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LoRaで通信できる水田センサーと自動給水弁で可視化と制御を実現

IIJら、IoT農業の実証実験で水管理のコスト半減を目指す

2017年06月20日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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6月19日、インターネットイニシアティブ(IIJ)は「水田水管理ICT活用コンソーシアム」を結成し、IoTを活用した農業の実証実験に乗り出すことを発表した。LoRaで通信できるセンサーや自動給水弁を用いることで、水管理のコスト半減を目指す。

300台の水田センサー、100台の自動給水弁で水の管理を効率化

 水田水管理ICT活用コンソーシアムで推進するのは、農林水産省の公募事業である「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」の中の「低コストで省力的な水管理を可能とする水田センサー等の開発」の研究課題。2019年度までの3年間で、静岡の大規模経営体(営農法人)で水田の水管理コストを半分にすべくICT水管理システムの実証実験が行なわれる。

IIJ ネットワーク本部 IoT基盤開発部長 齊藤透氏

 プロジェクトのために結成された水田水管理ICT活用コンソーシアムには、IIJのほか、静岡県静岡県交通基盤部農地局、富山県の農業ベンチャー笑農和(えのわ)、ITコンサルティングのトゥモローズ、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構などが名を連ねる。実証実験は静岡県磐田市の農健(50ha)と袋井市の浅羽農園(188ha)で行なわれ、電池駆動の水位・水温センサーを300台、低圧パイプライン用の自動給水弁100台を設置。各センサーと自動給水弁はLPWAであるLoRaで基地局と通信。データ収集や遠隔からの開閉制御が行なわれる予定で、将来的には農家が水田状態を確認・管理するアプリの開発も進めるという。

開発する技術の全体像

 プロジェクトには経営体が参加することで、農家で本当に役立つモノ、簡単に操作できるモノを作るのが大きな目的。ほ場の移動ロスをなくしたり、作付け品種ごとに異なる水管理を効率化するという。また、最終的には水田の見守り作業を大幅に軽減し、農業コストの1/5を占める水管理コストを半分にするという。さらに、対象となる天竜川水域は必ずしも水が豊富な地域ではないため、水利用を総合的に合理化する狙いがある。「数十個くらいのセンサーはこれまでもあったが、これだけ数があると全体が見られる」とIIJ ネットワーク本部 IoT基盤開発部長 齊藤透氏は語る。

コストとオープン性最優先で導入しやすいものを作る

 今回特に重視されたのは、ずばりコストだ。公募要領においても水田センサーが1万円程度、制御可能な自動給水弁が3~4万円で導入できるように求めており、「農家が導入しやすいものを作る」という点が大きくフィーチャーされている。「とにかくコストが重視されているので、気温センサーやGPSは付けないで、水位/水温に特化している」と齊藤氏は語る。

 また、同じく公募要領で「通信コストをかけずに半径2km以上の範囲の無線通信が行える基地」と明記されており、半ばLPWAとしてLoRaを前提としているのも特徴。IIJは独自技術の「SACM」を用いることで、LoRa基地局のオートコンフィグや集中管理を進めるという。さらに、オープンなシステム仕様が前提となっており、多くのプレイヤーが参入でき、さまざまな地域で利用できることが求められている。

 プロジェクトは今年度にまず試作機開発とフィールド調査を実施し、2018年度にはほ場への試作機の設置、実証実験を進める。2019年度には量産に向けた効果検証やアプリ/システムの改良、地図システムとの連携などを進め、協力機関の日本農業情報システム協会(JAISA)を介して、各地域への展開を図るという。

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