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医者になる抜け道があった!「医学部編入」の実際

2017年06月20日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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Photo by Teerapatanun Pakorn

憧れの東京医科歯科大学、大阪大学医学部へ行きたかった──。そんな願いを実現できる裏技が実はある。今、社会人を経て医師を目指す人の抜け道として注目されているのが「医学部編入」だ。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 西田浩史)

 2017年6月10日、東海大学医学部の編入試験の2次試験日──。

 大阪市のある予備校には、受験を終えた学生が溢れていた。

 そこで時間講師として関わるSさん。彼もまた、大阪教育大学卒業後、中学校の社会科教員を経て医学部に編入し、医師になった。

 高校時代にアニメで知った精神科医に憧れていたものの、数学と生物がまるで苦手。英語が得意であった程度で、現役時代は医学部受験など、まったく考えていなかったという。

 しかし、友人から医学部への編入ができることを聞き、猛勉強の末、島根大学医学部編入試験に、見事合格。現在は、神戸市内の病院で精神科医として働いている。

 近年、一般入試による医学部合格のハードルはかなり高い。

 国公立大学の医学部入学を目指すなら、東大理科1類に合格する以上の学力が必要で、私立大学の医学部でも早稲田大学、慶應義塾大学の理工学部の難易度を優に超えている。理系を専攻している学生の中でも、よりすぐりの秀才たちが目指す職業が「医師」なのだ。

 そんな中、知る人ぞ知る医師になるための「抜け道」が、Sさんがチャレンジした「医学部編入」だ。こちらも決して簡単とはいえないが、一般入試に比べて科目が少なく、医師になれなかった社会人や予備校関係者の間で、注目されつつある。

私立より国公立が狙い目か

 最難関の医学部を目指すにはいくつかの方法がある。まずは、高校生や浪人生からの入学を目指す方法が第一。

 次に、いったんは医学部以外の他の大学に入学したものの退学か卒業した後に、再度、医学部の1年生として入学を目指す「再受験組」だ。これまではこの二つの方法が主流だった。

 編入は、第三の方法といえ、大学を卒業後、医学部に途中の学年から入学する。ちなみに、前述の一般入試の再受験組でも、一つ目の大学を卒業していれば、再受験と編入の併願ができる。

 具体的には医学部への編入は、主に4年制の大学の卒業者を対象とした「学士編入」となる。編入年次は2年次からが多い。

 その学士編入試験を実施する医学部が、2000年以降に増加しているのだ。

 ある予備校関係者は「多くの大学の説明会に参加したが、編入組を増やすことで医学部を活性化させたいという大学側の思惑を感じた」と明かす。

編入で20人も募集する東海大学医学部 Photo:時事通信フォト/朝日航洋

 実際、それが顕著なのが東海大。定員が若干名から5人程度が一般的な医学部の編入試験において、20人の合格者を出している。

 では、編入の難易度はいかほどなのだろうか。ここ数年を見ると、編入試験の志願倍率は20~25倍、中には30倍を超える大学もある(下左表参照)。しかし、全体的に見ると人気が落ち着いてきていて、チャンスが広がりつつあるのだ(下右図参照)。

 ただし、注意したいのは私立と国公立で大きく事情が異なること。

 現在、編入の実施数は、国立28校、公立1校なのに対し、私立はわずか4校。国公立が格段に多いのだ。

 さらに、試験の難易度も異なる。医学部受験に定評があり『医学部合格完全読本』(かんき出版)の著書もあるメルリックス学院の田尻友久学院長は「私立医学部の場合、一般入試の再受験組が、編入と併願するケースがほとんど」と明かす。その結果、一般入試レベルの難しい出題が多いという。

 同学院の企画室長であり、『私立医歯学部受験攻略ガイド』の編集人でもある鈴村倫衣氏は「私立は仕事を辞めて、本気で予備校で勉強しなければ受からないくらい難易度が高い」と強調する。

 加えて、私立は学費も高い。「東海大以外では社会人の編入に対して積極的ではない私立大学もある」(大阪市の大手塾)と、温度差もあるのだ。これでは「抜け道」というよりも、いばらの道だ。

 では、本命の国公立への編入はどうだろうか。

 国公立といえば、一般入試では「センター試験」受験が必須だが、編入の場合は必要ない。日程さえかぶらなければ、何校でも受験可能なのだ。

 加えて国公立への編入の場合、各大学の出題傾向がかなり違うため、一般再受験組にとっては対策を立てる労力がかなり増える。その結果、「一般入試と編入の併願者が少ない」(河合塾KALSを運営するKEIアドバンス教育教材開発グループの森靖義課長)。

 社会人は私立の場合と違って、一般再受験組とガチンコで戦わなくて済むのだ。

 国公立医学部への編入は、まさに医師への「抜け道」といえよう。

合格者は旧帝大、早慶出身以外も

 実際の編入試験の選抜方法は二つに別れる。

 一つは、「書類審査(1次)+学科試験(2次)+面接(3次)」、もう一つは、「学科試験+面接」だ。近年は、後者の選抜方法が主流だ。

 ただし、前者の場合、「書類審査によって、学科試験の倍率が低くなる傾向があり狙い目」(別の大阪市の大手塾)という。

 そして、学科試験の内容は、「英語+生命科学」や「英語+理科(生物、物理、化学)」が多い。ここに一部数学が含まれる場合があるから注意が必要だ。

 英語の出題形式は長文読解問題が基本。問題文である英文は、医学雑誌などからの引用が多く、専門英単語を学ぶ必要がある。しかも、ほぼ記述式だ。時間の割に分量も多い。旭川医科大学、島根大、浜松医科大学などのように英作文を出題する大学もある。「これらの大学では点数差がつきやすい」(森課長)という。

 一方で生命科学の出題は、大学の教養課程で学ぶ内容で、高得点の受験者が多く、「点数差がつきにくい」(横浜市の医学専門予備校)そうだ。

「抜け道」であるとはいえ、これらの問題の難易度は非常に高い。実際、編入試験の合格者は、東大、京都大学などの旧帝大出身者と早慶など難関大学出身者が中心。そして、出題内容から理系出身が有利だ。

 しかし、森課長は「筆記試験の対策をしっかりやれば合格を勝ち取れる。実際、難関大学の理系出身者ではない、文系学部出身の合格者はいる」と力説する。

 医学部の編入試験は、5月から12月にかけて実施される。夏以降のこれからが翌年の試験への受験勉強のピークで、予備校側も医学部編入対策に力を入れている。

 例えば、河合塾KALSの医学部編入講座の場合、1年半のコースを開講している。費用は約90万~130万円で、授業は、現役の医師が受け持っている。さらに医学部の学生チューターが、個別カウンセリングを行う。

「センター試験の内容と感覚をまだ覚えている大学2年生までなら再受験を勧めます。3年生以上で英語や生命科学分野ができるなら大学卒業後の編入受験を考えてもよい。社会人は仕事を辞めず、働きながら通う人も多い」と森課長。

 最後に、編入以外の、初公開の裏技も紹介したい。実は、「医学部へ転部」という道もあるのだ(上図参照)。ほとんど知られていない方法だが、今回、東海大と昭和大学の学生から内部情報を入手した。両大学のどこかの学部にとにかく入学して、学内でトップレベルの成績を取らないといけないが、一般入試で浪人し続けるより良い選択かもしれない。仮に転部に失敗しても、大学卒業後、医学部編入に再チャレンジすればよい。

 いずれにしても、学力だけでなく面接などでかなり高い医師としての資質も問われるのが編入試験だ。合格者には社会人として培った経験を生かすような医師になってほしい。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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