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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」第170回

iPhoneが普及して、ガムが売れなくなった理由

2017年06月28日 17時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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10周年を迎えるiPhone向けにiOS 11を発表するAppleのティム・クックCEO

 スマートフォンによるアメリカでの生活の変化は想像以上です。そう感じる理由は、日本にはもともと1999年からインターネットに接続できるケータイがあったから。通話しかできない携帯電話とパソコンでのネット接続が当たり前だったアメリカでスマートフォンが普及したことにより、さまざまな問題解決がスマートフォンを通じて行なわれるようになりました。

 日本だと、どうしてもスマートフォンはIT、しかもケータイ時代のイメージを引きずって、パソコン以下のおもちゃのような存在という扱われ方をしがちでした。しかしアメリカでは、前述のような非常に大きな可能性を持った存在として扱われています。

 どちらかというと、万人のためのテクノロジーが万人の生活を変える初めての瞬間を迎える。そんな受け止め方をしていたように思います。2011年に日本から米国に渡った筆者にとって、大きなギャップを感じ取ったポイントでもありました。

iPhoneのせいでガムが売れない?

 今年はiPhone登場から10周年。スマートフォンについて、iPhoneについて、さまざまな振り返りが行なわれています。その中で面白いまとめの記事を公開していたのがRecodeというウェブメディアでした。「iPhoneがいかに世界を変えたのか」というタイトルで、10のチャートで10年を振り返ろうというものです(https://www.recode.net/2017/6/26/15821652/iphone-apple-10-year-anniversary-launch-mobile-stats-smart-phone-steve-jobs)。

 その10のチャートの中で興味を引いたのが、ガムの売上の話でした。

 これは欧州のデータではありますが、スマートフォンの普及に拍車がかかっていった2011年以降、ガムの売上は毎年減少し、iPhone登場以来、2017年までに15%減少しました。

 欧米のスーパーでガムが置かれているのはレジの前。レジの行列の間にガムを物色して、買い物カゴに入れてもらうことを狙っているわけです。必要かどうかは別に関係ありません。そこにガムがあって、ちょっと欲しいかもと思ってもらえれば良いわけです。

スマホのインパクトは
テクノロジーの話ではなく人の行動の話だった

 筆者は大学時代から、携帯電話の社会における重要性についての研究に携わってきました。大きなくくりとして「個人が扱うメディア」であり、その筆頭として携帯電話がありました。そこで起きていたことは、情報検索とコミュニケーションに関する、場所と時間の制限から解き放たれた自由な行動と多重化でした。

 特に多重化については、必ずしもスマートフォンが初めてというわけではありません。日本の場合、通勤時間に本を読んだりゲームをしたりするのも時間の多重化です。ただ、スマートフォンはポケットに入っており、またコミュニケーションや検索など数十秒で済む操作も含まれています。多重化される行動の時間の単位が、非常に短くなりました。

 そのため、街の中での信号待ちの時間やレジでの行列の時間も多重化の対象となり、スマートフォンのアプリがその時間を埋めていったというわけです。たとえば信号待ちの90秒で本を読もうとは思いませんもんね。

 その背景から考えると、レジ待ちの時間に物色してもらおうとしていたガムが売れなくなるのも想像しやすくなりますね。

 このようにスマートフォンの変化はテクノロジーがどのように使われるか、どのようなデバイスが普及するかだけではなく、それを持ち歩く我々人間がどう行動するかという変化につながっているのです。Recodeのグラフの中で、そうした行動の変化に触れていたのはガムの話だったのでピックアップしました。

 もちろん、ガム業界も、スマートフォンを活用して生活の中に入り込む手段はいくらでもあります。テクノロジーによる変化はすべての人や企業に平等であり、それを見つけて活用できるかどうかが重要なのです。

Appleの10年のその先

 iPhoneはスマートフォンの代名詞として、単一メーカー、単一ブランドとして、先進国で最も販売台数を伸ばしたスマートフォンです。それによって、Appleは時価総額でもトップに躍り出る瞬間を迎えるなど、スマートフォンの10年はAppleの10年だったと言っても過言ではないでしょう。

 最近、iPhoneに関するこぼれ話もまた頻繁に報じられるように鳴りました。シリコンバレーにあるコンピューターヒストリーミュージアムで行なわれたiPhone 10年に関するセッションで、Appleの元幹部で2012年に退社していたスコット・フォーストール氏が、iPhone開発の秘話を明かしました。

 iPhoneよりも先にiPadが開発されていたことは、ジョブズ氏の伝記でも明らかになっていたことですが、iPad開発のきっかけは、スタイラスを用いるタブレットについて雄弁に語っていたMicrosoft幹部をジョブズ氏が許せなかったから、というエピソードが出てきました。

 しかしiPad発表は2010年であり、その3年前に派生プロジェクトとして出発したiPhoneが先にリリースされ、今日のAppleの姿を作り上げる結果となりました。怒りを与えたMicrosoft幹部は、iPhoneをリリースしたApple、あるいは人々の生活を大きく変えたスマートフォンの時代の到来のきっかけだったと、振り返ることができるかもしれません。

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