが追いついていない状況も課題だったという。

「リモートのメンバーがマイノリティでなくなった」

 こうした課題の末に生まれたシックス・アパートの「SAWS」は在宅ではなく、どこで働いてもよいというリモートワーク制度。コワーキングスペースでも、喫茶店でもいいし、実家に帰ったときに働いてもよい。地方でリモートワークを行なうスタッフもおり、人手不足の昨今、地方の優秀な人材を受け入れられる苗床ともなっている。全員リモートワークなので、公平感も高い。同社の壽かおり氏は、「一部のメンバーがリモートではなく、全員がリモートワークになったので、リモートのメンバーがマイノリティではなくなった」と語る。

 IT企業ということもあり、快適なリモートワークを推進するテクノロジーはふんだんに活用している。業務システムも基本はクラウドで、経費精算はマネーフォワード、スタッフ間のやりとりは基本Slackを使っている。Slackではダイレクトメッセージやチャネルをうまく活用し、フェイツーフェイスのチーム会議は月に1回程度にとどめている。また、Slackのボットを使って、オフィスの在籍状況や電気のオンオフ、酸素濃度までが流れるようになっている。「オフィスにセンサーが設置されているので人が多いと、ボットが『苦しい』って言います。でも、今日は水曜日なので、酸素がいっぱいあります(笑)」(古賀氏)。

オフィスの様子をSlackで教えてくれる

 制度面でも無駄は極力廃した。少額な経費精算は振り込み手数料を省くため、オンラインで送付できるギフトカードを利用。また、オフィスの家賃や定期代の支給をなくした結果として浮いたお金を、リモートワークの経費として一律に手当として支給した。「事前の申請不要で、使い方は自由。コワーキングスペースの利用に使ったり、自宅作業の光熱費や通信費に使ってもOKです。数ヶ月分貯めて、モニターアームや自転車を買ったという人もいましたね」(古賀氏)。8割の従業員が参加したEBOで独立したため、社員が株主ということもあり、会社の方向性を自分たちで公平に決めていこうという「自分ごと文化」が根付いている。こうした点も働き方改革が前進した大きな理由のようだ。

会社概要

シックス・アパート株式会社は、2001年に米国サンフランシスコで創業した、インターネットのビジネス利用を促進する製品やサービスを提供する企業です。個人のブログから大規模なコーポレートサイトまで、様々なシーンでのウェブサイト構築・運用・管理を支援するCMS プラットフォーム「Movable Type」、高機能 CMSを低コストかつメンテナンスフリーなウェブサービス型で提供する「MovableType.net」、企業向けブログサービス「Lekumo(ルクモ)ビジネスブログ」、またスマートフォン向けのエッセイ投稿サイト「ShortNote」を提供しています。

■関連サイト


カテゴリートップへ

この連載の記事
ピックアップ