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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第408回

Zenコアの「EPYC」でサーバー市場奪還を目論む AMD CPUロードマップ

2017年05月22日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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 AMDは5月16日(日本では5月17日の午前5時)、投資家向けとなるFinancial Analyst Dayを開催し、この内容をウェブキャストで全世界に配信した。ここで新製品の話が出てきたので、分野別にまとめて解説しよう。

サーバー向けCPU“EPYC”は
4ダイ構成のMCM

 連載400回で解説したZenコアベースのNaplesであるが、このブランド名が“EPYC”(エピック)になったと、CEOのLisa Su氏より明らかにされた。

テーマカラーはシルバーがかったブルーである

EPYCチップを示すSu氏

 このEPYCとRadeon Instinctでサーバー市場に殴り込みをかけよう、というのがAMDのサーバーに向けた基本戦略である。

Radeon InstinctはRadeon Technology GroupのRaja Koduri氏のセッションで細かく出てくる

 さてそのEPYCであるが、やはり想像通り4ダイ構成のMCM(Multi-Chip Module)であることが明らかにされた。パッケージを見る限りはシリコンインターポーザーは使わない、ただのMCMである。

筆者の推定図(後述)と比較すると斜めのリンクがないが、単に図から省いただけだろう

ヒートシンクを外したEPYCチップを示すForrest Norrod氏(の右手)

 筆者の推測が正しければダイの間はそれぞれx8程度のInfinity Fabricで接続されるだけで、後はDDR4、PCIe、それと電源/GNDだけで、HBM(High Bandwidth Memory)のような高速かつバス幅の広いI/Fは使わないため、MCMを利用する必要はないのだろう。

 気になるのは、IO Hubに当たるチップが見当たらないことである。あるいはIOハブのみ裏面あるいはパッケージ内配線なのだろうか?

連載400回で筆者が推測したNaplesの構成図

 さて、ここからは市場と性能比較の話である。2016年の場合、サーバー市場全体の80%は2ソケット構成となっている。ただ右のグラフを見るとわかるが、性能はもちろんハイエンドの「Xeon E5-269X」が一番高いのだが、出荷量が一番多いのは「E5-264X」、次いで「E5-263X」、「E5-262X」、「E5-265X」という順で並んでおり、要するに出荷量の大半はそれほどコア数の多くないMCC(Mid Core Count)/LCC(Low Core Count)製品に集中しているとする。

右のグラフはウェブキャストでの表示とPDFが異なっており、折れ線の意味が抜けているのだが、この折れ線が出荷数量を示している(縦棒はSPECint_rate_base2006の結果で、ほぼ性能そのもの)

 これを前提に、ライブデモとして「Xeon E5-2650 V4」の2ソケット製品 vs. EPYCの1ソケット製品のベンチマークが行なわれた。デモは8つのVMを立ち上げるというものだが、EPYCの方が早く立ち上げられる、という結果が示された。この1P EPYCのボードも今回紹介されている。

テスト構成。EPYCはPre-Production(量産前の試作製品)だそうだ

脚注によれば、2つのシステムはどちらも256GBメモリーの構成で、この上でVMware vSphereを利用してUbuntu 17.04が動くVMを8つ起動している

インテルと比較して小さい、という話ではあるのだが、実際にはサーバー内部の他のパーツの配置とも絡むため、単純に小さければいいというものでもない。とはいえ最適化すればより高密度な実装が原理上可能という観点では望ましいところである。高さはATXと同じだが、奥行きはATXよりある。またGIGABYTEの印刷が見える

 AMDはこれまでボリュームゾーンとして大量に出荷されていたローエンドの2ソケットサーバーを、このEPYC 1Pで置き換えられるとアピールしており、現在のXeon 2ソケットの市場の下側はEPYC 1ソケット、上側をEPYC 2ソケットでカバーできる、としている。

消費電力は、具体的な数字が出ていないので現時点では判断しがたいところ

逆に言えば4ソケット以上は、EPYCでは手をつけるつもりはない、ということでもある。エントリーの1ソケットは、それこそRyzenでもカバーできるということだろう

 最後にロードマップであるが、現在のEYPCは14nmのZenコアベースであるが、これに続いて7nm世代のZen 2、そして7nm+世代のZen 3がそれぞれRome/Milanとして投入される予定になっていることが今回明らかにされた。

Rome/MilanがEPYCブランドになるかどうかを明らかにしない、というより変える可能性がある含みを持たせているのがおもしろいところだ

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