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超早起き!漁師のモーニングコールサービスに応募者殺到

2017年06月15日 06時00分更新

文● 吉田由紀子(ダイヤモンド・オンライン

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超早起きの漁師たちからモーニングコールを受けられる「フィッシャーマン・コール」は依頼者が殺到し、抽選になるほどの人気ぶりだ

5月のサービス開始から
たちまち応募者が殺到!

 朝、どうもスッキリと起きられない、寝覚めが悪いという方はいらっしゃるだろうか。ネットゲームやSNSで夜更かしをした結果、朝寝坊になってしまうケースは少なくないと思う。かくいう筆者も朝は弱く、なんとか爽やかに目覚めたいと悩んでいる1人だ。

 そんな全国の朝寝坊諸氏に、画期的なサービスが登場し、話題を呼んでいる。なんと、漁師がモーニングコールをしてくれる、その名も「フィッシャーマン・コール」。朝に強い漁師が、船上や漁港から「おはよう!」と電話をかけてくれるのだ。

 5月に始まったこのサービスは、たちまち人気を呼んで応募が殺到。現在は抽選となっているが、申し込み自体は簡単である。WEBサイト上で、まずは電話をかけてほしい漁師を選ぶ。サイトには漁師の1日の活動予定が載っており、試しに声を聞くこともできる。希望の日時を入力し、申し込んだ理由を記入すればOK。あとは待つだけ。ちなみに利用は無料である。

 宮城県石巻市で活動する牡蠣漁師、江差寿宏さんのスケジュールを見てみると、「2時起床、3時出航、水揚げ、6時帰港、牡蠣の殻むき、12時出荷、13時作業終了」となっていて、海の男がいかに早い時間から働いているかがよくわかる。早起きは、漁師の強みのひとつでもあるのだ。

 これまでに、「誕生日に祝ってほしい」「家族のお弁当を作りたいから早起きしたい」「大事なプレゼンの日なので漁師さんに景気よく起こしてほしい」といった様々な申込みが寄せられている。

「もっとコールできればいいですが、現在、このプロジェクトに参加している漁師が5名なんです。申し訳ないのですが、抽選で選ばせてもらっています」と話すのは、フィッシャーマン・コールの母体であるフィッシャーマン・ジャパンのアートディレクターの安達日向子さん。

普段目にすることの少ない
漁師をもっと知ってもらいたい

将来は漁師になりたいとあこがれる9歳の男の子や、大事なプレゼンの日に漁師に景気よく起こしてほしいというビジネスマンまで、色んなユーザーがフィッシャーマン・コールに依頼してくる

 2014年に設立されたフィッシャーマン・ジャパンは、漁業の担い手を増やすために、これまで多彩な活動を行ってきた。

 拠点となる石巻市の漁協と連携して、漁師になりたい人のために漁師学校を開設したり、住む場所を確保しようとシェアハウスを作ったり、漁業権のレクチャーを初心者向けに行うなど様々なプロジェクトに取り組んでいる。しかし、新しく漁師になろうという人はなかなか増えない。少しでも漁業のことを若い世代に知ってほしいという思いで企画したのが、このモーニングコールのサービスというわけである。

「先日、9歳の男の子が応募してくれたのですが、メッセージ欄に、将来は漁師になりたいと書いていたんです。男の子もあこがれの漁師さんと電話で話せると緊張していたそうですが、漁師の側もどうやって漁業の話をしようかと、かなり緊張していたみたいです。コールのあと、お母さんから『息子がとても喜んでいました』とメッセージをいただき、こちらまでうれしくなりました」

 妊娠中の奥さんには、「お子さんが生まれたら、ぜひ一緒に浜へ遊びにきてください」とメッセージを添えるなど、朝の挨拶だけではなく、漁師との交流も楽しめるよう工夫されている。

「業務が忙しくて生徒との時間が取れない、と悩んでいる小学校の先生がいらしたんですが、漁師が“若いのに仕事を任せられるのは実力がある証拠。それだけ認められているからですよ”とメッセージを送りました。朝礼で、『今日は漁師さんに起こしてもらいました』というとクラス全員が驚いたそうです」

漁業従事者はこの40年で
3分の1にまで減少

「この企画はインパクトも手伝って、かなり話題になりましたが、決してウケを狙って始めたわけではありません。例えば、同じ一次産業でも、農業は一般の人にもなじみが深い。田畑が身近にある方も多く、収穫作業を目したこともあると思います。でも漁業は、作業自体が海の上、一般の人はほとんど“現場”を見ることができません。人の目にふれる機会が圧倒的に少ないため、どうしても遠い存在になってしまっています。体をはって、命がけで働く海の男は本当にかっこいい!それを少しでも知ってほしいんです」

 全国の漁業従事者は、現在16万人。この40年で3分の1にまで減少している。平均所得は288万円で会社員などに比べると、かなり低い数字だ(出所:農林水産省)。昨今は漁獲量、漁獲高ともに減少している上に、輸入物が大量に入ってきたり、養殖技術が発達したことで、近海漁業はますます苦境に立たされている。その上、消費者の魚離れもあって、水産業全体が下降気味である。

 フィッシャーマン・ジャパンでは、漁師の地位向上と収入アップを目指して、今後も積極的に活動を行っていくという。

 日本は海に囲まれた海洋国家。海の恵みで栄養を補給してきた長い歴史がある。伝統を受け継いでいくためにも、海の男たちを応援していきたい。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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