このページの本文へ

「エネルギー100%自給自足住宅」で勝負、積水化学が環境シフト

2017年07月18日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷
積水化学が胸を張って世に送り出した家庭内で使用するエネルギーを100%自給自足できる住宅の第2弾(屋根が寄棟造のタイプ)。よく見ると、寄棟造といっても、頂点は平らな形状にして、太陽光発電用のパネルをびっしりと敷き詰めている。こうすることで、一般的な頂点が尖った寄棟造の屋根よりも大きな発電量を稼ぎ出す 写真提供:積水化学

 業界内から、「自己満足ではないか?」との声も聞こえてくるが、今春より再開した積水化学工業の環境経営シフトが加速を続けている。

 7月6日、積水化学は、家庭内で使用するエネルギーを100%自給自足できる住宅の第2弾(屋根が寄棟造のタイプ)を発表した。

 これは、半年前の1月に出した第1弾(屋根が平面のタイプ)に続くもので、かねて弱かった新築住宅の市場で約60%を占める寄棟造の開拓を狙った派生製品だ。

 100%の自給自足とは、積水化学が得意としてきた大容量の太陽光発電システム、HEMS(省エネの制御機器)、自前の蓄電池、電気自動車の充電設備などを搭載した住宅で、要は“全部のせ”である。

 とはいえ、これらの住宅設備は、今日ではどこの住宅メーカーでも扱っているもので、新鮮味はない。では、なぜ積水化学だけが、臆面もなく、「100%の自給自足住宅」といいきれるのだろうか――。

 国内の住宅メーカーでは相対的に早く、20年前から太陽光発電を搭載した住宅を販売してきた同社は、発電設備を増強するノウハウや人が住む状態での実測データを豊富にため込んできた。この点が、今や優位性になっているからだ。

 例えば、2013年に最初のスマートハウス(積水化学の呼称ではスマートパワーステーション)を発表した際には、エネルギーの自給自足率が60%、年間の自給自足日数は30日という水準だった。これが、翌14年には自給自足率が75%、自給自足日数が180日になった。その後、16年には、自給自足率が85%、自給自足日数が210日に達した。その延長で、今年1月には自給自足率100 %、自給自足日数が365日を実現したのである。

 元々、積水化学が得意としてきたユニット工法(工場内である程度まで仕上げて現場で組み立てる)の住宅は屋根が平面である。その利点を最大限に生かして発電効率を上げる体制を構築したところが、容易に他社が追い付けない状況を生み出しているのだ。

 同社の住宅カンパニーで、営業を統括する黒木和清常務執行役員は「電力会社からどれだけ電気を買わなくて済むか、という観点で開発を進めてきた」と強調する。

老朽化した設備を一気に更新

 もっとも、積水化学の環境経営シフトは、住宅部門に限った話ではない。むしろ際立つのは、その全社的な徹底ぶりである。

 例えば、14年7月にぶち上げた「SEKISUI環境サステナブルインデックス」がある。これは、事業活動を通じて、どれだけ環境のために貢献したかを図る統合指標のことで、満点は100点となる。

 事業で利用した自然資本(原材料、工場稼働時の環境負荷など)に対して、自然環境の保全や環境貢献製品の拡充などを通してどれだけ戻すことができたかを見る。

 過去の実績は、64%(14年度)、76%(15年度)、77%(16年度)だった。この7月3日に発表した環境中期計画では、19年度に90%、30年度には100%に達するという野心的な目標を掲げた。数値こそ挙げていないが、50年に向けてはさらに環境負荷を減らす長期的な方針まで打ち出している。

 積水化学で経営戦略を担当する平居義幸取締役は、「今後も指標の実効性を上げるためのブラッシュアップは続ける」と堂々たる押し出しで、迷いを感じさせない。

 世の中に、環境経営を標榜する企業は数あるが、積水化学の取り組みは図抜けている。今回、発表した環境中期計画では、これまでなかなか手が付けられないでいた老朽化した古い設備の更新を一気に進めることも明らかにした。

「まだ、使えるから」と何十年も動かしてきた設備を一斉にリプレイスすることは、もちろんコストの問題もあるが、オペレーション上の問題もある。設備の順次入れ替えや、新しい設備への習熟に時間を要することで、一時的に生産性が落ちる懸念もあるからだ。

 それでも今回、新たに環境貢献投資枠を設定して120億円を使うことを決断した。ようやく、積年の宿題に着手し、対象となる拠点も拡大していく構えを取る。積水化学における環境経営の勢いは、当面、弱まりそうにない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

カテゴリートップへ

最新記事

ASCII.jp特設サイト

最新記事

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

アスキー・ビジネスセレクション

ピックアップ