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三菱UFJは行名と組織の変更で「旧行の呪縛」を解けるか

2017年05月19日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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来年4月に三菱東京UFJ銀行の銀行名から「東京」の2文字が消え、持ち株会社と表記が統一される予定だ Photo by Takahisa Suzuki

三菱UFJフィナンシャル・グループがグループ内再編に着手した。多くの金融機関が集まって誕生したメガバンクグループであるが故に今も残る、合併前の旧行の縄張りにメスを入れる経営体制の改革案を実行するものだ。ただ、これが旧行意識との決別なのかどうかを見定めるには、もう少し時間を要しそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久、田上貴大)

 来年に予定している新たな中期経営計画の策定まで待てない──。そんな危機感が表れた改革案の発表だった。

 5月15日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は、2017年3月期決算の会見の場で「MUFG再創造イニシアティブ」と呼ぶ、新たな戦略を打ち出した。

 注目ポイントは大きく二つ。

 一つ目は、グループ内における重複事業の一本化だ。三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行が共に持っていた法人融資事業を銀行側に集約。役割分担を明確化し、事業の効率性向上を図る考えだ。

 二つ目は、グループの中核子銀行である三菱東京UFJの名称変更だ。来年4月から「東京」の2文字を取り、「三菱UFJ銀行」として生まれ変わることになる。

 この二大改革は、多くの金融機関の集合体であるが故に今も残る、合併時の“妥協の産物”を取り払う作業ともいえる。

 一つ目の銀行と信託における重複事業の解消は、三菱UFJFGにとって長年のテーマだったが、信託側が必死の抵抗を見せたため、踏み込み切れずにいた。

 また、合併前の旧行の名前を三つ並べた長過ぎる銀行名は、批判の的であるのに加え、旧行意識の象徴でもあった。

 このタイミングでこれらの改革に着手できた背景には、日本銀行のマイナス金利政策などによる貸出金の利ざや低下といった、銀行業界が直面する逆風がある。平野信行・三菱UFJFG社長は「今後も厳しい経営環境を覚悟しなければならない」と見通しを語る。

 そして、その危機感を「グループ各社の次世代を担う中堅社員約60人と共有し、彼らに半年かけてまとめてもらった」(平野社長)のが今回の改革案だという。

 危機感と次世代志向が相まって、ようやく旧行の呪縛から脱しようとしているというわけだ。

有力OBが目論んだ
「三菱銀行」への銀行名“先祖返り”

 ただ、一方でこの二大改革は、別の捉え方もできる。それは、旧三菱銀行陣営による三菱UFJFG内でのさらなる覇権の掌握だ。

 銀行と信託での事業重複解消は、旧三菱銀行出身の歴代トップが頭を悩ませてきた問題。今回の再編で法人融資に限ってではあるものの、銀行への集約で話がまとまり、旧三菱銀行陣営にとっては積年の課題が前進を見せたともいえる。

 銀行名変更についても同じことがいえる。旧三菱銀行陣営は、かねて銀行名を変えたがっていた。それも「三菱銀行」が本命だった。

「そろそろ銀行が合併して10年になる」。数年前、旧三菱銀行出身の三菱東京UFJの有力OBが、ある会合の席で金融庁幹部に対して、こう切り出したという。2016年に三菱東京UFJが設立10周年を迎えるよりも前の出来事だ。

 そのOBは、今のような長い銀行名よりも「三菱銀行」という短く分かりやすい銀行名の方が消費者にとって望ましい、と持論を展開。そして、銀行の監督官庁である金融庁がこの問題を取り上げ、三菱東京UFJと議論してはどうかと、暗にけしかけたのだ。

 ところが、“金融庁の威を借る三菱”という見え透いた魂胆は、逆にその金融庁幹部の怒りを買ったとみられる。「そんなことはわれわれが言う話ではない」と、一蹴されたもようだ。

 ただ、銀行を離れた有力OBが“暗躍”を見せるほど、旧三菱銀行陣営にとって「三菱銀行」という銀行名への“先祖返り”は宿願。そのため、「三菱UFJ銀行」への名称変更は、次に「UFJ」の文字も取り去るための長期的な布石という見方もできなくはない。

 そこで、三菱UFJFGの中で旧行意識への決別が進んでいるかどうかの試金石になるのが、今後の幹部人事だろう。

 これまでの三菱UFJFGの人事は、旧行ごとに一定の“自治権”を認めることで、旧三菱銀行が巧みに統治してきた。銀行の頭取は必ず旧三菱銀行。副頭取ポストでは、国際部門担当を旧東京銀行、中部地方駐在担当を旧東海銀行、法人部門担当を旧三和銀行にあてがう。持ち株会社の会長は旧三和銀行といった具合だ。

 こうした割り振りはそれぞれの得意分野に合わせたという面もあるものの、旧行意識の象徴に他ならない。また、旧行ごとの“お約束”人事に対しては、三菱UFJFGの社外取締役や金融庁の中でも問題意識が高まっている。

 くしくも、今年は他のメガバンクグループである三井住友FGとみずほFGの持ち株会社や中核子銀行のトップ人事で、これまでの“お約束”を取っ払うサプライズ人事が相次いだ。

 人事で「鉄のおきて」を貫いてきた三菱UFJFGでも変化の兆しが見えたとき、初めて旧行の呪縛から解放されたといえるだろう。 


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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