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東芝がメモリ売却でWDを逆提訴する攻勢に転じた事情

2017年07月03日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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東芝は、6月28日の定時株主総会直後、ウエスタンデジタルへの対抗手段を次々と打ち出した Photo:EPA=時事

 東芝の半導体事業売却をめぐる東芝と米ウエスタンデジタル(WD)の対立が、泥仕合の様相を呈している。

 東芝は6月28日、半導体事業で協業しているWDを提訴。半導体子会社の東芝メモリ売却に対するWDの「看過できない妨害行為」の停止と1200億円の損害賠償を求めた。東芝は、従来の“我慢路線”から、“攻撃モード”に転換した格好だ。

 もとより両社の関係は悪化の一途をたどっていた。東芝関係者によれば、「東芝メモリの入札参加者や買収資金を融資する銀行にWDが提訴をちらつかせるなど脅迫まがいのことを続けてきた」という。

 とりわけWDが東芝メモリ売却の差し止めを国際仲裁裁判所に申し立てた際には、入札参加者に動揺が広がった。

 目下、WDが起こした裁判で売却が中止になるリスクに神経を尖らせているのが、21日に東芝メモリ売却の優先交渉権を得た日米韓連合だ。産業革新機構(INCJ)や、米投資ファンド、ベインキャピタルなどから成り、韓国半導体大手のSKハイニックスも同ファンドに融資する形で参加する。

 東芝は日米韓連合との交渉を前進させるために、「不退転の決意でWDと戦う姿勢を(同連合に)示す必要がある」(東芝幹部)と判断し、提訴に踏み切った。

 東芝によるWDへの攻撃はこれにとどまらない。同社は東京地裁に訴訟を提起した28日、吹っ切れたように、保留してきたWDへの対抗手段を矢継ぎ早に実行した。

 東芝とWDが合弁でフラッシュメモリーを開発してきた四日市工場の技術データにWDがアクセスすることを禁じたのもその一つだ。

 そして次の一手は“兵糧攻め”だ。東芝は同日、来年夏に稼働する四日市工場の第6製造棟について、WDとの協議がまとまらなければ「東芝メモリ単独で生産設備を導入する予定」と発表した。

 WDはメモリーの開発・製造を四日市工場に依存している。技術データへのアクセスを遮断され、製造設備を増やせなくなれば、インパクトは大きい。

 東芝はこのように「WDが長くは戦えない状況」をつくることで、今年12月ごろまでに妥協点を見いだしたい考えだ。来年3月までに東芝メモリ売却を完了することで債務超過を解消、上場廃止の回避を目指す。そのために、日米韓連合と早急に契約を結ぶ必要がある。

日米韓にもリスク内在

 ところが、日米韓連合との交渉も簡単ではない。WDによる訴訟リスクとは別に同連合自身も難問を抱えているからだ。

「議決権の比率で日本勢が過半を握る」という経済産業省の号令の下、急ごしらえで組成したこともあり、メンバーの出資の在り方や知的財産権の扱いについて合意するのに時間を要しているのだ。

 東芝の視界不良はまだしばらく続きそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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