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海運業界に2020年問題、環境規制対応に「決め手」見つからず

2017年07月26日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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世界初のLNG燃料供給船は、今年ようやく稼働を開始したばかりだ。同船は、日本郵船やENGIE SA、三菱商事などが共同で設立した合弁会社が保有する 写真提供:日本郵船

 海運業界が頭を抱えている。頭痛の種は、国際海事機関(IMO)が決めた大気汚染防止をめぐる規制強化だ。

 2020年1月から船の燃料油中の硫黄分濃度の規制値が厳しくなり、多用されてきた燃料油がそのままでは使えなくなる。すでに、北海などの指定海域ではより厳格な濃度規制が敷かれているが、当規制は一般海域(全海域)を航行する12万隻強の船が対象になるというから、インパクトは絶大だ。

 規制強化への対応手段は三つある。(1)LNG(液化天然ガス)などの代替燃料を使う、(2)従来の燃料油を使い、排気ガス洗浄装置(スクラバー)を搭載する、(3)従来よりも硫黄分の少ない燃料油(適合油)を使うの三つだ。

 どれを取ってもコスト増は必至。ただ、海運業界をほとほと困らせているのは、これら手段のどれが最善策なのか、規制強化が決定して9カ月たった今も全く見通しがつかないことにある。

どれもこれも痛しかゆし

 まず、LNGはクリーンな燃料である上、供給量の増加が見込まれており価格低下が期待できる。だが、エンジンや配管なども替えねばならず、既存船での対応は現実的でない。LNGの供給インフラが整っていないのも悩ましい。

 第二のスクラバーを搭載する方法は手っ取り早いが、スクラバーは小型船に載せることが難しく、供給量も足りない。IMOも「20年にスクラバーを搭載できるのは3800隻にとどまると試算している」(日本海事協会技術研究所の華山伸一氏)くらいだ。

 スクラバーは数億円もする代物だ。この高額投資を回収できるかどうかは燃料油の価格に左右されるも、燃料油の価格動向がまた読めない。仮に適合油の使用が多くを占めるようになれば、従来の燃料油が値上がりしかねないからだ。

 かといって、第三の適合油を使用する方法でも万事解決とはならない。本来、適合油は従来の燃料油より高価格である上、「適合油が十分に調達できるかどうか分からない」(海運関係者)という安定供給上の不安があるのだ。

 ある海運関係者は、「日本の石油各社には設備投資をしてでも供給量を確保してもらわないと困る」と漏らす。しかし近年、むしろ設備投資を縮小させてきた石油業界が積極的に動くとは考えにくい。

 造船各社にとっては、規制強化が追い風となる側面もある。これを機に高齢船のスクラップが進めば、環境技術を訴求したLNG燃料船やエコシップの新規受注が期待できるからだ。スクラバーを製品化する三菱重工業のように、関連商品を製造していれば、それもビジネスチャンスになる。

 もっとも、スクラバーの搭載作業に関しては、「適正費用を回収できるほど甘くない」(造船関係者)との声が早くも上がっている。環境規制への対応が、各社の明暗を分けそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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