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「日本をFileMaker Cloudの最大市場に」日本法人エプリング社長が期待を語る

AWSとの強い連携で使いやすく、「FileMaker Cloud」国内提供開始

2017年07月13日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 雪岡直樹

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 アップル傘下のファイルメーカーが7月11日、ビジネスユーザーが開発したFileMakerアプリをAmazon Web Service(AWS)クラウド上で簡単に共有(ホスト)できる「FileMaker Cloud」の国内提供開始を発表した。

 同製品の提供開始に当たっては、AWSとの強いリレーションシップや海外ユーザーからのフィードバックを生かし、SMB(中小企業)ユーザーでも簡単に利用できるよう改善を図ってきたという。同社 日本法人社長と製品担当幹部に、FileMaker Cloudの機能特徴や狙い、日本市場への期待などを聞いた。

(左から)ファイルメーカー日本法人 社長 兼 米ファイルメーカー チーフ・アドミニストレイティブ・オフィサーのビル・エプリング(Bill Epling)氏、米ファイルメーカー シニア・プロダクト・マネージャのアナンド・ベッゲラ(Anand Vaghela)氏

AWS環境のセットアップを自動化、コンソールも統合し「使いやすく」

 FileMakerは、ビジネスユーザーでもノンプログラミングで容易に独自アプリ(カスタムApp)を開発できるデータベースソフトだ。MacやWindows PCでアプリを開発/実行する「FileMaker Pro/Pro Advanced」のほか、iPad/iPhoneでアプリを実行するための「FileMaker Go」、Webブラウザでアプリを利用可能にする「FileMaker WebDirect」、オンプレミス環境でアプリを共有する「FileMaker Server」、そして今回のFileMaker Cloudがラインアップされている。

 FileMaker Cloudは、AWSのパブリッククラウド環境でFileMakerアプリを共有するためのソフトである。AWS Marketplaceから、同時接続数ライセンス(5/10/25/100ユーザー)付きのAMIまたはライセンス持ち込み(BYOL)用のAMIを、1時間単位または1年間単位で購入できる。すでに米国市場では昨年9月から、欧州/中東(EMEA)市場では今年3月から提供を開始しており、今回、日本市場でも提供開始となった(AWS東京リージョンで利用可能)。

AWS MarketplaceのFileMaker Cloud販売ページ。同時接続数ライセンス(5/10/25/100ユーザー)とライセンス持ち込み(BYOL)という2形態のAMIがあり、1時間単位または1年単位で購入できる

 FileMaker Serverと同様に、FileMaker Cloudで共有されたアプリは、PCやMac、iPad、iPhone、Webブラウザの各クライアントでアクセスし、利用できる。ただし、オンプレミス環境の構築とは異なり、サーバーマシンの調達やネットワーク設定、OSやFileMaker Serverのインストールなどの手間がかからない。

FileMaker Cloudで共有されたアプリはMacやPC、iPad、iPhone、Webブラウザのクライアントから利用できる(画面は公式サイト)

 加えてFileMaker Cloudでは、AWSのセットアップ自動化ツールである「AWS CloudFormation」を利用し、AWS環境のセットアップが大幅に自動化されている。FileMaker Cloud環境を構築するためには「Amazon EC2」「Amazon EBS」「Amazon IAM」などのプロビジョニングや設定の作業が必要だが、それがほぼ自動化されているため、これまでAWSを利用したことがないユーザーでも容易に利用できる。

 米ファイルメーカー シニア・プロダクト・マネージャのアナンド・ベッゲラ氏は、FileMaker Cloudでは「SMBのユーザー向けに、セットアップで苦労しそうな部分をあらかじめシンプルにした」と説明する。セットアップ作業はインスタンスタイプの選択など「4ステップ」で完了し、開始から15~20分程度でFileMaker Cloud環境が立ち上がるという。

ベッゲラ氏

 FileMaker Cloudの管理コンソールは、接続しているクライアント数やホストしているアプリ(データベース)数だけでなく、インスタンスの稼働状態(CPUやメモリの利用率など)などのデータもAWS側から取得して統合表示する。そのため、インスタンスの停止など特別な作業を除き、ふだんの管理作業においてはAWS側の管理コンソールを操作する必要はない。

 またこの管理コンソールは、定期スナップショット/バックアップ機能や、インスタンスタイプ/ストレージサイズの変更機能も備えている。インスタンスタイプを変更する場合も、ワンクリックで新しいインスタンス環境が自動的にセットアップされた後、ユーザーのアプリを保存しているストレージが自動でアタッチされるため、複雑な操作は一切必要ない。

FileMaker Cloudの管理コンソール(ダッシュボード)。インスタンスタイプやCPU/メモリ使用量なども統合表示している

管理コンソールからインスタンスタイプやストレージサイズの変更、定期スナップショット/バックアップの操作と設定も可能だ

 なお、他のFileMaker製品と同様に、FileMaker Cloudでも無償評価版(15日間)が提供されている。加えて、通信の暗号化に必要なSSL/TLSサーバー証明書も、評価用の証明書(90日間)が無償提供される。AWSが提供するクラウド無償利用枠と組み合わせ、購入前の評価検証ができる仕組みだ。

満を持しての日本市場投入、「世界最大の市場に」と意気込む

 FileMaker Cloudの開発に当たっては「AWSとの強いリレーション」も背景にあり、上述した自動化の仕組みからAWS Marketplace上の説明書きに至るまで、さまざまな側面でAWSからの改善協力を得られたとベッゲラ氏は語る。SMBへのさらなる浸透を図りたいAWSにとっても、SMB市場に強みを持つFileMakerは「良いショーケース」(ベッゲラ氏)となる。

 すでに提供を開始している米国市場やEMEA市場での販売動向については、新規顧客と既存(ライセンス持ち込み)顧客については「おおよそ半々」だという。「現在、インスタンス数ベースで見ると毎月およそ20%ずつ、またAWS Marketplaceで直接購入する顧客数は毎月31%ずつ伸びている」(ベッゲラ氏)。

 ベッゲラ氏は、オンプレミスのFileMaker Serverからクラウド移行したベルギーの顧客事例を紹介した。この顧客では自社ネットワーク上にサーバーを設置し、外部からのアクセスも可能にしていたが、インフラのしっかりしたAWSへの移行によって「WANパフォーマンスが改善した」「サーバーダウンの懸念もなくなった」という。

 日本市場での提供開始が米国市場やEMEA市場よりも遅いタイミングになったことについて、日本法人社長のビル・エプリング氏は「日本市場を軽視しているわけではなく、むしろ重視した結果」だと強調した。ちなみに、日本市場におけるFileMaker製品の売上は、グローバル全体の20~25%を占めるという。

エプリング氏

 「われわれにとってクラウドはまったく新しい市場。そこで(グローバルで)段階的に市場展開していくことにした。昨年9月の米国、今年3月のEMEAでの提供開始を経て、ユーザーから得た多くのフィードバックを製品改善に生かしたうえで、品質要求の厳しい日本市場での提供開始に至った。他地域での販売が好調なことから、日本市場での提供開始は、実際には予定よりも早まっている」(エプリング氏)

 さらにエプリング氏は、従来のFileMaker製品ではSMB顧客の割合が最大であり、「FileMaker CloudにおいてもSMBが最大の顧客になるだろう」と語った。加えて、これまで社内サーバーを立てることができなかった大企業の部門顧客などにも、クラウド利用のすそ野が広がることを期待しているという。

 「FileMakerは、ナレッジワーカー自身でアプリを開発し、アイディアをクイックに形にすることができる製品。クラウド型での提供は、日本市場でも歓迎されるだろうと考えている。ぜひとも、日本をFileMaker Cloudの最大市場にしていきたい」(エプリング氏)

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