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佐川急便のSGHD、日立物流との統合睨み上場も「DNAは水と油」

2017年06月26日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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SGHDと日立物流は資本・業務提携を結んでいるが、経営統合に発展するのだろうか Photo:毎日新聞社/アフロ

佐川急便を中核子会社に持つSGホールディングスが早ければ秋にも東京証券取引所に上場する。株式市場での注目度はいまひとつだが、物流業界は「再編機運が高まる」と色めき立っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

「株式上場は、日立物流と統合するための布石だろう」。6月14日、宅配大手の佐川急便を中核子会社に持つSGホールディングス(HD)が東京証券取引所に株式上場を申請したことを受け、物流業界ではこうした観測が飛び交っている。SGHDは早ければ9月にも上場し、時価総額は数千億円規模になる見込みだ。

 関係者によると、佐川が上場を意識し始めたのは10年ほど前。現会長の栗和田榮一氏がSGHDを設立し、持ち株会社体制に移行したころからという。栗和田氏は、リクルート出身でダイエー社長を務めた髙木邦夫氏を社外取締役に任命。2014年には栗和田氏がSGHD社長を退き、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)社長を4年務めた町田公志氏を後継に充てた。

 外部から登用した人材も加わって進めてきたのが、宅配依存から脱却するために事業を多角化し、「アジアの総合物流企業」を目指すことだ。そのため、企業の倉庫内業務や幹線輸送など物流全般を請け負う3PL事業に力を入れ、グループ横断型営業を強化。物流施設に特化したREIT(不動産投資信託)も新設し軌道に乗せた。

 そうした中で昨年春、物流業界第4位の日立物流と資本・業務提携を結ぶことに成功。SGが日立物流の親会社である日立製作所グループから日立物流株29%を買い取り、一方の日立物流は佐川急便株20%を取得した。日立物流は3PLに強みを持ち、海外事業でも先行している。佐川が得意なラストワンマイルと組み合わせれば、理想的なグループが出来上がる。

 国内の物流大手同士の資本提携は初めてのことで、第3位のSGと日立物流の売上高を合わせると1兆5000億円規模となり、第2位のヤマトホールディングスを抜いて、首位の日本通運に続く。

 町田社長は「両者のシナジーを見極めつつ2~3年後をめどに経営統合を目指したい」と宣言。国内では施設と車両の相互活用に乗り出し、中国や東南アジアでは共同配送ルートを設けて顧客を開拓する取り組みを始めている。

 こうした流れから、SGHDが上場するのは、日立物流と統合する布石とみられている。SGが非上場のまま日立物流と統合するのは東証が定める制度面で難しく、買収には資金も必要だからだ。

 しかしながら、両者の統合には高いハードルがあるのも事実だ。

 日立物流はSGとの協業効果を3年間で売上高500億円増と見込んだが、SGの宅配のコストアップにより、狙っていた総合力を生かした新たな営業展開が難しく、計画は思うように進んでいない。

DNAは水と油
コンプラ違反も発覚
統合に高いハードル

 さらに、SGでは昨年、前代未聞のコンプライアンス違反が発覚。宅配ドライバーが勤務中に犯した駐車違反を免れようと、家族や知人を代わりに出頭させる「身代わり出頭」が組織ぐるみで頻発し、それに関連して100人超が検挙されたのだ。他にもドライバーが荷物を道路に投げたり蹴ったりするなど乱雑に扱う様子が動画投稿サイトにアップされ、世間の耳目を集めた。

 こうした事態には日立物流の関係者もあきれ顔で、将来の統合に対して、不安と反発を招いている。

 そもそも「佐川と日立物流は水と油」と評するのは競合企業の幹部。「DNAが違い過ぎて、統合は相当難しいのでは」とも言う。

 佐川といえば何かと“スキャンダラス”なイメージが付きまとう。政界や反社会的勢力に対して多額の違法資金供与が行われていた東京佐川急便事件はあまりにも有名だ。その後は「お家騒動」が勃発。経営陣が真っ二つに割れて社内クーデターを引き起こした。

 事業面でも他社を巻き込む“お騒がせ体質”がある。例えば、05年には三井物産や日本航空、住友商事などに出資を募り貨物航空会社ギャラクシーエアラインズを設立したが、就航からわずか2年で撤退。会社清算のプロセスで出資企業ともめ、いまだに禍根が残る。

 実は、SGと日立物流の提携劇の裏には、日本郵政の存在があった。郵政は低迷する郵便事業を補完しようと物流事業に力を入れており、日立物流や佐川急便の買収を検討していたとされる。日立物流とSGは手を結ぶことで「難を逃れた」とも受け取れる。日立物流の中谷康夫社長を筆頭に、経営陣は「郵政にのまれることを恐れていた」(関係者)とうわさされる。

 一方、SGでは長年、創業家がトップに君臨し、「鶴の一声で経営方針や人事が変わる」といわれてきた。こうした体制に終止符を打ち、社会的信用を上げ、日立物流側のSGに対するアレルギーを取り除くためにも、上場は悲願なのだ。ただそれには、とにもかくにも、SGが襟を正す必要がある。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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