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被害者続出「成年後見制度」、弁護士や自治体にまで騙される!

2017年07月28日 06時00分更新

文● 光浦晋三(ダイヤモンド・オンライン

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「孤立死」「無縁社会」といったキーワードが叫ばれる昨今。認知症や精神的、知的障害などによって判断能力が十分でない人のため、本人に代わって財産管理や介護施設の入居手続きなどをサポートする成年後見制度が注目を集めている。認知症高齢者の増加とともに、制度の利用者も増加しているが、それに伴いトラブルも多発している。その悪どい手法を紹介する。(フリーライター 光浦晋三)

悪徳後見人は1割にも上る!
弁護士でもまったく安心できず

クライアントの財産を飲み代や生活費に流用し、解任される悪徳後見人が後を絶たない。悪徳弁護士や司法書士は、法律の知識が豊富なだけに、騙しの手口が高度なのも特徴だ

 成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な成人に代わり、家庭裁判所が選んだ弁護士らが財産管理や契約などを担い保護、支援する制度だ。

 たとえば親が認知症になれば、その子どもが財産管理を行うのが自然だろう。しかし近年、家裁は「親族では公私があいまいになる」として、後見人に“士業”の人を選任する傾向にある。後見の質の向上を目指す一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表はこう語る。

「親族による横領が多いとされますが、『後見の知識不足』や『同居による家計や生活費の混在』が少なからずあり、是正や改善は可能と認識しています。他方、後見に関する知識があることが前提で、自ら家庭裁判所に営業し、家裁から仕事をもらっている士業後見人による横領は悪意しかなく、看過されるべきではありません」

 他人である弁護士などが認知症の高齢者を食い物にするとは、まったく許せない話だ。

「守るはずの高齢者の財産を自らの生活費や飲み代に使い込む。それも1人当たりで数千万円規模になりますからね。後見人を監督する家裁を欺くために、虚偽の報告書を提出するというから、最初からだますつもりなのは明らかです。悪徳商法以上に狡猾な弁護士や司法書士後見人は許されません。しかも、このような横領で解任されたり、自ら辞任する悪徳後見人が統計上、1割程度いるというから驚きです」

 こうした悪徳弁護士や司法書士の触手は、公の立場で高齢者の生活相談を受ける「地域包括支援センター」や「社会福祉協議会」にまで伸びているという。

 東北地区のある70代女性は、子どもがいないため、入院時の保証人や認知症になってからの後見人に不安を抱き、市内の地域包括支援センターへ相談に行ったという。地域包括支援センターの職員から市内の女性弁護士を紹介され、その弁護士と2回しか会っていないのに財産管理や死後事務など4本の契約を結ばされた。契約手数料だけで45万円。しかもその後、何年間もその女性弁護士からの連絡は一切なかったという。

「不安に感じた女性が地域包括支援センターの職員に相談したところ、『弁護士さんはそんなもんですよ』とあっさり言われたそうです。そこで女性は後見制度の専門家に相談して4つの契約書の中身を確認してもらったところ、死んだら財産を弁護士に全部持っていかれる内容であることが発覚しました」

「自治体に騙された…」
荒稼ぎする都内某区の後見センター

 都内でも同様のケースが起きている。認知症の兄のことで地域包括支援センターに相談に行った70代の妹に対し、ある区内の地域包括支援センター男性職員は「後見人をつけるしかない」「いつもそうやっている」「20件以上の実績がある」と断言。ロクな説明もないまま後見人をつける書類にサインをするよう求められ、妹は家庭裁判所に資料を提出した。

「その後、選任された司法書士に家を売られそうになり、その対策として各方面に相談したというからお気の毒です。これについて地域包括支援センターの男性職員はだんまりを決め込んでいます。介護に加え、悪質な司法書士後見というお荷物を抱えてしまった妹さんは、区を相手に訴訟も辞さない覚悟のようです」

 各地域にある「社協」こと社会福祉協議会の後見に関する課題も山積している。被後見人の財産を横領した宮城県の某社協を筆頭に、各地の社協で係争まがいの案件が多発している。

「後見は福祉の知識だけでは対応することが難しい。経済や金融、不動産の知識がないと、簡単に騙されてしまいます。本質的に後見は社会福祉協議会に馴染まないんです。実際、都内某区社協の後見センターは、区の看板と予算を背景に億の売り上げを叩き出していますが、後見の実態を見ると、お抱え不動産業者を経由して被後見人の家を売却し、お抱え老人ホームに被後見人を措置のように入所させるパターンが多いようです。中には後見人が親をどこかへ連れていってしまい、死に目に会えなかったという家族もいました。これでは権利擁護どころか権利侵害です。心ある中堅職員は自暴自棄になり転職を考えているようです」

 それでも後見の実績を増やそうと、家族に内緒で、家裁に後見を申請する自治体や社協も増えているようで、「自治体(社協)にやられた」と宮内さんに相談してくる事例は増え続けている。

 貯金や不動産があっても、認知症になり、悪質な後見人の食い物にされる可能性があるわけだ。そんな後見制度の利用を促進する「後見制度利用促進法」が議員立法で成立し、昨年5月から施行されている。そもそもこの制度は、司法書士会の後見集団であるリーガルサポートが主導して、民主党政権時代に永田町を練り歩き、数年越しで成立させた法律である。

「当初案は、『行政は後見に予算をつけろ。その予算は弁護士、司法書士、社会福祉士で独立して使う』というものでした。供給者側のお仕着せ法はよくないということで、後見制度の立法を担当した小池信行先生と代案を提唱して回り、ようやく後見される人の視点、後見人と取引する金融機関等の視点、後見人の不正防止の視点などが盛り込まれて施行されました」

 後見制度利用促進法により、後見人・被後見人を増やそうというキャンペーンが行政主導で始まったわけだが、介護保険や医療保険と違い、後見費用は、被後見人の全額自己負担であることを忘れてはいけない。高齢者の場合で数百万円、障害者であれば数千万円もの費用を後見人に支払うことになる。家族内で任意後見契約を結んだとしても、任意後見監督人費用は結局、数百万円にのぼる。

 一度、後見が始まれば、死亡するまで後見人が付き続けることになる。宮内氏は「それほどの費用をかけて後見人をつける必要があるのか、他人が土足で家計に入ってきてもよいのか、よく考えてから後見制度を利用してほしい」と語っている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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