このページの本文へ

ヒアリに怯える日本列島、高まる経済損失への不安

2017年07月24日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
ヒアリは体長約2.5~6mmと小さいが、刺されるとやけどのような激しい痛みに襲われる
写真提供:兵庫県立人と自然の博物館

 強い毒を持つ特定外来生物のアリ「ヒアリ」が、5月26日に兵庫県尼崎市の貨物船コンテナから国内で初めて見つかって以降、全国各地で確認され、大騒動になっている。

 7月18日までに発見されたのは、確認順に兵庫県、愛知県、大阪府、東京都、神奈川県、茨城県の6都府県8カ所。いずれも港湾周辺かコンテナの移動先で発見され、海外から荷物に紛れて侵入したものとみられている。

 ヒアリは南米原産だが、物流がグローバル化する中で拡散し、米国、中国、豪州、台湾など世界各地に広がっている。尾部の毒針で刺されると人によってはアレルギー反応を引き起こし、死亡する危険もある。

 株式市場で家庭用殺虫剤を扱うアース製薬やフマキラーの銘柄が急騰したように、目先の対応策に注目が集まる。だが、長期的な視点では「健康被害も深刻だが経済への影響も甚大」と、アリに詳しい兵庫県立人と自然の博物館の橋本佳明主任研究員(同県立大学准教授)は指摘する。

米国は6200億円損失

 橋本氏は米国と豪州での経済損失データを示して危機を訴える。

 米国においてヒアリは電気設備に入り込みやすいため、工場や電力プラント、空港などの電気機器に損害を与えている。「コードをかじってショートさせる。油が好物のため油分に集まってくるという説がある」と琉球大学の辻和希教授は言う。

 トータルの経済損失は、駆除や警戒、健康・風評被害などで、(1)住宅、(2)電子通信、(3)農業、(4)ゴルフコース、(5)学校──の順に大きく、全米で年間約6200億円と推計されている。

 いったんは駆除の効果があったと思われた豪州でも根絶はできず、年間約1400億円の被害が見積もられている。

 日本ではまだ定着しているとは考えにくい状況だが、港湾業者や倉庫業者などが対応に追われている。海運大手の日本郵船では主要ターミナルに市販の殺虫剤を配置し、警戒。愛知県春日井市の子会社倉庫でヒアリが見つかったパナソニックは、コンテナ詰めする際などに目視検査を徹底している。

 辻教授によると、当初は家電など特定の荷物を好んで紛れ込んでいるともみられていたが、古いベニヤ板など「コンテナ自体」の状況を好んで潜伏しているという見方が強まっている。

 豪州では6年間約150億円の基金で対策が講じられたが、それでも資金が足りないという。日本でも対策に必要な資金を早急かつ十分に調達ができるかが課題だ。

 現状の対策を「縦割り行政の弊害や中小企業の腰の重さが見え隠れする」(ヒアリ問題に詳しい専門家)と不安視する声もある。国はもちろん、企業にも“アリ一匹逃さない”徹底的な防除態勢が求められている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

アスキー・ビジネスセレクション

ピックアップ