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日立の欧州鉄道事業が窮地、イタリア子会社株主との対立で

2017年07月19日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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日立製作所の鉄道事業の連結子会社、イタリアの鉄道信号大手アンサルドSTSでは、少数株主との対立が続いている Photo:Bloomberg/gettyimages

「アンサルドSTSの買収は失敗だった」。同社はイタリアの鉄道信号大手で、日立製作所の鉄道事業の拡大を支える連結子会社だ。国境を越えた標準信号システムを持つSTSは世界市場の拡大に欠かせない。

 冒頭の主張を強めているのが、STS株の31%を保有する投資ファンドのエリオット・マネジメントだ。少数株主の代表として、日立を揺さぶり続けている。

 日立は2015年11月、イタリアの防衛・航空大手フィンメカニカ(17年1月にレオナルドに社名変更)から、非上場の鉄道車両メーカー、アンサルドブレダの株式100%を取得すると同時に、上場企業であるSTS株の40%を1株9.5ユーロで取得した。

 しかし、当初計画していたSTSの完全子会社化は、TOB(株式公開買い付け)価格が、フィンメカニカと合意した9.5ユーロだったことにエリオットが反発。追加の株式取得で10.5ユーロに引き上げたが、取得比率は50.1%にとどまり、現在に至っている。

 問題は、不採算だったブレダと、高収益のSTSとの「抱き合わせ買収」によって、STSの取得価格が不当に引き下げられた疑いがあることだ。イタリアの証券取引委員会は16年2月、日立とフィンメカニカの「共謀行為」を認定し、TOB価格の引き上げを命じる行政処分を日立に下した。

 日立はこれを不服として処分の取り消しを求めているが、すでにインターネット上には「日立自身が1株12ユーロの価値を認識しながら、ブレダとの同時買収で価格引き下げを狙っていた証拠」とされる内部文書の一部が公開されている。こうした情報が広がったことで、欧州市場では「共謀で行政処分を受けた日立」への風当たりが強まっている。

鉄道再編に出遅れも

「STSの価値は1株13ユーロ以上」と主張するエリオットとの面会を日立は拒絶し続けているが、エリオットのファンドマネジャー、ジョルジオ・フルラーニ氏は「日立は少数株主の権利が強い欧州市場で失敗した。このままでは次のM&A(合併・買収)は難しいだろう」と指摘する。

 世界の鉄道メーカーは、売り上げ規模4兆円の中国中車に続き、「ビッグスリー」と呼ばれるドイツのシーメンス、カナダのボンバルディア、フランスのアルストムが、それぞれ8500億~9500億円の規模。5000億円弱の日立の鉄道事業は、これらを追い掛ける立場だが、中国中車は、チェコの鉄道メーカーとの買収交渉が明らかになり、シーメンスとボンバルディアは鉄道事業の統合を協議中だ。

 世界規模で合従連衡の動きが加速する中、日立は最初の海外M&Aでつまずいた。少数株主の出方を見誤り、海外市場のルール認識に甘さがあったことは否めない。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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