今回のことば
「レノボとのPC事業の統合において、お互いが考えていたことや、方針にずれが発生しているわけではない。これが破談になることはない。早晩まとまると考えている」(富士通の田中 達也社長)
富士通の田中 達也社長は2017年6月6日、2015年度に社長就任して以降、同社が取り組んでいる経営方針の進捗状況について説明した。
田中社長は「2015年度から実施している変革の効果は着実に出ている。2016年度の業績はすべて公表計画を上回る結果となった」などとし、「2015年度発表の経営方針で設定した連結業績目標に変化はない。環境の変化にあわせて、必要な手を打ちながら達成に向けて取り組んでいく」と、計画が順調に推移していることを示した。
だが「2合目か、3合目にいるという状況は変わらない」と、まだ道半ばであることを認める。
富士通は中期的には連結営業利益率で10%以上、フリーキャッシュフローで1500億円以上、自己資本比率で40%以上、海外売上比率では50%以上を目指す計画を示している。これらの経営目標の達成に向けては、まだ距離があるのは確かだ。
そのなかでも、重要な経営指標のひとつになっているのが営業利益率である。
営業利益率を上げる最大のテーマがPC事業再編
富士通では2016年度実績で2.9%だった営業利益率を、2017年度には4.5%に引き上げる計画であり、これを「5%ゾーンのミニマムライン」と位置づける。さらに2018年度には、営業利益率6%ゾーンへの到達を掲げ、将来的には10%以上を目指す考えを示している。
2018年度の6%ゾーンは同社にとって過去最高の営業利益率となり、さらにその先を目指す計画を考えると、田中社長がいうようにまだ2合目か、3合目という状況にあるのは明らかだといえよう。
「私は社長就任以来、営業利益率10%を目指すとしている。これは社員にも浸透している。グローバル企業と互して戦うには、営業利益率10%の水準が必要であり、2018年度の数字は通過点に過ぎない」と、遠くの頂を見据えた計画であることを強調する。
そうしたなかで、直近の課題として最大のテーマが、PC事業の再編だといえる。
実は田中社長が「2合目か、3合目」と現状を表現した際に、上の句がついていた。それは「PC事業の独立化が進んでいないこともあり」という言葉だった。つまり、PC事業のレノボとの統合が進まない限り、2合目か、3合目にいる状況は変わらないという意味であり、それに続けた「2017年度は成長を実感する1年とし、5合目まで登りたい」との言葉には、PC事業が統合に決着がつけば、経営方針は一気に5合目まで登り切ることができるという意味が込められていたともいえよう。
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