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尖ったアイデアを協賛企業が表彰する「ジェネレーションアワード」を新設

“変な人”を国が支援する「異能vation」今年は2部門で開催

2017年06月06日 19時30分更新

文● 佐野正弘 編集●ASCII編集部

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 2014年より総務省が毎年実施している、日本から破壊的価値を創造するために実施している独創的な人向け特別枠「異能vation」。国が“変な人”を支援するとして話題となった異能vationだが、第4回を迎える今年のプログラム公募に向け、6月5日に都内で説明会が実施された。

新たに「ジェネレーションアワード」部門を創設

 イベントの冒頭、総務省の異能vationプログラム プログラムオフィサーである笠井康子氏から、異能vationの内容について改めて説明がなされた。異能vationの語源となる「イノベーション」には、既存事業の秩序を破壊して業界構造を劇的に変化させる「破壊的イノベーション」と、従来存在するものの性能を高める「持続的イノベーション」の2種類が存在する。だが日本では後者で多くの強みを発揮するものの、前者の破壊的イノベーションが生み出されないという弱みを長い間抱えている。

異能vationの内容について説明する笠井氏

 そこで総務省の情報通信審議会でも、いかに日本で破壊的なイノベーションを生み出せるかが話し合われたとのこと。破壊的イノベーションを生み出す役割は、既存の仕組みで大きな売り上げを上げている大企業よりもベンチャー企業の方が担いやすいが、ベンチャー企業が育つ環境を作るためには、目的意識を持ち、他の人がやらないことをやる“変なこと”をする人を増やす必要がある。そのためにはより多様な目を育む環境整備が必要だと考え、それが異能vationの実施へとつながっているわけだ。

総務省の情報通信審議会の答申より。破壊的イノベーション創出のため、独創的な人向けの特別な取り組みが必要とされたことが、異能vationの誕生へとつながっている

 だが日本では「出る杭を叩く」「失敗を恐れる」など、破壊的イノベーションと相反する文化が非常に根強く浸透している。そうした現状を打開するためにも、失敗を許容することはしていけない、最もコンサバティブな国、つまり総務省自身が、あえて“変な人”を発掘するプログラムを実施することとなったのだそうだ。

 今年で4回目を迎える異能vationだが、今回は2部門での公募がなされるとのこと。ひとつは従来どおり“変な人”、つまり破壊的価値を創造する技術課題に挑戦する個人を対象として、その研究開発を支援する「破壊的な挑戦」部門だ。こちらは今回も10件程度の採用を予定しているそうで、1年間で300万円までの支援がなされるほか、政府関連の研究には付きものだという書類の用意など事務的な処理を代行し、研究開発に集中してもらうためのサポートも用意されるという。

「破壊的挑戦部門」は、従来同様野心的技術に挑戦する人達の中から10件程度の提案を採用し、1年間にわたって支援していく取り組みになる

 そしてもうひとつが、今回から新たに設けられる「ジェネレーションアワード」部門。誰も思いついたことがない、尖ったおもしろいアイデアなどを協賛企業によって表彰する、アワード形式のプログラムになるという。

新たに創設される「ジェネレーションアワード」部門。これまでにない新しいアイデアや技術をアワード形式で評価し、企業との接点を作る取り組みとなるようだ

 こちらは破壊的な挑戦部門とは異なり、従来にないがまだ完成していない、使い方がわからない技術やアイデアなどを公募し、それを企業に評価してもらうことにより、イノベーションへとつなげていく取り組みになる。これまで誰も思いついていないものであれば、アイデアやちょっとした技術などでも応募できることから、破壊的挑戦部門よりも応募しやすい部門となるようだ。

 ICTや宇宙、医療など15の分野に関して公募がなされるが、実際は指定した以外の分野に関しても応募は可能で「誰も思いつかない分野での応募を期待している」(笠井氏)とのこと。

アワードは破壊的イノベーションに向けた次の一歩

 続いて異能vationのプログラム業務を実施する角川アスキー総合研究所の福田正氏から、これまでの異能vationの取り組みや、ジェネレーションアワード部門設立の経緯などについて説明がなされた。福田氏によると、異能vationは開始当初から「変な人プロジェクト」として注目を集めたが、開始当初は“変な人”自体を探すことが大変だったとのことだ。

異能vationの取り組みについて説明する福田氏

 だがそれをきっかけとしてさまざまなメディアへと取り上げられたこと、総務省が音頭を取っていることなどから、“変な人”であることがプラスのインパクトへと結びつくなどしてプログラム自体の認知が高まり、一定の成果は上がってきているという。過去3回のプログラムで採択された事例に関しても、その後特許を獲得したり企業に買収されたりするなど、さまざまな形で実績を残しているものが出てきているそうだ。

過去3回の採択事例も紹介。異能vationでは成果にこだわっているわけではないとのことだが、中にはさまざまな形で実績を残したプロダクトもあるという

 一方で4年が経過するにあたり、破壊的イノベーションを実現する上での新たな取り組みが求められるようになってきたとのこと。そこでテーマを絞って公募をすることでアイデアに深さを求めることや、企業とのマッチングによって新たな取り組みにつなげること、そして異能な人が異能であり続けるため、周囲がそのアイデアを評価し、新たなアイデアの発想につなげられる場を提供することなどを考えたのだそうだ。

 そうしたこともあり、今回は従来の破壊的な創造部門だけでなく、ジェネレーションアワード部門が設けられるに至ったとのこと。アワード形式の採用によって、これまではできなかった企業との協力が進められるようになり、「完成していない技術が、企業などによって自分が思いもよらない使い方がなされることで、新しいイノベーションを生み出すかもしれない」と、福田氏は期待を寄せる。

 また今回の異能vationにおいては、提案への概括的なアドバイスをするプログラムアドバイザーとして、MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏や、映画監督の三池崇史氏など6人が参加。さらに応募された提案を評価するスーパーバイザーとして、ギネスワールドレコーズジャパンの小川エリカ氏や高須クリニック院長の高須克弥氏など8人が参加することが明らかにされている。ちなみに応募された提案の選考は、“変な人”の先駆者でもあるスーパーバイザーの直感や主観による評価によって決められるとのことだ。

応募された提案を審査するスーパーバイザーの顔ぶれ。ICTの分野で世界的に活躍している人達だけでなく、「高須クリニック」の高須克弥氏など多彩な顔触れが揃っている

 なお異能vationの公募は、両部門ともに6月30日までとのこと。その後各部門ともに審査が実施され、9月末には破壊的な挑戦部門の最終選考通過者と、ジェネレーションアワード部門の表彰者が発表されるとのことだ。


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