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大東建託現役社員が「経営陣の総入れ替えを」と悲痛な叫び

2017年07月10日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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Photo by Kosuke Oneda

賃貸住宅最大手である大東建託の営業力に“ほころび”が見え始めている――。『週刊ダイヤモンド』6月24日号「不動産投資の甘い罠」でそう指摘したところ、同社のある現役社員は、「全くその通りだ。大東建託は生まれ変わらなければならない」と、悲痛な叫びを週刊ダイヤモンド編集部に訴え、その苦しい胸中を率直に告白してくれた。

需要減と営業力低下で
リピーター頼りの受注に

「おたくの事が週刊ダイヤモンドに載っているね。どうなっているの?」――。大東建託の地方支店で数年間務めている現役社員の田中隆二(仮名)さんの元に、懇意にしている複数の地主から連絡が入った。「まあ当社が書かれるのはいつものことですから」と決まり文句で返しつつも、記事に目を通した田中さんは「今は経営陣も営業マンも創業者が築いた土俵に乗っかっているだけ。『大東建託』の看板頼りで、もはやチャレンジ精神がまるでないのは確かだ」と胸の内で不満を漏らした。

 大東は2016年度の売上高1兆4971億円、管理戸数101万5463戸を誇る、賃貸住宅業界のナンバーワン企業だ。地元不動産会社などを通じて地主の情報を調べ上げ、全国の支店の建築営業課に所属する営業マンが飛び込みで地主を訪問、相続税対策や遊休地の活用などで木造アパート建築を提案するというビジネスモデルで成長を遂げてきた。

 先祖代々の土地を持つ地主は、相続時に土地を手放したくないのに加え、高い相続税も払いたくないと考えがちだ。そこで大東の提案するアパートを建築すれば節税となる上、「35年一括借り上げ」のサブリースによって家賃収入が保証される。そのため、特に人口が少なく、入居者募集に苦戦する地方や都市部郊外の地主にもてはやされてきた。

 ところがリーマンショック以降、そんな顧客層に異変が生じている。新規顧客とリピーター顧客の比率が逆転し、今では受注の65%以上がリピーター頼りとなっているのだ。大東が主戦場とする人口減少の激しい地方でアパート建築の新規需要が落ち込んでいることが大きな理由だ。そのため、かつて同社が建てた、老朽化したアパートの建て替えの需要に依存している様子が鮮明に浮かび上がっている。

 それだけではない。営業マンの営業力が落ち込み、ビジネスモデルの屋台骨が揺らいでいるのだ。新規工事の受注高は、過去最高だった15年度の6930億円から16年度は6552億円に減少した。そこで大東は、17年度に受注高を6830億円までに回復させるため、17年3月期の決算説明資料である営業方針を打ち出したが、それがさらなる波紋を呼んでいる。

飛び込み訪問一本槍が
会社のイメージダウンに

 その営業方針とは「午前は新規顧客開拓訪問の時間を徹底確保させ、午後は見込み候補顧客見極め訪問実施、追客の徹底をさせる」というものだ。「こんなのは当たり前すぎて、わざわざ方針として打ち出すようなことではない。創業者が辞めて同社の理念が全く見えなくなった」と、大手ハウスメーカー幹部は苦笑する。

 田中さんもまた、この営業方針に頭を抱える。

「新規営業がとれないのは営業スタンスが時代遅れだから。昔ながらの飛び込み訪問の一本槍が、当社のイメージダウンにつながっているのは疑いようがありません。同じ地主さんのところに朝・昼・晩と3人の違う営業マンが3回も行くのだから、嫌われるのは当たり前ですよね」

 実際に、他の会社でアパートを建てたという、福岡県在住の地主の女性は「大東建託の営業マンは毎回違う人がしつこく来るし、仕事がきつくてすぐに辞めてしまうという話も耳にしていましたから、信用できないと感じて断りました」と証言する。

 同社の給料は月28.8万円プラス歩合給と賞与。複数の関係者によれば、月に1棟売れれば月収は約200万円となる。それで年収数千万円を稼ぐスーパー営業マンもいるが、それはほんの一握り。1棟も売れず、わずか3ヵ月で辞めてしまう営業マンも後を絶たないという。厳しいノルマを課される上に、携帯やパソコンのGPSで各支店の責任者に居場所を随時監視されており、精神的な負担も大きい。

「最近の営業マンは何かの拍子で間違えて入社したという人が多い。それも定着せずにすぐ辞めていく原因の1つです。ボールペン1本売ってこいと言われて、実際に売りきれる営業マンは10人中1人いればいい方です。でも今の経営陣は『数打ちゃ当たる』理論から抜けられていません」

 聞けば田中さんは、飛び込み訪問よりも、1人の地主と家族ぐるみの付き合いになるまでとことん向き合い、信頼を得て別の地主を紹介してもらうといったスタンスを大切にしているという。そんな田中さんは、建て替えに依存する現状を危惧している。

「そもそも建て替えが必要ないところにも営業しています。建て替えは、30年前くらいに契約したオーナーたちの物件が多いので一定のニーズがあるのは確かですが、中には無理やりお願いしているケースも見受けられます。建て替えが一巡したら、規模を縮小して管理会社として残っていくような形になるのではないでしょうか」

 大東の屋台骨を支えているのは現場の営業マンだが、その現場の声を生かせるような仕組みが会社にないという。去り際に田中さんはこう呟いた。「大東建託が生まれ変わるには、やっぱり経営陣を総入れ替えするくらいでないと駄目です」――。

 果たして、この声は経営陣に届くのだろうか。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 大根田康介)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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