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COMPUTEX 2017で見つけた“ワイヤレス”な欧州スタートアップ2社

特集
COMPUTEX TAIPEI 2017レポート

 台湾の台北で2017年5月30日から6月3日まで開催された“COMPUTEX TAIPEI 2017”には、今年も多数のスタートアップが出展しました。ここで見つけた2つの新技術をレポートします。

IoT時代に便利な“ワイヤレス給電”の新技術

 COMPUTEX会場のひとつ、南港展覧館のブースでひときわ注目を浴びていたのが、イスラエルのベンチャー企業によるワイヤレス給電技術“Wi-Charge”です。

イスラエルからやってきた“Wi-Charge”。台湾企業とも多く協業しているのが出展の理由とか

 ブースにはレールと車両からなる簡単な鉄道模型を設置し、かなりの勢いで走らせていました。注目は「この列車にはバッテリーがありません」という説明です。これはワイヤレスで給電を受けながら走るデモなのです。

バッテリーのない列車をワイヤレス給電で走らせるデモ

 Wi-Chargeの技術を初めて公開したのは2015年の“Mobile World Congress”ですが、そこから2年の開発期間を経て、ついにCOMPUTEX 2017でデモの公開に至りました。

 ワイヤレスで電力を送るため、Wi-Chargeは赤外線を利用します。数メートルの高さにあるブース天井には、送信元となるトランスミッターを設置。車両の屋根に取り付けたレシーバーが赤外線を電力に変換します。

自宅やカフェの天井に取り付けることを想定したトランスミッター

 両者の間を遮るものが何もないことが動作の条件になりますが、最大8メートルの距離まで、2~3ワットの電力を発生させる能力があるとのこと。気になる安全性については、米FDA(アメリカ食品医薬品局)の基準を満たしており、クラス1レーザーのため人体への影響はないと説明しています。

車両の屋根にはレシーバーを搭載

ここで赤外線を電力に変換している

 同時に複数台のデバイスにも給電可能。自宅内にスマートロックやスマートメーター、カメラなどを設置しても、ケーブルや電池が不要になるのは便利です。まさにIoT時代には必須に技術といえます。

 もちろん2~3ワットという電力ではスマホなどの充電には物足りないものの、「会議室やカフェなど、いまはまったく電力供給がない環境でも、2~3ワットあれば駆動時間を伸ばすことができる」(Wi-Charge担当者)とメリットを挙げます。

 実用化の目標は2017年内。日本でも大手企業との協業を始めているとのことです。

Bluetoothのマルチキャスト活用で、オーディオが便利に

 もうひとつ筆者が注目したのは、フランス・パリを拠点とするスタートアップ“Tempow”。スマホに複数のBluetoothオーディオデバイスを接続する技術を開発しており、Bluetooth SIG主催のコンテストでもファイナリストに残っています。

フランス政府が推進する“La French Tech(フレンチテック)”の1社として出展した

事業開発を担当するThomas des Francs氏

 Tempowが開発したBluetoothのソフトウェアを使うことで、Androidスマホから複数のBluetoothスピーカーをペアリングできます。異なるメーカーの2つのスピーカーでステレオ再生をすることも可能。すでにスマホメーカーによっては2台のスピーカーの接続を実現していますが、Tempowは最大で5~6台をつなぐことができるとしています。

複数のBluetoothスピーカーをペアリングできる

 ブースのデモ機にはroot権限を取得した『Nexus 6P』を使用しており、BluetoothのドライバーをTempowが開発したものに置き換えることで動作を実現していました。原理的にはどのようなAndroidデバイスにも対応可能で、端末メーカーと商談を進めているとのこと。

Tempowの設定アプリ。音量やステレオのチャネルを設定できる

 スピーカーだけでなく、AirPodsのような両耳型のBluetoothイヤフォンも対象になります。通常は片方のイヤフォンがスマホとBluetoothでつながり、もう片耳との間で無線接続を確立しますが、これではバッテリー消費が均一になりません。Tempowの技術があれば、両耳をそれぞれスマホとペアリングできることになります。

 現在、Tempowは世界的な端末メーカーと協業を進めており、2017年9月には実際の製品に組み込まれる予定となっています。

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