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業務を変えるkintoneユーザー事例

kintoneならではの価値は「あらゆるところで一体感をもたらす力」

78点の業務システムを目指した日阪製作所とkintoneの6年

2017年07月18日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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6月16日、大阪で3回目の開催となるサイボウズのユーザーイベント「kintone hive osaka」が開催された。冒頭、産業機械の製造を手がける日阪製作所の佐々江宏明氏は、「kintoneが生み出す一体感」というテーマで6年間で培ってきたkintone導入・運用のノウハウを語った。

6年で得たキーポイントは「はじめは小さく」

 今年で創業75年となる日阪製作所は、熱交換器事業、プロセスエンジニアリング事業、バルブ事業などを手がける大阪の産業機械メーカー。同社の熱交換器はビル・温泉・プールなどの空調設備や船舶、石油精製、床暖房などさまざまなところで用いられている。また、プロセスエンジニアリング事業では食品や液体の殺菌装置、医療用減菌装置、染色の仕上げ機などを手がけているほか、各種バルブの製造も行なっている。

kintone hive Osakaでトップバッターを務めた日阪製作所の佐々江宏明氏

 日阪製作所がkintoneに出会ったのは、サービス開始当初の2011年にまでさかのぼる。導入から6年経った現在、kintoneは世界7カ国、16拠点で用いられており、社内の最重要システムに育った。昨年に引き続き、2回目の登壇となる日阪製作所の佐々江宏明氏は、「もはやkintoneがなければ仕事ができない。私たちの大切なパートナーです」と語る。しかし、最初からすべてが順調だったわけではない。佐々江氏は6年間で試行錯誤したノウハウを聴衆に披露する。

 最初に挙げられたキーポイントは、「はじめは小さく」だ。もともと同社がkintoneを導入したのは、2つの事業部が統合されたことによる「Excelファイルの大氾濫」がきっかけ。製作者のわからない大量のファイルに情報が埋もれ、責任もわからないまま業務が混乱していたのが当時の状況だった。

 そのため、最初は5人程度のチームでExcelファイルを精査し、アプリを作り、整理整頓を進めていった。このようにスモールスタートで始まったkintone導入が、そのうち他のグループに広がっていったという。

システム開発において、なぜあえて78点を目指すのか?

 2つめのキーポイントは「現場が主役」だ。最初に日阪製作所でアプリの作成の担ったのはIT部門ではなく、システム開発とはほど遠い現場部門の女性2人。子育て中だった2人だったが、業務課題を解決したいという強い思いから、kintoneアプリの作成を進めた。作ったアプリが業務改善につながると、現場からはまた新たな要望が持ち込まれ、それを迅速に解決するという好循環が生まれた。「彼女たちの上司は『課題があっても翌日には解決している』と日々効果を実感していました」と佐々江氏は振り返る。

 そしてこうした動きを一過性にしないため、日阪製作所ではkintone導入・運用をプロジェクト化し、会社として体制を整えた。営業、サービス、生産管理、品質、製作などに現場部門は、それぞれ情報交換を進めながら、kintoneアプリの作成とメンテナンスを進め、マネージャーは業務の改革を統括しながら、アドバイスを行なう。そして、佐々江氏の所属するIT部門は、全体最適という視点に立ってシステムコンセプトを維持し、技術サポートを行なうという役割を担うことにした。「立場が異なる三者が一体となることで、kintoneプロジェクトは円滑に動き、さまざまな成果を挙げることができた」と佐々江氏は語る。

現場、マネージャ、IT部門の三位一体のkintone導入

 3つめのキーポイントは「ゴールは78点を目指す」だ。なぜ100点を目指さず、78点なのか? 佐々江氏は、「システム開発という形のないもので100点を目指しても、課題が積み上がり、いつまで経ってもスタートを切れないから」と指摘する。であれば、最初から78点を目指し、改善を目指したほうがスピード感のあるシステム構築が可能になる。「78点を目指すという意思統一を共有することで、課題と方向性が明確になり、風通しのよい組織に変わっていくことができます」(佐々江氏)。その上で残りの22点を積み上げるチャレンジ精神が生まれ、品質面も担保される。「78点のシステム作り。これは私たちの成功の合い言葉です」と佐々江氏は語る。

あえて満点を目指さない日阪製作所のkintone導入

営業マン同士や他社との情報共有、顧客管理、基幹システムとの連携まで

 導入当初、15名のみだった日阪製作所でのkintone利用者は、この5年間で30倍となる約450名にまで拡大。従業員の約8割が使っているという。冒頭に話したとおり、すべてが順風満帆だったわけではないが、成功を積み上げ、次に継続していくことで、多くの社員をkintoneに巻き込むことができた。佐々江氏は、現在社内で使われている451個にのぼるアプリの中で、代表的な活用例を披露した。

 たとえば、アジア各国の営業部が利用しているスペースでは、日々の営業報告に加え、さまざまな意見交換が行なわれ、異なる地域のメンバーが一体感を持つことが可能になった。「訪問した国をビンゴで埋めていくというアプリで、目標や進捗が見える工夫を行なっています」(佐々江氏)。

スペースを使うことで、気軽に情報交換

 また、製造部門では物流の強化にkintoneが活用されている。日阪製作所では外部の倉庫会社に在庫を委託していたが、これはメールや電話でやりとりしていたため、情報に行き違いが発生していた。お互いの在庫表に差異が生まれたり、手配ミスや配送ミスにつながっていた。そのため、kintoneのゲストスペースで、外部の業者と情報を共有しながら、モノのやりとりを進めることにしたという。出荷指示もワンクリックで確実に行なえ、在庫品の写真を添付できるようなったことで、指示したモノが確実に届くようになった。「リアルタイムに正確な情報を共有することで、私たちのもの作りの生産性は大幅に向上しました」と佐々江氏は語る。

ゲストスペースを有効活用し、外部の業者ともスムースにやりとり

 さらに営業・サービス部門はkintoneをCRM的に利用し、サービスの品質を向上させている。これまで営業経由で入っていたメンテナンス依頼は紙の依頼書でサービス部門に伝達されていたため、顧客対応が遅延し、進捗管理も十分ではなかった。しかし、紙の依頼書をすべてkintoneに載せたことで、タイムラグがなくなり、顧客対応がスピーディになった。また、すべての部門がkintoneで進捗を確認できるため、誰でも同じ品質で顧客対応できるようになったという。現在では営業用のデータベースとしても活用されており、顧客に対しての営業提案に活かされているとのことだ。

 そして、最後に紹介されたのは、基幹システムと連携した進捗管理のダッシュボードの事例だ。これまで同社では目標はExcelへ、実績は基幹システムへと別々に入力していたため、目標が達成されたかどうかは手作業で比較する必要があり、資料の作成にも手間がかかっていた。そこで目標はすべてkintoneに登録し、基幹システムとの連携はアプレッソの「DataSpider」を活用することで、リアルタイムに進捗を確認することができるようになった。「日阪独自のウェザーランクを用いて、目標を達成すると雨から晴れへ、アイコンが変わっていきます。今までは資料を作るのが仕事でしたが、情報を見て判断していくという形で仕事の質が変化していきました」と佐々江氏は語る。

基幹システムともデータ連携し、進捗管理もダッシュボードでリアルタイムに

kintoneにあって、ほかの製品にないものとは?

 さまざまな社内事例を紹介した佐々江氏は、kintoneの導入をきっかけに日阪製作所の仕事に変化が起こってきたと指摘する。「日阪製作所のスローガンは『変わろう! 変えよう!』ですが、この実践にkintoneは欠かせないものになっています」と総括する。

 kintoneは仕事のやり方だけではなく、システムに関わる企業や組織、そして人の関係にも変化をもたらしているという。メーカー、ITベンダー、ユーザーの間にあった「微妙な距離感」が縮まり、信頼感や安心感につながったという感覚だ。これだけではなく、kintoneは経営層、事業部門、IT部門という組織の関係、顧客、取引先など他社の関係、そしてkintoneを使っているユーザー同士の関係においても、距離を縮める効果をもたらしているという。さまざまな関係者を巻き込んでしまうコミュニケーションツールと言えるのかもしれない。

kintoneが近づけるさまざまな関係

 佐々江氏は、「kintoneにあって、ほかの製品にないもの。それはあらゆるところで一体感を生み出す。そんな力だと思います。私たちもこの力を使いながら、よりよいチーム、よりよい組織、よりよい会社に変わっていきたいと思います」とまとめ、セッションを締めた。

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