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スバル「ぶつからないクルマ」のさらにスゴくなった追従性能を試した!

2017年06月19日 16時00分更新

文● 山本晋也  ●車両協力/SUBARU

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もはや自動運転!
くねくねと走る先行車にクルマが見事に追従する

 いま自動車業界で熱いのは自動運転である。その入り口といえる機能が「自動ブレーキ」で、日本におけるパイオニアといえばスバルだ。2017年4月、富士重工業からSUBARU(アルファベット表記!)と社名を変えた同社は「Eyesight」(アイサイト)という名前で、先進安全技術をアピールしている。

 その機能はいくつもあるが、よく知られているのは「自動ブレーキ」、そしてACC(アダプティブクルーズコントロール)という先行するクルマに一定間隔でついて行く機能だろう。自動ブレーキは緊急時に働くもので、あくまでエマージェンシー的な安全装置。その事故低減効果は大きく、追突事故を約8割も低減したというデータもあるほどだ。

直線で先行車に追従するACCは当たり前の機能となっているが、他社に先行して市販したというアドバンテージはいまだ健在。車間も三段階で調節可能だ

 それに対して、ACCは高速道路を走るときには常に役に立ってくれる運転支援システム。高速道路での使用に限定されるが、渋滞時(時速0キロ)から設定した速度までの領域で、先行車に合わせて速度を調整、道路に合わせて曲がってくれるというもので、とくに長距離ドライブでの疲労を軽減してくれる機能として知られている。

 そのACC機能が、間もなくマイナーチェンジを実施するスバル・レヴォーグ/WRX S4から大幅に性能アップするという。その先行プロトタイプに、茨城県にある日本自動車研究所・城里テストコースにて試乗することができた。

※テストコースの所在地が間違っておりました。訂正してお詫びいたします(6月20日 17:00)

 これまでアイサイトのACCは、先行車の速度を検知して一定間隔で追従するというものから、白線を認識してステアリング操作をアシストするというものへ進化している。つまりアクセル、ブレーキ、ステアリング操作をクルマが行なってくれるもので、スバルでは「自動運転」という言葉を使っていないが、実質的にはレベル2の自動運転機能といえる。※自動運転のレベル分けについては過去記事を参照されたし(関連記事


アイサイトから「アイサイト・ツーリングアシスト」へと進化
その変更点とは!?

 そして、アイサイトは次のステージに上がる。新たに「アイサイト・ツーリングアシスト」と呼ばれるシステムへと進化するのだ。そのポイントは、ステアリングの操作範囲が広がったこと。これまで時速60キロ以上で一定車線を維持するようにステアリング操作を行なうのみだったが、時速0キロからクルマが道路や先行車に合わせて曲がるようになった。「高速でステアリング操作ができるなら低速で可能なのは当たり前」と思うかもしれないが、他社も含めて通常のステアリング操作アシスト機能というのは道路上の白線を認識して行なっている。渋滞時にはクルマによって白線が見えづらくなるため難易度が上がるのだ。

くねくねと曲がって道でも白線や先行車を認識して、ステアリング操作をアシスト。手放し運転も可能なほどの技術レベルにあるという印象も受けるが、実際にはきちんとステアリングを握っていないとシステム側から注意される

 そこでスバルでは白線が見えなくても先行車の動きを検知するようにした。スバル・アイサイトがステレオカメラを使ったシステムなのは知られているところだが、これは左右の画像に生じるズレにより対象物との距離を測るというもの。ズレが大きければ近く、ズレが小さければ遠くにあるということがわかる。それを前方の広い範囲で計測することでクルマや歩行者、サイクリストなどとの距離を瞬時に判別している。

 今回、加わった全車速域でのステアリング操作は、白線が見えるときは白線を優先しているが、見えなくなると先行車の後面の角度をステレオカメラで検知して、どちらに進んでいるのかを検知、その軌跡に合わせて追従することも可能とした。これにより、渋滞時でのステアリング操作アシストを可能にしたばかりではなく、白線が消えているような道路であってもステアリング操作を維持できるようにしたのだ。

アイサイトの操作はステアリング上のスイッチで行なう。システムを起動して、任意の速度にセットすれば先行車がいれば追従するし、いなければ設定速度で走る。もちろん、先行車がいなくとも道に合わせてステアリング操作をアシストする


「アイサイト・ツーリングアシスト」をテストコースで体験!

 では、実際に「アイサイト・ツーリングアシスト」をテストコースで乗ってみよう。走り出して、先行車をターゲットにアイサイトを設定すると、そこからは自動運転感覚。あくまでも運転支援システムなのでステアリングを握っている必要はあるが、クルマが自動的にステアリング操作していることを両の手で感じながら、周辺とシステム監視をしているだけというオートパイロット気分が味わえる。

 ただし、しばらく追従していると人間と機械の運転による違いがあることに気付いた。ベテランドライバーがカーブに差し掛かると、車線内でアウト・イン・アウトといったライン取りをするのに対して、アイサイト・ツーリングアシストの制御は車線の真ん中をキープするもので、わずかに違和感を覚えた。そうした違いを感じながら「碁のAIがこれまでと異なる定石を生んだように、自動運転時代には理想的な走り方も変わっていくのかもしれない」と感じたりしたのは余談めくが、おそらく真実だろう。

 そんな未来を感じていると、今度は白線のない渋滞を模したシチュエーションになる。たしかに先行車の動きだけでしっかりと追従していくのを確認。せっかくなので、わざとくねくねと走ってもらうと見事に軌跡をトレースする。市販レベルの自動運転技術が、ここまで進化しているというのは正直驚いた。

インパネ中央のカラーディスプレーにもアイサイト・ツーリングアシストの作動状態を表示。左側のステアリングのアイコンは、実際の操作に合わせて微妙に動くのがかわいい

 ただし、良いことばかりではない。白線や先行車といったデータからステアリング操作をアシストしてくれる領域が広がったぶん、そうしたデータをロストしてしまうアシスト機能が切れたときのギャップは大きくなったように思う。機械は完璧ということはないし、そのために「アイサイト・ツーリングアシスト」利用中もドライバーはステアリングを握っている必要があるのだが、それでもコーナリングの途中で先行車などを見失ってしまったときに、スムースに対応できるよう心構えをしていたほうが良さそうだ。

 慣れると「このくらいキツく曲がっているとステアリング操作アシストが切れるだろうな」と予想できるようなるが、そうした新しいクルマとの共同作業的なコミュニケーションも、また未来的なドライビングで楽しい。

 なお、新しい「アイサイト・ツーリングアシスト」は低速域までステアリング操作アシスト領域を拡大しただけではない。すでに報道されているように高速道路の制限速度が一部で時速120キロまで上がるのに対応して、設定速度の上限が上がっているのも見逃せないニュースといえるだろう。

メーター中央のディスプレイには先行車の認識具合は車間距離の設定、そして白線の認識などを表示。先行車や白線を見失ったときには、これらの表示が消え、ドライバーの完全マニュアル運転となる

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