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麻倉怜士のハイレゾ真剣勝負 第13回

山口百恵、原田知世なども

麻倉推薦:ついに11.2MHzネイティブ録音曲、津軽三味線の輪郭に注目

2017年06月11日 12時00分更新

文● 麻倉怜士 編集●HK(ASCII)

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 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

ターン・アップ・ザ・クワイエット
ダイアナ・クラール

 ダイアナ・クラールの11年ぶりのジャズ・スタンダード・アルバム。多くのジャズの巨人をプロデュースし、デビュー前のダイアナを発見し、サポートしてきたトミー・リピューマがプロデュース。今年3月に逝去した彼の遺作になった。

 1曲目、「ライク・サムワン・イン・ラヴ」。快適にスウィングするベースのみをバックし、冒頭から、すでにダイアナの世界に入る。深いヴォーカルが、心地良く始まる。大きな音像だが、その体積感のなかに、豊かなニュアンスが横溢している。続いてダイアナのピアノ、ギター、ベースがソロプレイを連続させる。まさに、スタンダードな曲をスタンダードにプレイ。2曲目、「ロマンティックじゃない?」。ダイアナの豊潤な表現力が、イントロの歌いの味わいをより深くしている。ヴァースもまさにタイトルどおりの、ロマンティックさ。豊潤な低音に取り込まれそうになる。ゆったりとしたダイアナのソロピアノもいい感じ。

FLAC:192kHz/24bit
Verve、e-onkyo music

チャイコフスキー:交響曲 第6番《悲愴》
ベルリン放送交響楽団,
フェレンツ・フリッチャイ

 天下の名録音がDSDで聴ける技術革新を喜びたい。この時代のドイツグラモフォン録音ならではのピラミッド的な安定した音調に、DSDらしいシルキーなタッチが加わり、この名指揮者がいかに細部の表情に磨きをかけていたかが、明瞭に聴けるのである。 フェレンツ・フリッチャイは1914年、ブダペスト生まれ、1963年に49歳で夭逝した。第二次世界大戦後のフルトヴェングラー亡き後の、ヨーロッパ楽壇で、もっとも熱い期待を掛けられた名指揮者だ。

 1958年秋から白血病のため休養していたが、1959年夏に指揮活動に復帰。この時から、楽風が一挙に巨匠的になった。エモーションを色濃く音楽に投影し、深い味わいを表出する大指揮者になった。1959年9月録音の本演奏がまさにその典型だ。第一楽章を再録音したいとのフリッチャイの希望により長く発売が見送られ、1996年になって初めてリリースされたいわく付きの演奏だ。

 第一楽章の冒頭、弦、管のさまざまな楽器が顔見せ的に登場する場面では、それぞれの持つ音楽的意味を明確にしながら、クレッシェンドに誘い、ついにはトゥッティまでなだれ込むダイナミックな進行にはわくわくする。もちろん古い録音だから、最近のような細部まで徹底した描き込みにはやや不足するが、アナログでなければ捉えられない音の濃密な表情感は、やはりDSDのアナログ的伝達力がもっとも似合う。

 第一楽章第二主題の悠々としたむせび泣き方、表情の濃密さはまさに フリッチャイの独壇場。解説文にあるように「一音一音を慈しみ、万感を胸に抱き演奏された」名演だ。1959年9月、ベルリンで録音。

DSF:2.8MHz/1bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music

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