今回のことば
「パナソニックのBtoBソリューション事業は約60年の歴史を持つ。東京オリンピック/パラリンピック関連では、全体で約1500億円、当社だけで約500億円の売上を目指す」(パナソニック システムソリューションズ ジャパンの片倉達夫社長)
パナソニック システムソリューションズ ジャパンは、2016年度に2879億円の売上高を、2018年度には、3200億円に引き上げる計画を明らかにした。
同社は、日本マイクロソフトからパナソニック入りした樋口泰行氏が率いるコネクティッドソリューションズ社傘下の組織。日本国内におけるBtoBソリューション事業を担当し、コネクティッドソリューションズ社のなかでも最大規模の売上高を誇る。
パナソニック システムソリューションズ ジャパンの片倉達夫社長は、「パナソニックのBtoBソリューション事業は約60年の歴史を持つ。そのなかで、日本国内の官公庁や法人ユーザーを対象に、パナソニックの持つ技術や製品と、ICTサービスインテグレーションを結びつけ、経営課題を解決する企業が、パナソニック システムソリューションズ ジャパンである」と位置づける。
コネクティッドソリューションズ社の2018年度の業績見通しは、売上高が7.5%増の1兆1860億円、営業利益は27.5%増の880億円、営業利益率7.4%。そのなかで、パナソニック システムソリューションズ ジャパンは、2016年度実績で2879億円の売上高を、2017年度には3000億円、2018年度には、3200億円に引き上げる計画だ。
コネクティッドソリューションズ社の樋口社長が、「将来的には10%以上の営業利益率を目指す」とするが、そのなかで、パナソニック システムソリューションズ ジャパンが、コネクティッドソリューションズ社の成長戦略を実現するための原動力になるのは間違いない。
社員の半数以上はエンジニア
パナソニック システムソリューションズ ジャパンは、従来のパナソニック システムネットワークスを再編し、2017年4月付けで社名を変更して独立法人化。新たなスタートを切ったばかりの組織だ。
もともとは、1958年に設立した松下通信工業や、1955年に設立した九州松下電器、1960年に設立した松下電器特機営業本部などを統合、再編した経緯がある。
全国70拠点というきめ細かな拠点体制を敷き、約4500人の社員を擁する。そのうち、システムエンジニアが25%、フィールドエンジニアが27%を占めており、社員の半数以上をエンジニアが占めるのも特徴だ。
パナソニックというと、白物家電やAV機器などを思い浮かべる人が多いだろうが、パナソニックは、約60年間に渡ってBtoBソリューション事業に取り組んでおり、その一翼を担っているのがパナソニック システムソリューションズ ジャパンということになる。
パナソニック システムソリューションズ ジャパンでは、「パナソニックのコアプロダクツを軸に、システムインテグレーション、設置・施工、保守メンテナンス、クラウド運用サービスなど、国内向けBtoBソリューションを提供する」ことになるが、その範囲は幅広い。
これまで60年間の取り組みを振り返ると、公共インフラ分野では、自動化交通情報システムやETCシステムなどの納入実績を持つ。社会インフラ分野では、NHK向けに日本初となる放送用カメラ装置や、ニュース番組編集送出システムの納入などでの実績を持つ。また外食分野では、日本初のスーパー向けPOSシステム、ファーストフード向けPOSシステム、物流分野においては、宅配事業者のドライバーが所持するハンディーターミナルの導入などで先行。
さらに最近の導入事例では、高機能型観光案内標識やパスポート審査システムのほか、センサーを利用した混雑検知システム、生産ラインネットワーク監視カメラシステム、統合輸配送支援システム、スタジアムでのチケッティングシステムなどがある。
ユニークな事例では、300メートル先を飛ぶドローンを検知するソリューションや、水中ロボットによるダムの耐性点検ソリューションの例があげられる。
また東急電鉄とは、2017年4月に光IDソリューション「LinkRay」をコア技術に位置づけたマーケティング会社「リンクレイマーケティング」を合弁で設立。同社を通じて、LinkRay対応のサイネージや交通サインなどを活用した各種ソリューションパッケージの提案も開始。SHIBUYA109のエンタテイメントポップアップストア「DISP!!!(ディスプ)」では、店内のディスプレーに、LinkRayアプリを起動したスマートフォンをかざすと、限定動画を配信。さらに、東急東横線の武蔵小杉駅では、スマホアプリの「東急線アプリ」とLinkRayアプリとの連携機能により、駅の利用者向けに周辺スポットへの道案内を、LinkRayで実現するといった取り組みもある。
そして、レッツノートやタフブック、タフパッドを利用したソリューションも数多く提供している。昨今では、タフブックの堅牢性を生かした設備保守・作業支援システムなどに力を注いでおり、今後はタフブック、タフパッドの国内販売に弾みをつける考えだ。
「ビジネスの最前線である『リアルな現場』で発生している課題を解決することができる体制を持つのが強み。同じコネクティッドソリューションズ社傘下のイノベーションセンターを通じて、業界最高水準の画像認識精度や業界トップクラスの無線・アンテナ技術などを活用し、最新の課題を解決する新たなソリューションを創出できる」と、片倉社長は自信をみせる。
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他社製品との組み合わせのソリューションが多い
一方で、「旧来のモノづくりを中心にした提案は難しくなってきた」とも指摘する。「1社でなんでも揃えるのではなく、様々な会社の製品を組み合わせながら、ソリューションで利益をあげることになる」とし、協業をベースにしたソリューション提案へとシフトしていることを示す。
「パナソニック製品による売上構成比は3分の1。残りの3分の2は、他社製品と組み合わせたソリューションが占める」という。
実は、IT業界での経験が長い樋口氏が、コネクティッドソリューションズ社の社長に就任したことは、パナソニック システムソリューションズ ジャパンにとってプラス要素だ。
「これまで以上に、言葉が通じやすく、顧客との距離感や顧客に対する価値観が同じであることは、パナソニック システムソリューションズ ジャパンにとってプラスになる」と片倉社長は語る。
そして、今後のパナソニック システムソリューションズ ジャパンにとって重要なビジネスのひとつが、2020年の東京オリンピック/パラリンピック関連ビジネスだ。
オリンピックでは放送機器やスタジアムソリューションを提供
パナソニック全体では、東京オリンピック/パラリンピック関連で、約1500億円の売上高を見込んでいるが、そのうちの3分の1にあたる約500億円をパナソニック システムソリューションズ ジャパンが担うことになる。
「進捗はかなり順調であり、スタジアム関連ソリューションだけでなく、テロ対策などの安心・安全領域、キャッシュレスといったインバウンド対応の整備などのビジネスもある」とする。
2018年度には、東京オリンピック/パラリンピック関連での売上貢献は約100億円と見込んでいるが、2019年度にはさらに大きな貢献が見込めると試算しており、今後、年を追うごとにビシネス規模が増大することになる。
2020年7月24日は、東京オリンピックの開会日。逆算すると、すでに3年を切ったことになる。パナソニックは、オリンピックの映像音響カテゴリーのTOP(The Olympic Partner)スポンサーとして、1988年のカルガリー冬季オリンピック以降、オリンピック活動に貢献してきた経緯がある。
東京オリンピックでも、放送機器やスタジアムソリューションを提供。選手村などでも、パナソニックの家電製品が納入されることになりそうだ。
2020年までは、東京オリンピック/パラリンピックを追い風に、パナソニック システムソリューションズ ジャパンのBtoBソリューションは加速することになるだろう。パナソニックがBtoBシフトを進める上での象徴的な事業体となりそうだ。
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