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ドコモ社長に聞く「音声AIでグーグルやアマゾンと勝負する」 吉澤和弘(NTTドコモ社長)特別インタビュー

2017年07月18日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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話し掛けると適切に応答する音声認識AI(人工知能)の開発競争が激化している。米グーグルやアマゾンなどがAIスピーカーで主導権を激しく争う中、NTTドコモは6月、AIサービスの基本システムを開発したと発表した。吉澤和弘社長にAI時代の戦略を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)

5月に新料金プラン発表も「横並びと言われぬよう、次の手を矢継ぎ早に打つ」と吉澤社長は強調 Photo by Toshiaki Usami

──6月に音声認識AI(人工知能)の戦略を発表しました。ビジネスモデルについてはどう考えているのですか。

 音声認識AIでは、AIスピーカーなどの端末ばかりに注目が集まっています。ですが、われわれは端末ビジネスだけを考えているわけではありません。

 今後、多くの端末同士がつながることは重要ですが、そこで何らかのサービスを実現するためには、ユーザーとの取引を生む、サービスの提供者が欠かせません。そうしたパートナーへと、しっかりつなげることが必要なのです。

 われわれはAPI(機能などを使うための仕様)をオープンにするという言い方をしています。ドコモとして、サービスのプラットホームを作っていて、そのAPIを公開し、「どうぞ皆さん使ってください」という戦略です。

 端末メーカーが、流通業やサービス業など全ての企業とタイアップしていくことは大変ですよね。ですから、まずわれわれがコネクションをつくり、サービス提供者への窓口をオープンにするのです。

 先日の会見では、高島屋や「食べログ」などを運営するカカクコムの参加を発表しました。こうしたサービス提供者をもっと増やしていきます。そして、デバイスで参入したいメーカーには、われわれのAPIは便利なのでぜひ使ってくださいという考え方です。

──APIの公開だけでは収益は得られません。音声などのデータ通信料を増やすことが目的なのですか。それともサービスの使用料で稼いでいくのですか。

 どちらかというと、ユーザーがサービスを使ったときの(収益をパートナーと分配する)レベニューシェアを取りたいです。

 ドコモのスマートフォン向けサービス「dマーケット」では、ドコモがサービスの提供者で、ドコモがユーザーから料金を受け取り、コンテンツ提供者に売り上げの何割かを分配する仕組みです。

 ただ、AIでドコモ自身がどれだけサービスを提供できるかは現段階ではまだ分かりません。ユーザーがパートナーに対して支払った料金の一部を、ドコモのAPIを使った分として分配してもらう形式が増えていくでしょう。

──パートナーの提供するサービスが増えると、その分、d○○といったアプリが増えて、不便になるのではないですか。

 われわれは室内のAIスピーカーだけを考えているわけではありません。スマホに呼び掛けるだけでユーザーがやってほしいことを全て代行してくれる、AIエージェントを考えています。そのときメーンとなるエージェントの窓口は一つで、そこからパートナーのサービスにつなぎます。

 パートナーのサービスも類似のものがどんどん増えるとは思いません。とはいえ、地域ごとの違いはあるでしょう。

 例えばタクシーでは、東京では東京の会社と、九州では地元の会社と組む必要があり、その提携はドコモがやります。そして、ドコモのAPIを使えば、九州でいちいち地元の会社を調べなくても、位置情報などを基に自動的に地元のタクシーを呼んでくれるエージェントを目指しているのです。

──AIのプラットホームは米グーグルやアマゾン、LINEなど多くの競合が狙っています。

 私が先に述べたようなサービスを提供したければ、サービス提供者と提携しなければなりません。そこは競争になるでしょう。AIのエンジンを用意するだけで、全てのサービスが提供できるわけではないですから。

 企業との提携なしでも、データを収集し、ユーザーの好みを学習して位置情報などからお薦めのレストランを提案することはできるかもしれません。ただそこで、取引を発生させようと思うのであれば、グーグルやアマゾンであっても、サービス提供者と提携しなければ無理なのです。

──スマホ上で、ドコモのエージェントはそもそも使ってもらえるのでしょうか。

 そこは戦いになるでしょうね。複数のものが出てくるでしょう。ですが、多過ぎても不便なので、いずれ収束すると考えています。

 ドコモではdマーケットをはじめ、外食や交通など、さまざまなコンテンツを提供していますが、全て統合されているわけではありません。まずそれをしっかりと統合した基盤を作り、APIを使ってもらうことを目指しています。

──そうした基盤が形としてまだ発表されていません。

 ですから現在、それを構築しています。ユーザーとの自然な対話、最適なサービスを提供する先読み、IoT(モノのインターネット)機器との接続という、三つの異なる機能のエンジンが、ドコモのAIの柱になります。

 三つのエンジンのAPIを今回公開し、2017年度末にメーンエージェントのサービス開始を目指して開発を進めています。使い勝手の良いAIエンジンがあり、いかに応えられるサービスの範囲が広いかが勝負どころでしょう。

よしざわ・かずひろ/1955年6月生まれ。79年岩手大学工学部卒業、日本電信電話公社入社。2011年NTTドコモ取締役、12年常務・経営企画部長、14年副社長。16年6月より現職。 Photo by Toshiaki Usami

──現時点で、使い勝手の良さについてはどうみていますか。

 機能の良さについては自信があります。特にドコモの強みの一つは、日本語の認識能力の高さになるでしょう。

 ですが、ヒューマンインターフェースやユーザー体験についてはもっともっとこだわらないといけないと考えています。

──16年度決算で、そうしたサービスなどのスマートライフ事業の営業収益(売上高)が微減です。

 携帯電話向け放送サービス「NOTTV」を16年6月にやめた影響が100億円単位で出ています。また、子会社のテレビ通販会社オークローンマーケティングの収益も落ちました。15年度は筋トレマシーン「ワンダーコア」が売れていたのですが、16年度の売れ行きが細りました。

 とはいえ、NOTTVが不採算だったので、営業利益で見れば増益です。法人ソリューションも含めたスマートライフ領域の17年度の営業利益は1300億円(16年度は1119億円)の見込みで、サービスを増やし、20年度の営業利益2000億円が目標です。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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